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第4話  再戦ナイトメアVS静乃



 帝都の中央には帝都タワーと呼ばれる巨大な塔が立てられている。

 頂上には帝都の周りを監視して魔獣の接近を常に監視しており、塔の中には超常現象対策局の本局や魔獣や召還獣の研究機関などが入っている重要な施設である。

 坂下京子は昨晩の事件の結末をナイトメアの戦闘の報告の為に帝都タワーを訪れていた。


「以上が昨晩の戦闘の報告です」


 京子は昨日の内に報告書をまとめ要点だけを、対策局の幹部に報告している。


「成程……被疑者の確保には失敗したが、これ以上の被害者は出ないと言う事かな。坂下班長」

「そう考えて良いと思います」


 京子に質問したのは対策局の局長の風城だ。

 風城は見た目こそは若く頼りがいがなさそうだが、その年で対策局の局長まで登りつめたやり手だ。


「それにしても、まさか赤髪の死神がこの帝都で現れるとは……何のきまぐれか引いてくれて助かったと言うべきか……」

「確かに彼女の能力は強力です。しかし、私達でもやりようはありました」

「辰巳が彼女にやられたとしてもかな?」


 京子はまるで引いてくれなければ自分達が負けていたかのように言う風城に意見するが、風城の反論に言葉を失う。

 辰巳と言う名を京子は知らない訳がない。

 辰巳宗二とは京子同様、日本の召還者の中でのトップクラスの実力者で戦闘能力だけなら、間違いなく日本最強と言っても良い。

 その辰巳がナイトメアにやられたと言うのだ、それはつまりナイトメアの能力は日本最強の召還者の実力でも届かないと言う事だ。


「まさか……彼が?」

「信じがたい事だがね。報告によれば始めの内は押していたみたいけど、彼女が飽きたと言った時から一方的な戦いになって辰巳は殺されたらしい」

「そんな事が……」


 辰巳宗二を圧倒出来ると言う事は昨晩の戦いでナイトメアは全力を出したと言う訳ではない。


「坂下班長、彼女に逃げられて悔しいと思うが今は何もされない限りはこちらから手を出す事は禁じる」

「……分かりました」


 京子としてもナイトメアの能力の底が分からない以上、下手に手を出せば部下をいらずらに死なす事になる。

 昨晩の言動を見る限りでは敵対行動を取らない限りは敵に回らないと願いたい。










 グラハムと静乃はセイント制圧の為に行動を開始していた。

 すぐに戦闘に入れるのと同時の身体能力の向上する事の出来る紫雲を召還し、敵の制圧に動いている。

 二人のいた喫茶店にいた敵はすでに紫雲の峰打ちで眠らせて拘束して来た。


「妙だな」

「ですね。ここまで誰とも合わないですからね」


 喫茶店を出た二人は不意打ちを食らわないように慎重に進んでいるが、誰とも遭遇しない。

 状況が状況なので客を合わないのは当然だが、セイントの誰とも出くわさないのは少し不自然だ。


「加賀美さん。どうやら、私達の他にも誰かが動いているようですね」


 通路を抜けて広いフロアで出るとグラハムがそう言う。

 その視線の先には喫茶店で眠らせて来たセイントの構成員と同じ白いコートを着ている死体を発見している。

 そして、その死体には首がなく、死体の物と思われる首が近くに転がっている。


「これは……まさか」

「ええ……彼女もここにいるみたいですね。首狩りナイトメアが」


 セイントの構成員は首を刎ねられて殺されている。

 つい先程、静乃はグラハムから聞かされていた。

 ナイトメアは確実に敵の首を刎ねて殺すと。

 昨晩に戦闘した以上、まだこの帝都に潜んでいても不思議ではない。


「だが、何故彼女がセイントを殺す? ナイトメアも召還者を狩っていたのではないのか?」

「敵の敵は味方と言う訳ではないのでしょう。セイントにとっては彼女も召還者である事には変わりはありませんからね」


 過去に何度も召還者を仕留めているナイトメアだが、彼女自身も召還者である以上、セイントに敵として見なされていても不思議ではない。

 だからこそ、ナイトメアはセイントの構成員を殺しているのであろう。

