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選択肢を選ぶ兎

「愛葉お姉ちゃん、おかしいよ」

「私、何もおかしなことなんてしていないよ?」

「そうじゃなくて、学校生活がおかしいの!」

「そういえば、休み時間になると、どこかに行くね。どこに行っているの?」

「性格の悪い狼さんのところ」

「俺の悪口か?」

「ん?ふえっ、出た!」

 いつからたっていたのか知らないけれど、海翔先輩は私のすぐ後ろにいた。

「早川君、ひょっとして、風音と一緒にいたりする?」

「あぁ」

「珍しいね。私の妹をあんまり独占しすぎないでね?妬いちゃうから」

「あれ?二人って、同じクラス?」

「そうよ。前に言わなかった?」

 うーん、どっちだったかな。忘れちゃった。

「俺はさほど相手にしていないけど、風音が俺に会いたいって、甘えてくるから」

「堂々と嘘を吐かないでください!」

 本当に油断も好きもないんだから!ここ、階段の近くだから、いつ人が来てもおかしくないのに!

「仲がいいね」

「どこがなの?お姉・・・・・・」

 あれ?今の声はお姉ちゃんじゃない。じゃあ、誰?

「広樹先輩!」

 先輩ってことは、この人は三年生か。

「はじめまして。風音ちゃん。弟が世話になっているね」

「弟?」

「目の前にいるでしょ?」

 海翔先輩のお兄さん!?

 にっこりと笑っていて、正直似ていると思えなかった。

「愛葉、どこに行きたいか、もう決めた?」

「うん。駅前に新しいケーキ屋ができたでしょ?あそこに行ってみたい」

「わかった。美味しいものがあるといいね」

 なんか会話が弾んでいるみたいですけど、この二人・・・・・・。

「恋人?」

 会話を中断して、二人は肯定した。

「ほ、本当に?」

「本当。二人も恋人?」

 愛葉お姉ちゃんが私と海翔先輩を見た。

「違うから、絶対違う!」

「照れ隠しか」

 あなたは余計なことを言わないで!

「なんだ、違うの?じゃあ、まだみたいね」

 相変わらず男の人は苦手ですよ。特に怖いのはこの人。

 そういえばさっき、この人のことを性格が悪いって言ってしまった。今、二人っきりになるのはまずい。

「あの、私も!」

 連れて行って欲しいと頼もうとするが、海翔先輩に邪魔された。

「いつか連れて行ってやる。お前ら、さっさと行けよ」

「そうさせてもらうね。海翔。またね、風音ちゃん」

「ちゃんとお土産にケーキを買ってくるから」

 いや、そういうことではなくて!私は一刻も早くここから抜け出したい!

 そんな私の願いはむなしく、叶うことはなかった。

 二人が階段を下りていき、見えなくなるまで、後姿を見送ることしかできなかった。

「さてと、俺達も行くか」

「どこにですか?」

「もう少し人気のないところ」

 今いるところでも、人が数人しかいないのに、まだ求めるんだ。

 海翔先輩についていくと、保健室に到着した。

「保健室?」

 ガラリとドアを開けると、誰もいなかった。

 ソファに座ったものの、何も話をしない。

 何がしたいの?この人。

 鞄の中から小説を出して、読み始めた。

「座りにくくないか?」

「いえ、大丈夫ですよ」

 保健室に来たのは初めてで、ソファの座り心地は悪くない。

「ちょっと移動するか」

 近くに椅子があるので、そこに座るのかなと思いきや、いきなり私を持ち上げて、自分の膝に座らせた。

「い、移動って、ここですか!?」

 どうしていつもこんなことばかりするの!?

「誰か来ます!」

「大丈夫だ」

 どうすればいいのかな。密着度が日に日に上がってきている。

「風音、今から選択肢を与えるから好きなものを選べ」

 選択肢?また新たな遊び?

「このままの状態でいるか、本を読んで俺を楽しませるか、どっちにする?」

 なんて選択肢を与えるの。

「どっちも・・・・・・」

「もし、拒否をしたらどうしてやろうか?」

 拒否ができなくなった。道を塞がれてしまった。

「あの、本を・・・・・・」

 そう言うと、海翔先輩は満足そうにしていた。

「ほら、きちんと持たないと落とすぞ?」

 あれ?何でこの状態のまま?

「海翔先輩、私は本を選びましたよ」

「わかっている。ほら」

「私、隣に座りますから」

「もがけばもがくほど、強く抱きしめられるだけだぞ。それともわざとか?」

「そんなわけないじゃないですか!私はてっきりきちんとソファに座らせてくれるのかと・・・・・・」

「一言も言っていないだろう?都合のいいことを考えるな」

 ピシャリと言い放ち、私が読むのを待っている。

「読まないのか?お前を使って遊ぶぞ?」

 それから私はいつドアが開くのかと、ビクビクしながら本を読み続けていた。


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