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第4話

「あれ? ゴヴェジョンさんに、フォレダンさん?」


 食堂もどうにか形になり、後は開店を待つだけとなったある日。ルーフェウスの工房に、ゴヴェジョンとフォレダンが現れた。


「食堂さ始めるって聞いて、様子見に来ただよ」


「上手く行ってるだか?」


「ちょっと不安要素もあるけど、今のところは上手く行ってるよ」


 大きな荷物を背負ったゴヴェジョンとフォレダンの質問に、笑顔で自信をにじませながら答える春菜。実際、食堂の準備は予想以上にスムーズに進んでいた。


 懸念材料の一つである料理人の確保も学院の伝手を使ったところ、何処に隠れていたのか非常に腕のいい料理人が十人ほど、すぐに集まった。やる気に充ち溢れていた彼らのおかげで、予定していたメニューは全て問題なく提供できそうである。


「野菜は足りてるだか?」


「もしもの時のために、こっちで十分ストックしてあるから大丈夫。仕入れが問題になりそうになったら言うから、その時に協力して」


「分かっただよ。野菜ならいくらでもあるでな。じゃんじゃん頼ってくれたらいいだ」


 ゴヴェジョンの問いかけに、笑顔で答える春菜。多種多彩な野菜を大量に備蓄しているオルテム村のバックアップがあれば、たかが数百人から千人程度が相手の食堂ぐらい、余裕で賄える。それぐらい、オルテム村の農業生産は過剰なのだ。


「それにしても、いい匂いがするべな。なんだかおら、腹減っただよ」


「だったら、店で何か食べていく? 試食って事でただでいいよ?」


「ありがてえが、あまり気ぃ使わねえでけれ。おら達結構金さ持ってるだでな」


 春菜が無料で食事を提供してくれると言いだした事に、空腹を訴えたフォレダンが苦笑しながらそう窘める。


 現実問題として、ゴヴェジョンもフォレダンも金はたくさん持っている。何しろ、オルテム村は街に分類できるほどの人口なのに、貨幣経済が成立していない。基本物々交換で経済が回っている上、村の立地上外部とも隔離されているため、行商で稼いだ金もウルスでの海産物の買いだし以外に出番がない。結果として出稼ぎに行く事が多いこの二人の手元には、結構な金額の金がある。


 だが、春菜の側としても、その金をもらっても困るのだ。現時点で大して金に困っていない上に、ゴヴェジョンとフォレダンの金はファーレーン国内で循環していたはずのものである。そうでなくてもファーレーンから結構な額を巻き上げているのだから、いくらなんでもこれ以上お金を国外に持ち出すのはよろしくなさそうである。


「試食に関しては開店費用として見込んであるし、練習で作ってるものだからそれでお金を取るのはちょっとまずいんだ」


「そう言うもんだか?」


「そういうものなんだ」


 ゴヴェジョンの疑わしそうな一言に対し、そうきっぱり言い切って質問を封殺する春菜。いくらポケットマネーで開業資金を用意していると言っても、この段階で収入があると会計処理も面倒くさい。こういう事はきっちりしておきたい春菜としては、何重もの意味で、ゴヴェジョンとフォレダンからお金をもらうのは避けたいのである。


「ま、そう言う訳だから、たくさん食べて感想おねがい。ルーフェウスの人たちの好みに合わせた味付けだから、二人の好みとは合わないかもしれないけど、それはそれで参考になるから」


「分かっただよ」


「ご馳走になるだ」


 微妙に春菜に丸めこまれた気がしつつも、とりあえず素直に頷くゴヴェジョンとフォレダン。案内された食堂で適当に座りながら、料理をのんびり待つ。


「シンプルな建物だべな」


「たくさんの席だども、さばききれるだか?」


「そこは開店してからの様子見。メニューは現状七種類ぐらいしかないし、お金は前払い、食器は自分で片付けて、ってシステムだから、どうにかはなると思ってる。食器も自動的に洗って殺菌する魔道具も導入してるしね。それに、状況と売れ行き次第では、人を増やしてもいいし」


 春菜に説明され、なんとなく納得するゴヴェジョンとフォレダン。人を使わずにどうにかするシステムを、それなりに考えて構築しているようだ。


「そういや、給仕はどうするべ?」


「支払いした後そのまま自分で取りに行ってもらうけど?」


「なら、おら達も自分で取りに行くだ」


「あ、今日はいいよ。普段とは違う構成になるから」


 そう言って、大量に料理を乗せたトレーを持ってくる春菜。どれもこれも、なかなかのボリュームである。


「ランチセットは基本、この中のうちの一品にこのパンとこっちのサラダ、それから安いお茶がつくんだ」


「なかなかのボリュームだでな」


「このボリュームは、わけえのにはありがてえだ」


 春菜の解説を聞きながら、若い胃袋にはありがたいであろう分量の料理を適当に取り分けるゴヴェジョンとフォレダン。フォレダンがいるから確実に食べきれるが、ゴヴェジョン一人だったら三分の一も無理だろう。


