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大罪の悪魔と滞在する悪魔  作者: 聖湾
第一部 第二章
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第八話 ボクの日常(4)

 ボクの日常はいつだって平穏だ。

 でも、それが誰にとっても平穏であるとは限らない。

 きっと、誰にとっても平穏な日常なんて存在しないんだ。




「ふふふふぅん」

 昼休みの時間、ボクの隣で友人が鼻歌を歌いながらお弁当を広げていた。

 そして何やら、チラチラとボクの方を見ている。

 うん。何を期待しているのかは何となく分かった。

「どうしたの? 楽しそうだね」

 仕方なくボクが質問すると、友人は良くぞ聞いてくれたとばかりに目を輝かせた。

「ふふふ。実はね。このお弁当は彼氏とお揃いなの」

 彼氏?

 つまり、誰かと付き合っている?

 その言葉にボクは大きく目を見開いた。

 彼氏彼女というのはマンガやライトノベルでその存在は知っていたが、実物は初めて見た。 

「やぁね。そんなに驚く事じゃないでしょう?」

 まあ、ボクが気にしていなかっただけで、実際は沢山いるのかもしれない。

 そういえば、たまに校庭で二人でお弁当を食べている男女を見かけたこともある。

 しかし・・・

「あれ? ボーイフレンドがいるなら、何でこんなとこで一人で食べてるの?」

 ボクの素朴な疑問に友人は不満そうに顔を膨らませて答えた。

「だって、学校が違うんだもの。仕方ないじゃない」

「えええ!?」

 別の学校!?

 ボクは頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

 中学生の行動範囲は広いようで狭い。塾以外で他の学校の子と関わる機会はそうそうない・・・と思っていた。

「全く、最近の若い子は・・・」

 ボクがワザとらしく顔を手で覆って嘆くと、友人はプッと吹き出した。

「あははは、年いくつよ」

「はははは」

 ボクと友人が顔を見合わせて笑っていると、ふと教室の空気が固まっているのに気が付いた。

 何だろう?

「げっ!」

 周りを見回したボクは、あまり見たくない顔を見つけて顔をしかめた。

 鹿野崎 健三。

 ボクの学年でも有名なワルだ。

 不良ぶって取り巻きを作り、周りを威嚇しまくっている。ボクらはこの中学に入ってそれほど経っていないが、彼とその取り巻きに因縁をつけられて嫌がらせを受けたり暴力を振るわれた人間がもういるらしい。

 不良と言うには子供っぽさが漂っていて、不良というよりいじめっ子という印象が強いが、それでも狙われた方はたまったものじゃないだろう。

「何よ、あいつ等。隣のクラスの筈でしょ。何でここにいるのよ」

 友人が眉をしかめながら、小さな声で愚痴った。

 ボクもそれは疑問だった。

 彼は教室の中を見回すと、詰まらなさそうに舌打ちして出ていった。

 どうやらお目当ての人物は不在だったようだ。

「なんか嫌ね。うちのクラスで狙われている奴がいるのかしら。この間まで、自分のクラスの子をイジメてたみたいだけど」

 友人がぼやきボクは大きく頷いた。

 イジメというのはあまり気分が良くない。

 でも、それはただそれだけの出来事。

 彼が何をしていたとしても、ボクには何の影響もない。

 その時はそう思っていた。




 きっと家では、悪魔が笑っていたに違いない。


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