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第2話  ファーストコンタクト



 帝都で起きていた連続誘拐事件に超常現象対策局は犯人を誘き出すための囮作戦を決行する。

 その作戦で囮役となった加賀美静乃はその犯人の女と遭遇し、龍之介と共に交戦状態に入るが、敵は暗闇の中に紛れて攻撃してくる為、対応が出来なかった。

 窮地に立たされた二人を救ったのは多くの魔獣や召還者を狩っている赤髪の死神だった。


「何なのよ。貴女突然現れて」

「貴様に名乗る名など無いわ! バカ者め!」


 赤髪の死神は大鎌の上に立ち、そう言う。

 その姿は無駄に偉そうだ。


「どう言うつもりなの? 私達を助けて。貴女、赤髪の死神よね」

「礼には及ばん。あのタイミングで割って入るためにあの女をずっと張っていたからな」


 つまり、赤髪の死神は静乃が犯人の女を接触するよりも早く、女を見張っていた事になる。

 

「それと私の事は……」


 赤髪の死神は静乃方を向いていたが、突如、足の下の大鎌を掴んで飛ぶと大鎌を振る。

 そして、大鎌の横っ腹で大蛇の頭部を殴り飛ばして、地面に着地する。


「全く……最近のババァは人が話している時に攻撃はしない言うと戦いの礼儀を知らんのか。それと私の事はナイトメアと呼ぶが良い。そして、これが私の相棒の漆黒の魔鎌『デスサイズ』だ」


 赤髪の死神はブツブツと文句を言いつつも静乃に名乗る。

 ナイトメアは大蛇の闇の中からの奇襲をあっさりをカウンターで返した事に静乃も龍之介も驚きを隠せない。


「お前……アイツの動きを見えてんのか?」

「見える訳がないだろう。この闇の中で相手を補足出来るのは夜行性の動物を模した奴か特殊な感知能力を持った生物を模した奴か、風属性の召還獣くらいだぞ。いや、待てよ……私も深夜アニメを見るためにいつも夜は遅くまで起きているぞ。そう言う意味では私も夜行性の動物か?」


 ナイトメアはブツブツを一人ごとを呟きだす。


「だが、見えん物は見えん! しかし、見えると思えば何でも見える。なぜならば、世界は私を中心に回っているからだ。だからこそ、私が願えば出来ん事などは存在しないのだ!」


 無茶苦茶な理論だが、ナイトメアの絶対的な自信の表れであろう、妙に納得されられる。


「本当にムカツク餓鬼ね……」

「男の嫉妬は見苦しいが、女の嫉妬は醜いぞ。まぁ、お前のようなババァが私の様な美少女に嫉妬するのは当然だがな」


 ナイトメアの挑発敵な態度に大蛇は尾を叩きつけるが、ナイトメアは高く飛び上がりかわす。


「だが、安心しろ。私以上の美少女はこの地球上には存在しない。そんな私に対して嫉妬した事は恥ではない」


 ナイトメアは余裕の表情で着地する。

 その余裕の表情が女を更に苛立たせていく。


「馬鹿にして!」


 大蛇はナイトメアに何度も突撃するが、ナイトメアに掠る事もしない。

 すでに大蛇が暴れた事で公園は破壊されているが、ナイトメアにはかすり傷一つ無い。

 攻撃をかわすナイトメアの動きは軽やかで舞を舞っているように見え、その軽やかなナイトメアにだけ重力がかかっていないと錯覚させる。


「攻撃がワンパターンになって来たな……そろそろ飽きた」


 ナイトメアはデスサイズを振るうと一瞬の内に大蛇が細切れになる。

 紫雲の影響で反応速度も向上している静乃ですらもデスサイズの軌道は殆ど見えない。


「さて……」


 ナイトメアは守護獣の大蛇を破壊され、放心状態の女に歩いて行く。


「待て! 協力には感謝する。後は我々が彼女を逮捕し、しかるべき処罰を与える!」

「何を言っている? 戦いは相手を殺すまでが戦いだと言う言葉を知らんのか」


 ナイトメアの言葉から、ナイトメアは確実に女を殺す気でいる事が窺える。

 