 しかも、セットにつくと言っていたパンとサラダがまた、立派な分量である。パンは普通の黒パンだが、学院の学食で出しているものよりはるかに質がいいもので、大きさも普通のパンより大ぶりなものだ。サラダもその気になれば取り分けが出来るぐらいの量があり、栄養価が極端に偏ることもなさそうである。


「このシチューはうめえだな」


「焼き物は全部塩コショウだべか。あんまり好みが分かれねえ味付けだでな」


 などと言いながら、取り分けて一つ一つ味を確かめるゴヴェジョンとフォレダン。シチューにパンを浸したり、焼き物を挟んでみたりのチェックも忘れない。


 そうやっていろんな食べ方で確認して、二人が出した結論が


「おらは好き好きだと思うだが、フォレダンさどう思った?」


「好き好きじゃねえべか? おらにはちっと物足りねえ味だったども、ゴヴェジョンにゃちょうど良かったんじゃねえべか?」


「んだんだ」


 であった。


「これ、いくらで出すだ?」


「単品は二十五チロル、セットは三十チロルの予定。量を減らせば五チロル安くなって、大盛りにすれば五チロル高くなるの」


 ゴヴェジョンの問いに、予定している値段を答える春菜。その値段を聞き、安いと納得するゴヴェジョンとフォレダン。


「この量でその値段なら、かなり安いでな。味も外国人にゃ好みが分かれそうだども、食えねえって判断されるほど突飛な味でもねえだから、値段と量考えたら文句言われる事もねえだろうさ」


 フォレダンの言葉に、ゴヴェジョンも頷く。二人ともウルスでの行商ついでにあちらこちらで食事をしているため、飲食店の大体の相場は知っている。ウルスとルーフェウスでは同じではないだろうが、この手の庶民向けの安い飯屋の値段など、ウルスとダール、ウルスとスティレンでそれほど極端な差がなかった。通貨が同じである以上、同じランクの飯屋ならほぼ同じと考えて問題ないだろう。


 因みに、ウルスの相場が大体三十五から四十チロルぐらい。食料品の高いダールではチロル換算で二~三チロル高く、フォーレは相場の幅が五チロル前後広い。また、この食堂の料理は、ウルスの平均的な食堂より三割から五割量が多いので、トータルでは随分と割安になる。


「後は、パンのおかわりが出来ねえのが辛えところだでな」


「そこはもう、パンの持ち込みは自由にする予定だから、それで何とかしてもらおうかな、って」


「パンの持ち込みが自由? そらまた珍しいだな。米も持ちこんでええだか?」


「おにぎりならいいかな、って思う。ただ、こっちはお米なんてまったく食べないし、炊いてみたら結構不評だったから広まるかどうかもあやしいけど」


 フォレダンの質問にそう答え、ついでにこの国での現状を説明する春菜。それを聞いてゴヴェジョンが、


「まあ、おら達もよその国の食いもんでよう食わねえもんさあるし、こっちで米さ食わねえのも、それはそれでしょうがねえべな」


 と、実に物分かりのいい発言をする。


「考えようによっては、普通に味噌だれみたいな癖のある味を受け入れたファーレーンとかフォーレの方が、むしろ特殊なのかもね」


「んだんだ」


 所変われば品変わる。世界の広さと地域差について、味覚の面からしみじみと感じ入る春菜達。


「後は持ち出せないように対策を立てた上で、色々と卓上調味料を並べてみようかな、って思ってるんだ」


「卓上調味料? 醤油とかだか?」


「そそ。とりあえず、醤油とウスターソース、マヨネーズ、ケチャップの四種類を置いてみようかな、って」


「わざわざ宣伝するだか……」


「どれか一つぐらいは広めないと、この食堂で出せる料理の種類が増えないの。できればケチャップが広まれば、トマトベースの煮込み料理が出せるようになるからありがたいかな。ケチャップは醤油よりかなり安いから、コスト面でも助かるし」


 いつもの文化侵略かと思えば、地味に切実な問題があったらしい。どうしてもパイのような手間がかかる料理が出来ない都合上、見た目や味付けの幅を出すために使える調味料の種類が増えてくれれば大変ありがたい。


 なお、宏達が持ちこんだ各種調味料で一番安いのは、言うまでも無く熟成が絡まないマヨネーズだが、同じく基本的に熟成しなくてもいいトマトケチャップが、マヨネーズと勝負できるぐらいに安い。マヨネーズより工程が多い分、少々値段は上がるのだが。


