第9話 異世界にて
うわぁぁ気付いちゃいけないことに気付いてしまいました。
先日投稿した話が本来はこの話の後の話であばばばば
では本来の第9話ですどぞどぞー
奇妙な浮遊感と存在が造り直されるような嫌悪感が終わり。ようやく意識が蘇った。あれから何分経ったのだろう。
身体は疲れきったかのように一切動いてくれようとせず文字通り指の一本、瞼さえ動かない。
どうやら異世界に着いているらしいが全く実感がない。目さえ開いてくれれば周りを見渡すことも出来るのだろうが如何せん瞼が重い。まるで蓋でもされてるようだ。
これでは瞼より目蓋の方が字面が合ってるな。目玉焼き作るときに蓋するように目を隠してるようだ。
それにしても瞼と目蓋の使いわけは難しいよな。「分かる」「解る」「判る」に比べたらまだ分かりやすいものだが……あれ?解るだっけ?良く判からなくなってきた。
脳を覚ますため無駄な事を考えて頭の体操してた(眠気には思考が効果的なのだ)らどうにか回復したらしくどうにか立ち上がれるまでには動けるようになった。
なんか起動準備が整って自動的にスイッチが入ったロボットみたいな感覚だった。
立ち上がったあと目を開いてみるとそこは木に囲まれた場所だった。ぱっと見では良く分からないだろうが恐らく元の世界とは生態系が違うのだろう。
「それにしても異世界か……」
頭では分かってるはずだったがやはり実際に来てみるとやっぱり自分が生きてた世界と違うことがひしひしと感じてしまう。分かってしまう。
そして少しだけ、ほんの少しだけ感じる違和感。
身体が軽い。
これは異世界に移った影響なのかそれとも一切関係無い別の何かなのか、もしかしたら単に意識を失ってた後に体力が回復しただけかもしれない。
まぁ無視しても大丈夫だろう。何かあるのならその時まで待てば良い。
謎の体調好調は置いておくとして元の世界に関してだが、これは別に語る必要も無いかも知れない。
語れることなど無いしそれは俺とは全く関係の無い物語となるのだろう。
一つ言えるのは俺には元の世界に戻る必要など無くそんな事など出来ないだろう。
少し名残れ惜しいが既に過去のようなものだ。もう戻れ無いから考える必要も無い。
幸福かどうかは判断出来ないが充実した一生(まだ生きてる)だった。半年とはいえ濃度の濃い(濃すぎて忘れたい位だが)体験ができた。そのきっかけだったとは言えそんな世界にはもう戻れないと思うと今までの感謝と共に少しだけ切なくなってくる。
それにしてもやけに生物の感じがしない。近くに一匹と少し遠くに何匹か。今分かるのはその程度だ。近くに一匹?
ふと試しに後ろを振り返ってみるとデカい熊が立ちずさんでいた。
大きさは約三メートル。電車の中では確実に立てない大きさだ。座っても頭にぶつけるんじゃないか?そんなことより……
「うっ……………」
叫びそうになるのを必死に堪える。
ヤバいヤバいヤバいヤバい
弁解だけはしておこう。予想はしてた。物語でもセオリーと言うか定石と言うか余り好きな言葉ではないがテンプレート略してテンプレ(関係無いがナンプレと聞き間違えそうだよな。一文字違いだし。ホントに関係無い)みたいなものだし人目につかないよう配慮してくれたのだろうが森の中で倒れていたら格好の餌だろう。倒れてる間に食われなかったのを感謝するべきか。すべきでは無い気がする。
しかし流石にいきなりしかも武器が無く魔法も覚えてない時点で出会うとは思いたくなかった。
元の世界で人間は武器を持ち進化することで他の動物より力を持った。知能も人類が発達する大きな要因だろうが今は力、言い換えてしまえば暴力の話をしている。知能に関しては文化の話をするときに一緒にするだろう。今は関係無い。
それで今言ったように人間は武器を持ち、数の利をとることで獲物を捕らえるようになった。
そして時が経ち、今は一人で大抵の動物は殺せるくらい武器は進化してきた。攻撃方法に突く、投げる、刺す、切るは他の動物も当たり前にするのだろうが炎、爆発なんて代物は人間しか使わないだろう。
念のため言っておくが射つというのは究極的には投げると同じだ。弓であれ銃であれ。
そう言う訳で元の世界では武器を持った人間より強い動物はいないと言っても良いだろう。もちろん武器にもよるし素手では話にならない。
そしてこの世界は武器はあまり発達してないがそれに対して『魔法』というものがある。
恐らく人間以外にも使えるものなのだろうがそれは余り関係無い。猿だって道具くらい使うだろう。
恐らく武器がそこまで発達してない代わりに魔法がそれなりに発達してるのだろう。恐らく武器よりかは便利で応用の幅が広い魔法の方が重宝されたのだろう。