「待って……もうこんな事は……」


 女は完全に戦意を喪失し、腰を抜かしつつもナイトメアから逃げようとするが、ナイトメアの歩く速度の方が早く、距離が縮まっていく。


「五月蠅いな。敗者は死んどけって」


 ナイトメアは清々しい笑顔と共にデスサイズを振るい女の首を刎ねた。


「これで少しはすっきりしたな」


 デスサイズを振って首を刎ねた時に付いた血を振るうナイトメアは静乃と龍之介を見て、目つきが変わる。


「今度はお前達が私と遊んでくれるのか?」


 静乃と龍之介は明らかに交戦体勢を取っている。


「貴女を殺人の現行犯で拘束させて貰う」

「出来る物ならな」


 ナイトメアがそう言うと、静乃は一瞬でナイトメアの背後を取る。

 紫雲の刃を峰に返し、振るうがナイトメアは後を見る事なく、自分と紫雲の間にデスサイズを入れて受け止める。


「それで私の後を取ったつもりか?」


 ナイトメアは静乃の腹を思いっきり蹴り飛ばす。

 まともに蹴りを喰らった静乃は吹っ飛ばされて、地面に何度も叩き付けられつつも大蛇が暴れても奇跡的に倒れていない木に叩きつけら


れる。


(何なの……今の一撃……)