 実際は、静乃に見つからないように、グラハムがナイトメアに指示を出して、デパート内のセイントの構成員を殺して回っている。


「とにかく、彼女も止めないとな。これ以上死者を出してたまるか」


 このまま行けば確実にナイトメアが敵を全滅させるのは時間の問題だ。

 しかし、静乃としてはセイントの構成員を拘束して、警察に引き渡したい。


「ですが、加賀美さん、一人で戦うなど無茶ですよ」

「だからと言って殺戮を無視する訳にはいかない」

「……分かりました。私に策があります。無策で戦うよりはずっと良いです」

「分かりました」


 グラハムは手短にその策を静乃に伝授する。











 グラハムが静乃に対ナイトメアの策を伝授している頃、ナイトメアはセイントの構成員の殲滅をしている。

 すでにここまでのフロアの構成員は排除して、上の階の構成員の排除に向かっている。

 下のフロアの様子がおかしい為、様子を見に来た構成員を上のフロアに続く階段でナイトメアは鉢合わせをするが、突然の事態に対応の出来なかった敵の首を刎ねて殺す。


「素人だな。全く……こいつら、本当にセイントか?」


 これまでの殺した敵も廊下で遭遇した構成員は皆、単独で行動していた。

 数が少ないのならともかく、それなりの数が居れば二人以上で行動した方が敵の襲撃を受けた時に対応が効く。

 それなのに連中は単独で動き、遭遇した時の動きも素人そのものだ。


「下っ端の割りにはなって無いな」


 ナイトメアもセイントの事は知っているが、下っ端にしても動きが素人過ぎる。

 日本に拠点がない以上、日本に向かわせる構成員はそれなりの経験を積んだ構成員を送って来る筈なので、違和感を覚えるがナイトメアは大して気にする様子もなく、上のフロアに上る。

 上のフロアに上がり広いフロアに出ると複数の構成員と人質が数名と出くわす。

 ナイトメアは出会いがしらに一番近くの構成員の首を刎ねて殺す。

 そして、ナイトメアはカウンターの上に飛び乗る。


「アイツの予定が狂って面白い展開になったと思っていたが、つまらんぞ。もう少し頑張ってくれ」


 ナイトメアは構成員のリーダーらしき男にデスサイズを向ける。

 すると、男は近くの店員を掴んで引き寄せるとその店員の頭に銃を突き付ける。

 銃を突きつけられた店員は恐怖の表情を浮かべ、目で必死にナイトメアに助けを求めるが、ナイトメアは冷めた目で男を見る。


「何のつもりだ?」

「一歩でも動いてろ。コイツの命は無いぞ」


 男は人質を取る事でナイトメアに対して優位に立とうとしている。


「それだけか?」

「まずは、その汚れた悪魔の武器を床に捨てろ。他に武器を隠していないかを確認するために服をぬ……」


 男が勝ち誇り、ナイトメアに要求を出しているとナイトメアはカウンターの上で一歩前に出る。


「なっ……」

「ほら、一歩前に出たぞ。そいつの頭をぶち抜いてみろよ」


 ナイトメアがそう言うと人質の表情が凍る。

 男はナイトメアに動くなと命じ、ナイトメアはあっさりと動いた。

 つまり、自分は殺されると思ったから当然だ。

 

「さぁ、早く撃ってみろよ。一歩で足りないのなら、もっと歩いてやるぞ」


 ナイトメアは数歩歩いて男に近づく。


「どうした? 私は一歩以上歩いたぞ?」

「どうかしてる……」

「馬鹿かお前? 人質ってのは相手にとって傷つけられたくない相手を取るもんだ。私にとってそいつがどうなろうと知った事ではない」


 ナイトメアにとっては人質の店員の命に何の価値もない。

 従って男の言う事を聞く必要もなかった。

 人質など初めから意味をなさなかった事を知った男はナイトメアに発砲する。

 しかし、ナイトメアはデスサイズで銃弾を弾き、男に接近して人質ごと首を刎ねた。


「さて……余りにもベタな手を使って私は少々苛立っている。なので、お前たちは皆殺しだ」


 ナイトメアがそう言うと構成員達は狂ったようにナイトメアに発砲するが、銃弾は一発たりともナイトメアに当たる事無くものの数秒で構成員と人質の首が刎ねられてそのフロアは地獄と化した。








 