「まあ、そっちは長い目で見ていくつもり。今のままでもそれなりには色々作れるし」


「んだか。まあ、そこは頑張ってけれ」


 割と気の長い話をする春菜に、思わず苦笑を漏らすゴヴェジョン。国に帰る方法を探している割に、実にのんきな話ではある。


「さて、せっかく来ただから、ちょっくらルーフェウスさ見て回るだよ」


「変わった作物さあったら、買って帰って栽培してみるだ」


「は~い、行ってらっしゃい」


 とりあえず話す事も無くなったので、帰る前に軽く観光していくゴヴェジョンとフォレダン。この時持ち帰ったいくつかの野菜が、三年後にはオルテム村やウルスの実験農場で出荷できるぐらいの収穫量を得るという、どこぞの国の農家がよくやるような真似をするのはここだけの話である。


「さてと。折角ルーフェウス学院にはいろんな国の人が留学してるんだから、少しぐらいはルーフェウス以外の料理も出せないか検討しなくちゃね」


 と、普通の料理人が聞けば作業量におののきそうな事をもらす春菜。この女のせいで食堂の業務は色々と難儀なことになるのだが、幸か不幸か色々あって雌伏していた連中だけに、特に誰も文句を言わずに黙々と方針を受け入れるのであった。








「明日からは宏君の手が空くから、達也さんの方を手伝ってもらえるよ」


 開店を翌日に控えたその夜、ついに春菜がそう宣言する。


「それはありがたいが、大丈夫か?」


「うん。というより、実際の店舗の営業になると、宏君はあまりできる事がないし」


「そうなのか?」


 春菜の言葉を疑問に思い、当人に確認する達也。達也に聞かれ、小さく頷く宏。


「実際の業務になるとやな、営業時間中は客の対処とかそういうのがメインになるから、あんまり出来ることあらへんのよ。せやから、僕がなんかするとしても営業時間終わった夜中の事になんねん」


「それに、料理の試作はともかく、実際に厨房に入って料理したりとかは今後の事があるから御法度だし、それ以外となると何かあった時の対処だけだから一人いれば十分だし」


「ああ、なるほどな」


 宏と春菜の解説を聞き、達也が納得の声を上げる。確かに、二人がいつまでも店に関われる訳ではないのだから、宏や春菜が直接接客や料理をするのはよろしくない。かといって何かトラブルがあるとしたら客相手になる可能性が高い。そして、客相手のトラブルとなると、宏は女性恐怖症により半々の確率で使い物にならなくなる。


 それ以前の問題として、そもそも宏に客のクレームに対処しろというのは無理がある。最近はとんと見かけなくなったとはいえ、それでも油断しているとヘタレの虫が顔を出すのだ。強面で声のでかいクレーマー相手だと、相手が男女関係なくヘタレてしまう可能性がゼロでは無いのである。


 ならば、なんだかんだで客のあしらいに慣れており、かつ普通に戦闘能力も高い春菜が担当した方が間違いなく無難だ。それに、美形ぞろいの各国王家ですら滅多に見ないほどの美人で柔らかい雰囲気の春菜に、誠心誠意謝罪をされて文句を言い続けられる人間は少ない。そこも踏まえれば、店の面倒を見る人材としては宏の出番は無いだろう。


「そう言う事なら、ありがたく協力してもらう事にする」


「っちゅうても、図書館での調べもんとかあんまりノウハウないから、兄貴がちゃんと指示出してや」


「分かってるって」


 色々と納得したところで、明日以降の人員配置として宏の大図書館行きを確定する。


「で、澪の方はどない?」


「ジノが等級外ポーションに入ってるから、明日一日ぐらいは経過観察。それで問題なさそうなら、明後日から図書館に回る」


「さよか。なかなか順調やな」


「ん。レイオット殿下が連れてきただけあって、素直で熱心。ただ、すぐへこむ」


「そらしゃあないで。今は失敗に失敗を重ねる時期やねんし、失敗してへこまん人間はそうおらんねんし」


 すぐへこむという澪の評価に、苦笑しながら宏がフォローしておく。そもそも、ゲームのときでも生産関係は挫折者が多かったのだ。むしろ、投げ出さないだけ上出来だと思うべきだろう。


「何にしても、等級外ポーションまで行けば、忙しいテレス達でもフォローができる」


「せやな。後、場合によっちゃあ僕が直接面倒見て、澪が兄貴の手伝いに回るっちゅうんもありやし」


「個人的には師匠の指導は、最低でも作るものが八級以上になってからの方がいいと思う」


「別にそれはそれでかまへんけど、何で?」


「今後の事を考えると、ボクという指導係がいる以上、師匠はトップとしてあまり最初の方から懇切丁寧に指導しない方が権威の面でいいと思う」


 澪の妙によく考えられた反論に、普通に納得してしまう一同。今の規模なら問題ないとはいえ、今後人数が増えることが確定している以上、確かにいちいち新しい人材に工房主が付きっきりで懇切丁寧に指導するのは色々無理が出てくる。