 静乃は何とか意識を保つ事が出来たが、その一撃で血反吐を吐き、まともに起き上がる事は出来ない。

 そして、ナイトメアの蹴りの一撃が想像を絶する一撃であった事に驚愕する。

 ナイトメアは体格が言い訳ではない。

 大蛇との戦いで運動能力が高い事は見ていた為、知っているがまさかデスサイズを使わない一撃がこれほどまでの物だとは予想外だ。


「くそ! レグルス!」


 龍之介の掛け声と共にレグルスがナイトメアに飛びかかり、その爪で襲いかかるが、ナイトメアはレグルスの爪を片手で受け止める。


「ウソだろ……人間技じゃねぇだろ……」

「失敬な。私ほどの美少女を捕まえて」


 レグルスの巨体の重量を乗せた一撃をあっさりと受け止めるなど、地属性の召還獣で無ければそうそう出来る事じゃない。

 だが、目の前の少女はそれを顔色一つ変える事なく、やって見せている。

 その光景は彼女の名が示す通り悪夢としか言い様がない。

 レグルスの爪を掴んでいるナイトメアはそのままレグルスを投げる。


「2対1ならば少しは楽しめると思ったんだがな……つまらん。先にお前から仕留めさせて貰う。ビリビリ眼鏡!」


 ナイトメアは動けない静乃にデスサイズを投げる。

 デスサイズは回転しながら、静乃に向かうが静乃にぶつかる前に光の壁が静乃の周りにドーム状に展開して、デスサイズを弾き、デスサイズは地面に突き刺さる。


「静ちゃん!」


 宮乃は倒れている静乃に近づく。

 その近くには小さい妖精が浮かんでいる。


「ちぃちゃん!」


 宮乃がそう言うと、ちぃちゃんと呼ばれた妖精が輝き、静乃の傷が治癒して行く。


「ほう……光属性の召還獣か、中々レアじゃないか」


 ナイトメアは宮乃召還獣を見て感心する。

 宮乃の召還獣の『ちぃ』はナイトメアの言う通り光属性に入る召還獣だ。

 光属性は武装型の召還獣以上に貴重で、攻撃力こそは無いに等しいが、デスサイズを弾いた防御壁の様な防御能力や静乃の怪我を直している様な治癒能力を使う事が出来る。


「動かないで」


 宮乃と共に現場に来た京子がそう言う。

 そして、いつの間にかナイトメアの背後には両手が鎌の形状をしたイタチがナイトメアの首に鎌を突き付けている。


「召還速度が速いな。流石と言ったところか」

「あら、私の事を知っているのかしら?」

「当然だろう。日本三大召還者の一人に数えられる坂下京子を知らない訳がない」

「赤髪の死神に名前を覚えて貰えるとは光栄ね。私が貴女の力を見る前に決着がついて残念だけれども」


 ナイトメアの手元には召還獣のデスサイズは無く、京子のナイトメア『志那都比古しなつひこ』が首の根を抑えている。

 不穏な動きを取ればすぐに首筋を切り裂いく事が可能だ。

 即死さえしなければ宮乃のちぃの能力で治癒する事が出来る。

 本来なら、ここまで荒い手を使いたくは無いが、相手が相手だ致し方がない。

 だが、一方のナイトメアは追い詰められている様子が微塵も感じられない。

 強がっているのか、何か策があるのか分からないが、宮乃のちぃが静乃の治癒する時間は稼げる。

 その間に、龍之介のレグルスも起き上がり、静乃の治癒の完了と共に3班の全員が戦闘可能となる。


「もう良いか?」

「待っててくれたの?」

「まぁな。2対1ではつまらんかったから、今度は4体1で戦って貰おうと思ってな」


 ナイトメアがそう言うと、ナイトメアの周囲に炎が上がる。

 京子が志那都比古に指示を出す前に志那都比古は炎で吹き飛ばされる。

 志那都比古の拘束が解けたナイトメアはデスサイズを取りに走る。


「志那都比古!」


 志那都比古は鎌で風の刃をナイトメアに撃ちだすが、それがナイトメアに届く前にナイトメアがデスサイズを拾い、デスサイズを回転させて風の刃を防ぐ。

 風の刃を防ぐ事は出来たが、拘束を解いたナイトメアがすぐにデスサイズを取りに向かう事は分かっている為、レグルスが飛びかかっている。

 だが、ナイトメアはレグルスに突っ込んでレグルスの攻撃をかわし、レグルスの頭部に着地するとレグルスを踏み台にして、加速する。

 踏み台にされたレグルスは頭から地面に激突し、ナイトメアは加賀美姉妹に突っ込み、デスサイズを振るう。


「まずはお前から仕留める。牛乳女!」

「やらせん!」


 宮乃前に傷を治癒された静乃が割り込んで紫雲で止める。


「支援タイプの召還獣を持つ姉さんを先に狙うつもり見たいだが、そう簡単にやらせると思うな」


 宮乃の持つちぃは高い防御能力と治癒能力を持つ為、先に仕留めなければ持久戦になり、そうなれば数で劣るナイトメアは不利になる。


「そんな事は知った事か! 私はその牛乳女のけしからん乳が気に入らん!」


 だが、ナイトメアが宮乃を狙った理由は物凄く戦いには関係の無い事だった。

 ナイトメアも10代の半ばくらいで考えると発育が悪くはないが、宮乃は20代の半ばと言う事を考えても発育が良い。

 それがナイトメアには気に入らないらしい。


「静乃! 下がりなさい!」


 京子の志那都比古が風の刃を撃ち、静乃が下がりナイトメアも風の刃を避けるが、宮乃のちぃの防御壁がナイトメアの周囲に展開される。


「今度こそ捕まえたわ」


 ちぃの防御壁は高い防御力を持つが故に鉄壁の守りで仲間を守るが、敵に対して使えば瞬く間に鉄壁の監獄となる。


「面白い使い方をする……どれ、私もそろそろ頑張ろうかな」


 ナイトメアがデスサイズを構えると、何処からともなく、音楽が流れる。

 京子達は警戒しつつも周囲を警戒する。

 京子達は知らないが、この音楽は深夜アニメの主題歌だ。

 そして、ナイトメアはデスサイズを地面に突き刺すと、携帯電話を取りだす。


「私だ」


 その音楽はナイトメアの携帯の着メロだったらしい。

 ナイトメアが携帯に出るとその音楽が止まる。


「何だ。お前か……私は今、お楽しみの最中だ。後にしろ……知るか……何だと。それは本当なんだな。嘘だったら殺すぞ……分かったすぐに行く。そこから一歩も動くな」


 ナイトメアは電話を終えると携帯切り、デスサイズを構える。


「用事が出来た。私はそろそろ帰らせて貰う」

「この状況で逃げられると思っているの?」

「思っているさ」


 ナイトメアはデスサイズを振るうとちぃの張った防御壁が切り裂かれる。


「そんな! ちぃちゃんの防御壁が!」

「生憎と私のデスサイズもお前のチビと同じレアな闇属性だからな。そして、デスサイズの一閃は空間すら切り裂く。私の前に如何なる防御能力も無意味なのだよ。牛乳女」


 ナイトメアのデスサイズは宮乃のちぃの光属性同様に貴重な闇属性だ。

 闇族性の特徴は特異な能力を持つ事だ。

 ナイトメアのデスサイズの能力は空間を切り裂くと言い能力を持っている。

 今まではその能力を使わずに戦っていたが、ちぃの防御壁を破るのは骨が折れそうなので最も簡単な方法を使ったのだった。


「ではさらばだ。また会おう!」


 ナイトメアはそう言い高笑いと共に民家の屋根に飛び乗り、走り去っていく。

 京子は志那都比古で追跡したが、途中でまかれてしまいナイトメアを見失う。

 これが、超常現象対策局第3班と赤髪の死神、ナイトメアとのファーストコンタクトとなった。












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