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独占欲が強い狼

 私と海翔先輩はいつもどおりに昼食を食べようとしていたときだった。

「あれ?偶然だね」

「愛葉お姉ちゃん」

「こんにちは。風音ちゃん」

「広樹さん。こんにちは」

「お前らもここで食べるのか?」

「うん。邪魔するね」

 久遠さんが座ろうとしたら、海翔先輩は睨みつけていた。

「邪魔をするなら帰れ」

 先輩、あなたという人は・・・・・・。

「手に持っているものって何?写真?」

「うん、前に海翔先輩に撮ってもらったの」

「私に見せて」

「あ!僕も見たいな」

 二人が手を伸ばそうとしたら、上から写真を取り上げられた。

「触るな」

「せ、先輩?」

「あとで渡す」

「あーあ、没収されちゃったね。そんなに風音ちゃんを独占したいの?海翔」

「お前は黙れ」

「風音、あとで写真を見せてね」

「うん、わかった」

 愛葉お姉ちゃんと私がコソコソと話していると、海翔先輩は怪訝そうな顔をしていた。

「さっきから何を話しているんだ?」

「ううん、なんでもないよ」

 愛葉お姉ちゃんは何事もなかったかのように言った。

「お弁当を食べようか、時間がなくなっちゃうよ」

 広樹さんがそう言ったので、私達はお弁当を食べ始めた。

「いつも愛葉と一緒に食べているけど、たまにはこうして四人で食べるのもいいね」

「そうだね」

「風音、またお土産よろしくね。美味しかったから」

「うん、また広場へ行ったら、買うから。私も気に入ったしね」

「何の話?」

「この前、風音が早川君と動物ふれあい広場に行って、そのときに買ってきてくれたお土産が美味しかったから、またお願いねって言ったの」

「一緒に?あぁ、そういえば、朝早くから出掛けたと思ったら、風音ちゃんに会いに行ってたんだ」

「そうだ」

「珍しいね。あれだけ女嫌いだったのに、風音ちゃん、どうやって海翔を変えたの?」

「どうやってと言われましても・・・・・・」

 返事に困っていると、海翔先輩が声をかけてきた。

「俺のペット、いや、餌みたいなものでもあるな」

「人の妹を何だと思っているの?」

 愛葉お姉ちゃんは呆れ顔になっていた。

「だってこいつといると、時間なんて忘れられるから」

 悪びれる様子はまったくないと判断した。

「こいつと遊んでいいのは俺だけ」

「風音ちゃん、ごめんね。こんな弟で」

「いえ、大丈夫です」

 そう言ったが、あまり大丈夫ではない。常に振り回されているから。

 強い視線を感じたので、見てみると、海翔先輩がじっと見ていた。

「どうかしました?」

「お前さ、何でこいつと話すときは普通に話すんだ?」

 わけがわからないという顔をしていると、広樹さんがクスクスと笑い始めた。

「何?ヤキモチ?」

「違う。ただ、俺とはじめて話したときとお前と話したときの温度差があまりにも大きいから。ほら、質問に答えろ」

「何でって、話しやすいからでしょうか?」

「あはは。そう言ってもらえると嬉しいな。海翔はどうせ鋭い目つきで話しかけてきたんでしょ?」

「はい、そうなんです」

「男を怖がるくせに・・・・・・」

 海翔先輩が聞こえないように呟いていたことに誰も気づかなかった。

「風音ちゃん、海翔に意地悪なことをされたら言ってね?力になるから」

「は、はい。ありがとうございます」

「いつも何をされているの?風音」

「何って、脅してきたり、追いかけられたり、命令してきたり、あとは・・・・・・」

 抱きしめられたり、ひ、膝に乗せられたり、お、思い出しちゃだめ!!

 手で顔を隠そうとしていると、不敵な笑みを浮かべる海翔先輩の視線とぶつかった。

「顔が真っ赤だぞ。何を思い出していた?」

 そんなこと、二人の前で言えるわけないじゃないですか!

「まったく、その辺にしておきなよ。そんなにいじめて楽しい?」

「俺はただ質問していただけだ」

 喉を詰まらせて咳き込んでいる私に愛葉お姉ちゃんはお茶を渡してくれた。

「この程度で動揺するなんて・・・・・・。これ以上のことをしたら、どうなるんだろうな」

 そんなこと、考えたくない。

「俺は愛葉にそんなことをしたことがないよ」

「お前と俺は違う」

 青ざめている私を放っておいて言いあっている。愛葉お姉ちゃんは私の顔を見てすぐに別の話題に変えた。

「風音、可愛い友達が増えたね」

「友達?」

「風音の部屋に」

 あぁ、ぬいぐるみたちのことね。

「うん。抱き心地が良くて、癒される」

「どの子がお気に入りなの?」

「うーん、みんな好きだから、決められない」

「ふふっ、そっか」

「お前の部屋、ぬいぐるみで溢れていそうだな」

 ずっしりと私の頭上に腕を乗せてきた。

「海翔、どいてあげなよ」

「あぁ」

 いや、いつまで乗っけているの!?全然その気がないよね!

 腕を掴んでそっと置くと、ムッとしていた。

「やっぱ二人っきりじゃないと楽しめないな。風音もだろ?」

「そんなことありません!」

「しょうがない。あとでたっぷりと遊んでやるか」

「結構です!」

 広樹さんはやれやれといった感じで首を振っていて、愛葉お姉ちゃんは苦笑いを浮かべていた。

 もう、今度は何を企んでいるのですか?

 そうこうしているうちに昼休みは終わってしまった。



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