「中学生に、組織の人材育成とか権威とかの話をされるんってどうなんやろうなあ?」


「確かに澪の歳で考えたにしてはしっかりした内容だけど、あたしとしてはむしろ、宏が今まで考えなさ過ぎだったんじゃないかって思うんだけど?」


「そこは否定せえへんけど、なあ」


 澪の組織論をネタに、宏と真琴が普通の十代や二十代前半がする機会はなさそうな会話をする。 


「で、他にも言ってない本音があるんでしょ?」


「ん。師匠の直弟子が増えると、多分権威以外にもいろいろ問題が出る」


「具体的には?」


「師匠が直接教えると、技能修得が早くなりすぎる」


「あ~……」


 澪の指摘に、一切反論できない真琴。頻繁に直接指導している上に知られざる大陸からの客人である春菜は言うに及ばず、テレス達にしても宏が直接指導した内容に関しては、妙に習得するのが早く技量の伸びもいい。宏が教えた内容はいずれも、普通なら半年一年でまともに習得できるようなものではないのだ。


 今でも既にアズマ工房の技術レベルは突出し始めているのに、入ってきた見習いが全員そのペースで育つのはいろいろと混乱を招きかねない。テレス達は後輩の指導ができるようにガンガン育てるにしても、それ以外は先輩が後輩を指導する方針で行かないとまずいだろう。


 それ以前の問題として、宏も澪も、いつまでもこちらの世界の人間を育てられる訳ではないのだから、そのあたりのシステムはそろそろちゃんと整備するべきだろう。


「でも、テレス達って事実上は澪の弟子よね? 澪の指導であれなんだから、結局一緒じゃないの?」


「ボクが指導した内容と師匠が指導した内容では、習熟度も応用能力もそれに関わる探求心も大違い」


「そんなに違う?」


「びっくりするほど」


 なんとなく理解できるものがありながらも、素人のテレス達三人を一年未満で七級ポーション作成にまで手を伸ばさせた澪は人の事を言えないと思ってしまう真琴と達也。そこに、澪が止めを刺すような言葉を発する。


「その実例がライム」


「はあ?」


「師匠、何か指導するときに、たまにライム膝に乗せてる事がある。特等席で師匠の魔力の通し方とか作業手順見てるから、ライムに直接指導はしてないけど、勝手に覚えてできるようになってる」


 子供の吸収力と好奇心を甘く見てはいけないらしい。ライムは体力や体格があまり影響しない作業は、大半をそこらの普通の職人より上手にこなせるようになっている。最近では一緒に遊べない友達が多いときなどは、勝手に余っている材料を使って等級外ポーションを作ったり、空地の草むしりのお手伝いをしたときに回収した雑草から糸や紙を作ったりしている。


 ジノがへこむ理由がここにもあるのだが、なんとなくライムが勝手に仕事を覚えて勝手に手伝ったり物を作ったりするのは当たり前というイメージがあるため、誰もその事に気がつかない。目の届かないところでさえやっていなければいいというのが、大人達の認識になっているのだ。


 なお、ライムが作ったポーション類は十分な品質になっているため、普通にメリザ商会に納品されている。油断すると勝手に八級ポーションを作ったりするので、そこだけは注意が必要だが。


「てか師匠、テレス達がそろそろ初級の壁」


「まあ、そうなるやろうなあ。当分は自由研究の時間を鍛冶とか木工、家具製作あたりに回すよう指示せなあかんな。ついでにオルテム村とかクレストケイブでそのための材料を集めてくれば、いろんな意味でええ感じやで」


 進歩が早い事による問題を指摘する澪に、対策として宏が作業内容を告げる。


「部分的に春姉に追いついてるけど、そっちは?」


「春菜さんも手ぇ空いたら、ちょっとちっこいボートでも作ろうか。それで多分、メイキングマスタリーに到達するはずや」


 地味に初級の壁に引っかかっている春菜のために、新たなジャンルの開拓を提案する宏。その提案に頷く春菜。流石に毎日やっているだけあって、製薬に関してはテレス達も春菜に追いついてしまっている。別にそれはそれで問題は無いのだが、せっかくだからできる先輩としてのメンツは保っておいた方がいいだろう。


 なお、生産スキルとしては忘れられがちな釣りだが、春菜は料理を鍛えるときに材料調達のためにせっせと魚釣りをしていた時期があるので、今更鍛えなくても条件は満たしている。


「とりあえず私、最近メイキングマスタリーの取得条件について、なんとなく納得できた気がするよ」


「せやろうなあ」


 何か一つ高い専門分野を持ち、それを十二分に活かすためには、広い土台が必要になる。恐らくメイキングマスタリーはそういう思想により取得条件が厄介なことになっていたのだろう。ひとつ新しい分野ができるようになるたびに、その事実をかみしめている春菜。


