第二話
・第二話
あれから二年、今でも俺は普通に高校に通っている。
政府も人一人を社会的に抹殺する影響を懸念したらしく、
結果的に監視役をつけるということで落ち着いた。
その監視役というのが、現在隣で仏頂面を引っ提げていらっ
しゃるお方、愛菜様である。
それまで大して話したこともなかったクラスメートで、父親
が政府の要職についているらしく、貧乏くじをひかされたわ
けだ。
外見は良いのだが、いかんせん性格に難がある。
監視役にされたことがよほど不満だったらしく、今まで仏頂面
以外の表情をほとんど見たことがない。
そこそこ成績がよい華月であるが、テストで勝ったためしがな
い。
話して来れば命令口調、しかとかませばハイキックという理不
尽さだ。
それもすっかりクラスではお馴染みとなったらしく、他の生徒
からの生暖かい視線が気持ち悪い。
監視が始まってすぐに隣の部屋に引っ越されたせいで、プライ
ベートと言えるのは部屋にいる時くらいだ。
その唯一のプライベート空間で最近ひそかに行っていることが
ある。
それは、「Changer」と呼ばれている反政府ゲリラとのコンタク
トだ。
最初のアクションがあったのは、監視が始まってしばらくしたと
きだった。
突然華月のプライベート回線にどこからかアクセスされ、Changer
を名乗る相手から拘束された経緯などを聞かれた。
その名前には聞き覚えがあった。よくニュースなどに取り上げられ
る反政府ゲリラ組織で、警察が血眼になって探している。
向こうには優秀なハッカーがいるらしく、同じような経験をした
人間に接触して政府打倒のための策を探しているらしい。
コンタクトをとってはいるものの、内心では大きな迷いがあった。
自分の行動いかんによってはすべての日常が破壊され、多くの人が
苦しむことになる。
目を逸らしていたほうが幸せなことがあることもわかっている。
それでも華月を突き動かすのは、目の当たりにした現実が今の社会を
限りなく虚しいものに見せるからだった。
上辺だけを塗り固められた虚構の世界。そこに縛られている人間たち。
虚構にしがみ付いている大人たち。
それらを目にして、華月は問いかけるべきだと考えたのだ。
造られた「事実」と隠された「真実」のどちらを人々が選ぶのか。
そして、人が再び人として歩いていくにはどうすべきなのか。
華月は歩み始める。滅びへの道、そしてその先の未来へ。
前置きを済ませるために、急展開な話になってしまいましたが、ご容赦ください。