 グラハムにナイトメアと戦う秘策を伝授された静乃が急いで、上のフロアに向かい、そこで見たのは一面が血の海だった。

 そのフロアにはセイントの構成員や店員、一般客の死体が転がっており、皆首がない。


「お前がやったのか」


 静乃はカウンターに座りこんでいるナイトメアにそう言う。


「この状況で血の付いた獲物を持っている私がいると言うのに他の可能性があると? 名探偵も必要ない状況だがな」


 静乃も本気でそう思っていた訳でなく、あくまでも確認だ。

 静乃が紫雲を構えるとナイトメアも立ちあがる。


「人暴れしたが、私は欲求不満だ。楽しませろ。ビリビリ眼鏡」


 ナイトメアは静乃に飛びかかりデスサイズを振るう。

 静乃は後に下がり、回避するがナイトメアはすぐにデスサイズを横に振うが静乃は回避する。


(はやりだ……ナイトメアは大振りでしか攻撃してこない)


 グラハムが伝えた秘策の一つが、ナイトメアの攻撃パターンだ。

 ナイトメアの攻撃はデスサイズを大振りで振うのが大半だ。

 横や縦、斜めとある程度はバリエーションはあるが、大きく振るう事には変わりはない。

 その上、デスサイズのを握っているところは刃の向きを変える時に持ち替えても常に同じ位置を握っている為、間合いも一定となっている。

 例え、大振りで間合いが一定でもその一撃の速度は早く簡単に見切る事は出来ないが、静乃は紫雲の能力で身体能力や動体視力が向上している為、見切る事は可能だ。

 

「私の動きを見切っているか。前よりは楽しめそうだ」


 ナイトメアも静乃の動きから静乃が自分の戦いの癖を知った上で戦っている事に気づく。

 ナイトメア自身もその癖は知っているどころか、わざとやっている。

 一定のパターンや動きがなければ大抵の戦いは圧勝し、それではつまらないからだ。

 静乃はナイトメアの攻撃後の隙を突き、紫雲を振り下ろす。

 ナイトメアはデスサイズの柄で受け止める。


「お前の実力ならば、ここまでしなくても無力化することも可能だっただろう」

「知ってるか? 絶望的な実力差がある相手に手加減するのはしんどいんだよ」

 

 ナイトメアは静乃の腹を蹴り飛ばそうとするが、静乃はその直前に後に飛んでかわす。

 静乃は距離を取るがすぐに接近して、紫雲を振るう。

 ナイトメアは静乃の斬撃をデスサイズの柄で受け止めて行く。

 

「昨日の今日で私の戦い方を分かっているではないか。誰に聞いた」

「さぁな!」


 静乃は紫雲を突き出してナイトメアはデスサイズの柄で軌道を反らし、デスサイズを振り下ろす。

 それを体をずらしてかわし、紫雲で切りかかり、デスサイズの柄で受け止める。

 その攻防をしつつ、静乃はナイトメアを広いフロアから廊下まで誘い出す。


「成程な。考えたな……」


 ナイトメアはゆっくりとデスサイズを振るう動作をすると、廊下の壁にデスサイズの先端が当たる。

 これが秘策の二つ目だ。

 ナイトメアのデスサイズの長さはナイトメアの背丈近く取り回しが悪い、その為ナイトメアの位置によっては狭い廊下では壁に当たり、まともにデスサイズを振るう事は出来ない。

 だが、静乃の紫雲の長さは廊下でもそこまで壁に当たる訳ではないため、断然有利に事が運ぶ。


「確かに、この廊下では私のデスサイズを振るうのは面倒だ。ならば、私はこれで戦おう」


 ナイトメアはデスサイズを消すと拳を構える。

 武器が使い辛いと判断するとすぐに、武器を使った戦いから武器を使わない肉弾戦へと切り替えたのだ。

 少々予想外だが、静乃の方も作戦の大筋は変わらない。


「では行くぞ」


 ナイトメアは一瞬で距離を詰めると静乃に殴りかかる。

 その拳を静乃は紫雲で反らす。

 紫雲に触れた瞬間にナイトメアは紫雲から腕を話して左足を軸にして後に回転してそのまま蹴りを繰り出すが、静乃は紫雲でガードするが、そのまま後ろに蹴り飛ばされるが、ガードしている分威力は殺している為、以前のようにはならない。


(召還獣を引っこめてもここまでか……)