 もっとも、宏のように生産と名がつくすべての分野が極端に高い場合は、土台もくそも無いのではないかと思わないでもないのだが。


「で、まあ、食堂の話に戻すとして、真琴さん」


「そこそこ話題にはなってるわよ。あのまずい学食以外の選択肢ができるんだったらありがたい、って言うのが大方の意見ね。あたしが仲良くなった人間の半分は食べに行くって言ってたわね」


「残りの半分は、お昼自分で作ってきてる感じ?」


「もしくは調達してきてるか、購買のパンで済ませるかって感じね。そう言えば購買のパン、中身が良くなったから凄い売れ行きみたいよ。おかげで学食に頼らなくてもいいって言ってる子も結構いるわね」


 真琴の情報に、思わず顔を見合わせる宏と春菜。正直購買のパンは別段学食にダメージを与えるためのものではなかった、というよりは学食の営業時間外に校内で食料を確保する補助手段として考えていたのだが、それがメインになりつつあるのは皮肉な話である。


「校内はそんなに問題にならない感じだけど、周辺の店との兼ね合いはどうなの?」


「フルート教授の話だと、メインターゲットが違うとか、ランチ営業は率が悪いからやめたかったとか、そう言うのがほとんどだって事だから大丈夫そうな感じ。元々学生の客はそんなに来てなかったみたいだし」


「へえ。その割には、新しい店ができたりもしないんだ」


「不思議な話でしょ?」


 真琴の質問に対し、春菜がフルート教授から聞いた話を伝える。その内容の胡散臭さに、色々と思うところが無いでもない一同。


「まあ、そう言う訳だから、明日からは色々と警戒した方がいいかなって思ってる」


「そうね。対策とかは立ててる?」


「ある程度公権力に頼る前提で、いろいろと備えはしてるよ」


「具体的には?」


「しばらくの間、営業時間ちょっと前にお城から何人か騎士を借りる話がついてるのと、清掃関係も兼ねて店の周辺の道に生ゴミと分類できるものが捨てられたら即座に生ごみ入れに転送、肥料に加工するシステムがついてる、はず。だよね、宏君?」


 春菜が微妙に自信なさげに対策を告げ、宏にそれでいいか確認する。それに対して一つ頷く宏。


「後は、一般に食材として使わん虫とか害獣の類を持ちこめんように結界張ったあるな。結構ファジーな理論でやっとるから、グレーゾーンにも柔軟に対応や」


 されそうな嫌がらせぐらいは大体予想できているもので、その手の対応もある程度は事前準備ができているようだ。


「まあ、それ以前の問題として、店の中とか店の前で喧嘩したりとか店妨害するためにトラブルとか起こすような輩は、問答無用で詰所に転送するようにしたろうか、っちゅう話も出てんねんけどな」


「それを実現したら、大体のトラブルは非常に楽に片がつくわよね」


「詰所の人らが物凄い忙しいなりそうやけどな」


 宏の非常に物騒なアイデアに、基本的に賛成の意思を示す真琴。もっとも、まだ話し合いの段階なので、勝手に実行する訳にはいかないのだが。


「後は、放火とか物理攻撃とかやらかした場合、同一人物、もしくは同じ集団やっちゅう判定した一団が複数回攻撃仕掛けてきたら、三回目までは完全キャンセルで四回目からは全部反射するようにしとるから」


「それはそれでいいがかりをつけられそうね」


「そん時はそん時で、国家権力に頼るわ。そもそも、うちらが他人燃やしたり殴ったりする理由もあらへんしな」


「てか、四回目からの理由は?」


「仏の顔も三度まで、っちゅうことや」


 宏の言葉に、それは本当に仏の顔なのだろうか、と突っ込みそうになる真琴。周りを見ると、達也も同じように突っ込みたそうにしている。


「まあ、防犯対策はそんなところやな。後はせいぜい、防犯カメラと記録システムを組み込んで、改ざんとかできひんシステムやっちゅうことを証明して、騎士団とかそこら辺に証拠として使えるっちゅう認定もらっといた程度や」


「あ~、それがあるから、言いがかりをつけられたときに素直に国家権力に頼れるってわけか」


「そう言うこっちゃ。最近ウルスで何個か試験運用しとってな。レイっちのお墨付きのおかげでむっちゃスムーズに証拠認定の言質が取れたで」


「ウルスでやってたのかよ……」


「特にトラブルの多いあたりとかきっちりガードせなあかんところとか、そういうところで重点的に試験運用しとってん」


 最後にある意味で一番えぐい防犯対策を提示した宏に、思わず遠い目をする一同。犯罪などやる方が悪いのは間違いないが、それでも手を出した時点で終わりが確定しているのはいくらなんでも色々ひどい。