蒼人形に聞いた限りでは世界の質としての差は余り無いのだろうから(質なんてあるかわからないが)比べたら元の世界での武器を十とするとこの世界の武器は三、魔法は七の比率になるらしい。正直二兎を追う者は一兎をも得ずの虻蜂とらずで中途半端な気がするがこれが正常なのだ。
なぜまだ森の中でまだ世界を見てすらいないのにそんな事をほざく(自分には使わないが敢えて使う)のかというと正直師匠たちの受け売りだ。銃がないのなら魔法のレベルもある程度決まってくるそうでその結果が先程の数字らしい。
魔法がある代わりにその分強い生物が増えると言うことらしいが。人間なんかじゃ相手にすらならないようなそんな生物。
長々と説明したが簡潔に言うと今の俺には戦う術がないということだ。
いやまぁ龍矢師匠からせっかく教えて頂いた格闘術だが実は人間以外には今のところ無力だ。魔法は当然として所得経験値量アップ(とりあえずそう呼ぶ)は元の世界では技術面と知識の所得スピードのみ適応されていたらしくいくら半年鍛えたとはいえ今の自分は標準筋肉量のちょっと上くらいの力しか無い。
魔法で肉体強化しないと獣と戦いにすらなれないだろう。
しかし闘いでは基本武器と魔法を主に使っていくのだが徒手空拳は静かに、そして狭い場所では非常に有効だ。
武器と魔法とは違い自分だけではなく相手の力を利用する。とても柔軟な戦いができるが龍矢師匠から重点的に教わったのはそこではなく、体の動かし方、気配のノウハウなど必要な事である。
もちろん格闘技術も教わっている。尋常じゃ無いくらいで……
そんなことより今は目の前にいる熊だ。
ここで魔法を創る手もあるが何が起こるか分からないため却下。暴走しておっ死んだなんてつまんないことにはしたくないし蒼人形の言う通りだったら少し時間がかかり隙も大きいのだろう。
だったら残る手は一つしかない。
基本的で誰にでも出来る対処法だ。
気配を薄くするように呼吸を最低限に抑え熊を警戒しながら一歩ずつ一歩ずつ後退していく。
相手から目は離してはいけない。視界から外すと次に何が起きても対応できなくなる。
そしてそのまま少しずつ離れて行く。熊に近寄られないようにゆっくりと、真剣に。
決して格好のよい台詞ではないが。
熊はしばらくこちらを見ていたが余り興味は無かったのか熊は他の動物(餌)を見つけたらそれを追いかけその場から去っていった。
「ふーー」
息を殺すため呼吸を抑えていたからか口から空気が漏れそのままため息となった。
さすがに九死に一生とまではいかないが危機は無くなったようだ
どうせならここで座り込んでしまいたいがまだ油断はしたくない。
その後注意を張りながら辺りを探索し、どうにか安全そうな洞窟を見つけ現状を把握する。
少し遠いが歩いて行けるところに川があり、ある程度生きるのには問題無さそうだ。
木の実もあったし火をつけられる所もあった。寝床に関しては考えなくても良いだろう。どこでも寝れる体質なのだ。
戦力としては今はさっき考えたように無力。人間相手ならまだしも動物が相手だと武器か魔法がないと戦えない。
あとこの世界の詳細を知らないからそこもどうにかしないとな。
今は問題ないが住民とは会話も通じないだろうからそこもどうにかしないといけない。
一番大切なのは魔法の発動方法だろう。これは『魔法創造【マジッククリエイト】』で決められんのか?
とりあえず頭の中で作るべき魔法を考えてみる。なるべく暴発しなそうで失敗したときの被害が少ないものが理想だろう。
まず火はダメだろう。下手したら山火事になってしまうし一酸化炭素中毒にでもなったりしたらシャレにならない。
それでは水ではどうか?それも危険だろう。土や風も分かりづらいからだめか…
そもそもこの世界の魔法には属性なんてものが存在するのだろうか?
第一仕組みがわかってない。魔力を使う事は分かっているがそれが魔方陣を作るタイプかそれとも詠唱するもかのか、そしてないとは思うがスキルのようなものが存在して魔力と引き換えにして発動するタイプだろう。
それで恐らく前者が正解だな。
魔法を創ってみれば法則性が分かっていくかも知れないがこればかりはやってみないと何とも言えない。
「って、あーーー」
思わずアホみたいな声を出してしまった。
なんでこんな簡単なことを思い付かなかったんだろう。
簡単なこととはホントになんで思いつかなかったのかが分からなくなるくらい当然のことだった。
すなわち「とりあえず魔法を適当に作ってみる」つまりそう言うことだ。
細かいことを考えずとりあえず『魔法創造【マジッククリエイト】』の使い方を慣れるまでひたすら魔法を創る。
そして後で使ってみるだけで良いのだ。
言うより慣れろ、理論より体験。簡単だ。
決まったなら善は急げだ。
魔法の第一歩の合言葉を口にする。
「『魔法創造【マジッククリエイト】』セットアップ」
このあとに前回投稿した話があります。
混乱してしまった方はホントにゴメンナサイ。