「万策は尽きたか?」


 ナイトメアは余裕の表情で静乃が仕掛けて来る事を待つ。

 一方の静乃はナイトメアが仕掛けて来ても良い様に警戒しつつも別行動しているグラハムが行動を起こす事を待つ。

 すると、廊下のスプリンクラーが一斉に作動する。


「目暗ましのつもりか?」

「いや……お前を倒す秘策だ」


 静乃は紫雲をスプリンクラーの水で濡れている床に突き刺す。

 すると、紫雲に帯びている電気が水をつたりナイトメアは感電して倒れる。


「油断大敵だったな」


 これが最後の秘策だ。

 普通に戦ってもナイトメアを倒すのは困難である上に長引けばナイトメアも本気を出しかねない。

 その為、本気を出す前に動けなくすると言う策だ。


「自分の力を過信するからそうなる」

「そうでもない」


 静乃はナイトメアにゆっくりと近づいていると、ナイトメアの声が聞こえるのと同時に自分の腹の辺りに違和感を覚えて自分の腹の部分を見ると、先ほどまで倒れていた筈のナイトメアが自分の腹に腕を突き刺していた。

 ナイトメアはすぐに腕を抜いて静乃は傷口を抑えて下がる。


「どういう……事だ」


 確かに紫雲の電撃はナイトメアに直撃している。

 それはナイトメアを見れば明白だ。

 ナイトメアは電撃で髪や衣服が焦げている。

 だが、ナイトメアは平然と立ちあがってる。

 全力で電撃を放った訳ではないが、人が動けなくなるくらいの威力はあったはずだ。

 それを直撃してもナイトメアは平然と動けると言う事にな。

 最後の策で決める事が出来ない上に自分は腹を負傷している。

 姉の宮乃が居れば治癒して貰えるが、ここにはいない。

 傷も決して浅くは無く、足に力が入らずに膝をつき、紫雲で何とか支えている状態で視界もぼやけて来ている。


「甘いな。まさか、アレが本気の一撃である訳がないだろう。それに殺意を感じなかった。殺す覚悟もなく戦場に立っているのか。お前は」

 

 ナイトメアはデスサイズを召還すると、静乃に付きつける。


「舐められたものだ。それで私に勝てるなど思っていようとはな」

「関係ない……お前がどれほどの力を持っていようと……逮捕、拘束するのが……私の仕事だ」


 あくまでも対策局の仕事は犯罪を犯した召還者の逮捕、拘束だ。

 その過程で召還者の召還獣を倒す事があっても召還者は拘束してしかるべき処置を施す。

 それがどれだけ実力差があろうと、召還者を殺す事を前提とした攻撃を行わない事が静乃の仕事に対する誇りだ。


「信念か……良いだろう。その信念に免じて今日のところはその命を預けておこう」


 ナイトメアはデスサイズを蹴ると静乃に背を向けて歩いて行く。


「待て……」


 静乃はナイトメアを追う事なく意識を失い、倒れる。

 ナイトメアはそのまま静乃を放置して歩いて行く。


「随分を寒い事を言っていたな」

「お前か、あのビリビリ眼鏡に妙な知恵を与えたのは?」


 廊下からは死角になるところにグラハムが壁にもたれかかっていた。

 ナイトメアは静乃に自分の動きの癖やパターンを教えて、先ほどの攻撃を教えたのはグラハムだと確信している。


「まぁな。随分と偉そうな事を言っていたが、初耳だ。お前が殺す覚悟を持って戦場に立っていたのは」

「そんな物、持っている訳がないだろう。私にとって敵を殺す事など、人が息をするのと同義だ。お前も知っているだろう。少しはライバルキャラ的な事を言いたかっただけだ。それにあの引き方も中々だっただろう」


 ナイトメアはドヤ顔でそう言うが、グラハムには大して興味はない。

 ナイトメアの戦いの美学はグラハムには到底理解は出来ない。

 グラハムにとっては予想外の状況をどう利用するかの方が重要だ。

 グラハムは自慢げなナイトメアを無視して静乃の方に歩いて行く。


「少々、予定は狂ったが、これはこれで良い展開だ。コイツに死なれると困るから、俺はコイツを連れて行くから、お前は先に帰っていろ」


 グラハムはそう言って倒れている静乃を抱き上げてナイトメアを置いて下のフロアに静乃を連れて行く。






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