「まあ、僕と春菜さんの方からはそんなとこやな。澪の方はさっきの話でええとして、兄貴と真琴さんはなんかある?」


「あたしの方は、まだまだ話せるような事は無いわねえ。多少効率よく魔法が使えるようになった感じはするけど、逆に言えばその程度だし。一応達也にテキスト見せたけど、魔法を良く使う人間なら当たり前にやってる事しか載ってないみたいだしね」


 宏に振られた真琴の報告に、同意するように達也も頷く。


「さよか。一応後でテキスト見せて。もしかしたら、参考になるような事が書いとるかもしれんし」


「それはまあ、問題ないけど、所詮初級よ? マジックマスタリーの初級持ってたら普通にやってる事ばかりだと思うわよ?」


「まあ、そうやろうけど、一応念のためにな」


「了解。で、人間関係に関しても、今のところ特に派手な展開は無いわね。一応、ライム達を軸に二つ三つ派閥みたいなのはできつつあるけど、それが表立ってどうって訳じゃないし」


 宏の要求に頷き、更に話を進めていく真琴。そこで出てきた派閥、という言葉に眉を一瞬動かす達也。


「派閥? 具体的にはどう言う感じだ?」


「まあ、そんなに難しい話じゃないわよ。単に、ライムをかわいがりたい一派とライムを口実にあたし達を排除したい一派、その中間で中立って言うよりはあたし達よりの一派って感じね。現状ではあくまでそんな感じのグループが成立しかかってる、って程度で、何か動きが起こるところまでは行ってないわ」


「なるほどな」


 真琴の説明を聞き、状況を大体把握する達也。まだ切っ掛けと呼べるほどの事も無く、事がおきたり派閥として結束したりする状況ではなさそうだが、かといって放置するのもよろしくない。何とも微妙な状況である。


「下手に手ぇも出せんけど、放置するんも怖い感じやなあ、そら」


「私も結構覚えがあるんだけど、学校とか会社みたいな組織の中だと、当事者が動くと事が大きくなりすぎるし、かといって外部から口はさむのも大体ろくなことにならないんだよね」


「せやねんなあ。まあ、今回はまだたんに派閥闘争に発展する程度で済みそうやし、最悪でも旗頭にされそうなライムらを撤退させればこっちに飛び火はせえへんやろうから、いざという時の対処自体は簡単なんが救いやなあ」


「私達はともかく、その後始末を押し付けられる学院長さんとかは簡単には行かないんじゃないかな?」


「っちゅうても、向こうの元々の目的がそれやねんし、そこは自分でどうにかしてもらわんと。大体、学校の改革とかそれに伴う派閥争いとか、本来やったら外部の僕らが年齢一桁の子供に負担押し付けてまで付き合うこっちゃないで。そこまでの義理も責任もあらへんし」


 宏のかなり無責任な言葉に、だが反論の声は上がらない。宏の言い分は無責任ではあるが、ぽっと出の他所者が混乱を収めるまで付き合うと言っても、何ができる訳でもないどころか、恐らく余計混乱がひどくなるだけであろう事が予想されるからである。そんな事に、ライムに負担を押し付けてまで付き合う責任があるのかと言われると何も言えず、かといってライムを撤退させた後に、単なる外部の一業者であるアズマ工房が口を挟む権利を認めてもらえるとも思えないし口を挟む必要も感じない。


 結局のところ、無責任だという評価で多少看板に傷がつくだけで済む宏の主張以外、取れる対応策など無きに等しいのである。看板の傷にしたところで、恐らく西部三カ国の関係者は気にもかけまいし、他の国の上層部にしてもその程度の評判で敵対できるほど、アズマ工房の技術力と影響力は小さくは無い。


 つまり、宏達のダメージなど、あってないようなものなのだ。


「まあ、真琴さんの話はそれでええとして、兄貴の方は?」


「俺の方は、って言われてもなあ。残念ながらまだ、ようやくいくつかの伝承が整理できた程度だからなあ」


「因みに、どないな感じ?」


「そうだな。間違いなくプレイヤーだと確定できたのが三件。そのうち一件は、ファーレーンの書庫では見つからなかった別口のだ。で、恐らく一番影響がでかかったんじゃないかと思う廃人らしい魔法使い、及びそいつと一緒に飛ばされてきたと考えられるプレイヤーのは、まだいくつか手がかりが手に入った程度だな」


「なるほどなあ」


 半月以上の調査内容を簡単に説明する達也。膨大な量の資料から、プレイヤーがやらかしたと思われる出来事をピックアップするのは、彼ひとりではなかなか進まないのである。


「まあ、それでも人数はほぼ確定したし、伝承内容も大雑把には把握できたがな」


「人数は何人やったん?」


「俺たちこみで二十人きっかりだ。新しく見つけたマルクトのが一人、確定してるのが三人と四人。後七人分が今裏付けを取ってる最中だ。もっとも、これが千年以上の幅があるもんだから、なかなか進んでないんだがな」


