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大罪の悪魔と滞在する悪魔  作者: 聖湾
第一部 第四章
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第二十五話 ボクの日常(11)

 誰もがみんな生きている。

 代わりの居る人間なんていない。

 でも、誰かが居なくなったとしても、その人と関わりのない人々の日常は、変わることなく続いていく。




 今日の朝御飯は、なんとスクランブルエッグである。

 料理のレパートリーは着実に増えつつあった。ボクの練習の成果である。

 苦労した甲斐があった。

 最近ではボクが料理をする間、悪魔がボクの横にピッタリと張り付いてずっと監視するようになったので、余計に気疲れして大変だった。

 ボクがレシピにないアレンジをしようとすると、しがみついて止めようとするのである。向上心のない悪魔だ。

 だがまあ、朝御飯を作ってくれているのだから、妥協しよう。

 そんな事を考えながらスクランブルエッグを食べていると、ふと視界の隅に悪魔の姿が映った。

「って、コラ! 人のスマホ勝手に触らないでよ!」

 何やらボクのスマホをイジっていた悪魔を叱る。

 なんだか最近、勝手にボクの物をイジるようになってきた。最初にしっかりと躾をするべきだったか。

 ボクが取り上げようと立ち上がると、悪魔がボクにスマホの画面を見せつけてきた。

「・・・何?」

 何かと思ったら、ネット通販の商品ページのようだ。


『ロボット掃除機 なんと、¥9980!!』


「ていっ!」

 問答無用で悪魔からスマホを取り上げた。

 ・・・悪魔が手抜きすることを覚えてきている。これは問題だ。

 まあ、悪魔に家事をやらせている事自体、おかしいのかもしれないが。

 悪魔が物欲しそうな目で見てくるが、断固として無視する。しばらくすると、悪魔も諦めたのか、部屋の隅でゲームを始めた。

 悪魔が拗ねるなよ。ついでに、これから学校に行って勉強しなければならない身としては、目の前でゲームをやられるとムカつく。

 一瞬、携帯ゲーム機を取り上げてやろうかと思ったが、それは止めておいた。この間、ちょっとメモ帳を覗いてみたら、メモ帳がポエムで埋まっていた。

 ゲームを取り上げるのは流石に惨い。

 ボクは御飯を食べ終わると、悪魔を放ったまま登校した。




「なあ、最近、日置ってどうしてる?」

 昼放課、ボクのクラスにやってきた新聞部の先輩は開口一番にそう訊ねてきた。

「日置君? そういえばずっと見てないです」

 ボクは首を捻りながら答えた。

 日置君はここ数日、ずっと学校を休んでいる。先生は家の都合とか言っていた。

 ボクの返事を聞いて先輩は顔をしかめた。

「・・・ここ数日、電話しても出ないし、メールも返事が来ないんだ」

「メールも?」

 ボクもそれを聞いて驚いた。

 電話なら、出れない場所も多いかもしれないが、メールの返事なら時間が空いた時に出きるだろう。

 メールの返事も来ないなんて、例えばずっと病院にいるとか、そういう状況しか思い浮かばない。

 もっとも、携帯の人口カバー率とかは結構いい加減で、電波の届かない場所も多いらしいが。

「今日、帰りにあいつの家に寄って行こうと思ったんだが、お前も一緒に来てくれ」

「ボクが?」

 ボクは思わず嫌そうな顔をするのを堪えて答えた。

 先生が生徒の個人的な情報をその生徒と親しくもない生徒に教えてくれるとは思えないから、直接家に行くのは妥当ではある。

 でもボクが付き合う理由はない。

「先生に聞いたら届けるプリントとかがあるらしいけど、俺が届けるのも不自然だからな。クラスメイトのお前なら届けてもおかしくないだろ?」

「先生が頼んだ相手についてけば良いんじゃないですか?」

 ボクがそう答えると、先輩は鋭い視線でボクを見て答えた。

「もしかしたら、悪魔と関係があるかもしれないだろ?」

 余計に嫌です。

 それに、何でもかんでも悪魔と関連付けるのは早計だろう。ボクは内心呆れた。

「・・・今度、飯奢ってやるよ」

 飯って何だ、飯って。

 友人でもない人と御飯を一緒にしても、気まずいだけである。

「中古で良いから、ゲームソフト」

「っく! 500円以内な」

 それじゃ、何も買えないよ。

 まあ、古い携帯ゲーム機だから、買えるソフトもあるか。どうせやるのは悪魔だし、大したものでなくても良いだろう。

 ボクは渋々頷いた。




「ごめんなさい。あの子はちょっと田舎の親戚の家に行っているの」

「・・・そうですか」

 日置君の母親がすまなさそうな顔で謝り、先輩は残念そうに肩を落とした。

 日置君の家に先輩と二人で行ったのだが、日置君に会う事はできなかった。

 まあ、田舎なら電波の届かない場所もあるのかもしれないが・・・

 親が行かずに子供だけ行くって、なんかおかしくないか?

 父親と一緒にしても、母親だけ残っているのは何故だろう。

 帰る途中で先輩と雑談したが、先輩も口には出さないものの、不審に思っているようだった。

 余計な事かもしれないが、一応は提案しておいた。

「心配なら、あの刀の人に相談してみたらどうですか?」

 先輩は迷っていたようだが、最終的には連絡する事に決めたようだ。

 ボクは深く関わる気はないが、それが正解だろう。




 日置君の家からは、微かに悪魔の気配がしていた。


少々忙しくて、十月下旬まで更新はありません。

すみません。

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