 千年以上の年代の幅と聞き、唖然とする宏達。千年なんて、時差とはとても言えない範囲だ。


「そこまでバラけおるとか、えげつないなあ……」


「まったくだ。よくもまあ、俺達は半年程度の幅で全員揃ったもんだよ」


「その奇跡に感謝すべきか、そもそもこっちに飛ばされた事に文句を言うべきか、ちょっと悩ましいところだよね」


 千年以上という時差に出てきた達也と春菜のコメントには、誰一人として反論できない。


「まあ、そう言う訳だから、もうしばらくかかる」


「なるほど。それはそれとして兄貴、神獣がらみは調べてへんの?」


「そっちも一般書庫で軽く調べたんだが、事例が少なすぎる上に余計な資料が多すぎてなあ。そもそも一般書庫で調べた範囲ですら、神獣の外見とか能力にはまったく統一性がなかったんだ。きっちり調べたところで、データが当てになるかどうかが物凄く怪しいぞ?」


「さよか。ほな、後回しでもしゃあないか」


「少なくとも、俺はそう判断した。まあ、明日からヒロの手を借りれるんだったら、プレイヤーがらみの方はすぐ終わるだろうしな。それからでいいんじゃないか?」


「せやな」


 達也の判断に、これまた誰も異論は無いらしい。この会話で、明日からの方針が決まる。


「ほな、夕飯食ったら、春菜さんはボート作ろうか」


「了解。どれくらいかかりそう?」


「まあ、材料あるし加工だけやし、一週間ぐらいちまちまやっとったら終わるやろう」


「そっか。頑張るよ」


 明日から開店だというのに、妙に余裕な宏達であった。








 同時刻、とある部屋。


「忌々しい連中だな、まったく……!」


 ルーフェウス学院大食堂の料理長が、憎々しげに吐き捨てる。その手には、ここ数日の帳簿が握られていた。


「今までのように排除する事はできないのか!?」


 凄まじい形相のまま、人相の悪い男にそう声をかける料理長。料理長の言葉に、人相の悪い男が首を横に振る。


「残念ながら、今回は妙に人の目が多くてな。営業が始まるまでに手を出せば、すぐさま衛兵が飛んできそうだ」


「くそっ! 本気で忌々しい話だな!」


 その回答を聞いた料理長が、テーブルに八つ当たりをしながらどなり散らす。


「せめて、購買のパンの販売を止める事はできないのか?」


 そのまましばらく身勝手な言葉をわめいていた料理長が、ようやく冷静になって小ざっぱりした身なりの男に質問を飛ばす。普通に役人風の人物だ。


「無理でしょうね。残念ながら元よりあちらこちらから要望があった事ですし、食中毒でも起こらない限りは販売自粛には至らないでしょう」


「なら、パンに一服盛ればどうだ?」


「それも難しいですね。今のパンの販売方式は注文を受けてから取り出す方式に変更されていますし、納品も完全に密封された腐敗防止の袋に詰めて持ちこまれています。何より、例の男の入れ知恵のせいで、全てのパンが個別に包装されてこれまた密封されている上、密閉されていないなら一目で分かるように作られているため、外部から細工すればすぐに分かってしまいます」


「パン屋の方に圧力をかけるのは?」


「店にちょっかいを出すのと同じ理由で、現時点では難しいでしょうね」


「まったくどこまでも忌々しい!」


 既にきっちり対策されている事を聞き、人を殺せそうなほどの憎悪をこめて吐き捨てる料理長。


 因みに、クリームパンを作って購買に納品しているパン屋は、学食にパンを収めているパン屋と同じである。あのまずい黒パンを作っているのも、値段を限界まで値切られた結果だ。良心の問題で取引を切ろうにも、言いだそうとすると周囲で不審な事件が起こるために実行できず、泣く泣くゴミよりマシというパンを焼いて納品しているのである。


 クリームパン作りを持ちかけられたときに、断る口実として宏にそれを告げ口した結果、元々いろいろ疑念を持っていた学院長の耳に入り、あっという間に巡回をはじめとした様々な対策が取られてしまったのだ。


 なお余談ながら、パンを袋に入れて密封する方法は、そういう機械を宏が作っている。テレス達が作れるように構造を簡略化した上で、ついでに腐敗防止と殺菌、密閉判定のエンチャントを同時に施せるように設計されたものなので、その気になればある程度量産することもできる。


 袋詰めのシステムは安全性だけでなく、手の汚れをそれほど気にせずにパンを食べられるという点でも、フィールドワーク主体の教授や学生達から評判がいい。既に購買のパンを見てこの機械に興味を持ち、購買担当を経由して宏に話を持ちかけている人間も何人かいるのはここだけの話である。


「まあ、店が始まればいくらでもやりようがある」


 料理長をなだめるように、人相が悪い男が口を挟む。


「本当だろうな?」


「ああ。たかが料理屋一軒、潰すぐらいは大した仕事じゃない」


「本当だな? 期待しているぞ」


「任せておけ」


 人相の悪い男が力強く言い切ると、ようやく料理長が上機嫌になる。


「さて、明日の仕込みのために帰るとするか」


「仕込みなんぞろくにしない癖に、よく言う」


「多少は手を入れているぞ、失礼な」


「そうしないと、食った人間に死人が出るからだろう?」


「まあな」


 人相の悪い男の言葉ににやりと笑い、そのまま部屋を出ていく料理長。


「まったく、ほどほどにしておけと言ったのですが……」


「そろそろ、あの男も潮時だな」


「そうですね。まあ、例の料理屋は排除するとして、その後は折を見て……」


「ああ、分かっているさ」


 料理長が出ていってすぐに、非常に悪そうな顔で囁き合う人相の悪い男と役人。どうやら、一連の不正の責任を、全て料理長に押し付けて処分するつもりのようだ。


 その後、店を潰した後の具体的な計画を打ち合わせし、タイミングをずらして部屋を後にする人相の悪い男と役人。彼らは最後まで、自分達の会話一部始終を記録していた人物の存在に気がつかなかった。








「と、言うことになっている」


「これはまた……」


「どうせこんな事だとは思っていましたが、よもや事務局長がここまで深くかかわっているとは……」


 翌日の早朝。一部始終を記録していたレイニーがレイオットの指示を受け、学院長とフルート教授を中心とした、改革派の中枢メンバー数人に報告を済ませていた。


 無論、ここにいるメンバーは全員、後ろ暗いところなど何一つない人間ばかりである。そうでない人間は既にレイニーの手によってふるいにかけられ、こっそり中枢から排除されている。


「ついでにここに、学食の裏帳簿を用意した。こっちは事務局長の裏帳簿」


「ありがたい事ですが、そんなに簡単に見つけられるものなのですか?」


「素人ならともかく、わたしみたいなのを誤魔化せるような手の込んだ隠し方はしてなかった」


「そうですか……」


 準備よく色々持ち込んでくるレイニーのコメントに、思わず沈黙してしまう学院長達。


「……我々が調査をしても見つけられなかったものをここまであっさり探し出されてしまいますと、こちらの能力のなさが情けなくなってきますな」


「わたしはそれが専門。適材適所」


「それはそうなのですが……」


「わたしに学者の仕事は出来ないし、学者もこういう仕事をするべきじゃない。学者は学問を追及して、少しでもいい暮らしを実現するヒントを探すのが仕事」


 どうにも落ち込みがちな学院長に、淡々とそう本心を告げるレイニー。学者が裏稼業まで完璧にこなしてしまうと、レイニーたちの居場所はどこにもなくなる。


「それで、この国ではこの程度の証拠で処罰するのは無理なはず。どうする?」


「そうですな。司法関係者が直接命令しているところを確認し、かつ、実行されているところを押さえでもしない限りは確固たる証拠とまでは言い切れないため、処罰するのは難しいでしょうな」


 レイニーの問いかけに、一つ頷く学院長。


「直接命令してるところを確認して、そこに踏み込ませるのは可能」


「そうなのですか!?」


「連中の拠点は全部洗い終わってる。警備もざるだし感知系も弱い。ハニーにちょっと手伝ってもらえば、一般人の二十人ぐらいは余裕で忍び込ませられる」


「……その体たらくで、今までよく捕まらなかったものですな……」


「この国のまどろっこしい司法システムじゃなきゃ、とっくに破滅してる」


 とことんまで小物臭が漂っている相手に対し、本気で頭を抱えたくなる学院長。実際のところ、あの会合があった部屋に忍び込んで発見されないようにするぐらい恐らくファムでも可能だろうというのがレイニーの見立てだが、言う必要のない情報だと判断して黙っているため、学院長はそこまでだとは知らない。


 もっとも、拠点はすべて洗い終わっているが、どのタイミングで命令するかまでは確定できない。いかにレイニーと宏が組んで偽装しても、何日も潜伏させたままというのは不可能であることも考えると、どこに網を張って司法関係者を潜入させるかの判断が難しい。


「まあ、ここから先は我慢比べになりそうですが……」


「ハニーたちはそういうの結構得意。ただ、あまり時間かけることじゃないから、こっちでも情報戦仕掛けておく」


「……お願いします」


 レイニーの申し出に、学院長達がそろって頭を下げる。こうして、誰かを連想させる小物達の処理は、地味に宏達以外が勝手に総力戦に持ちこむのであった。

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