6日目 急いでいると。
長い間更新をとめており、すいませんでした。
本当はこのままこの小説は消そうと思っていましたが、ユニークやPVが更新をとめてからもあったのでもう一度書くことにしました。
不定期更新ですが、暖かい目で見守っていただけるとありがたいです(*^^*)
ある日の放課後。
僕はいつもより上機嫌で荷物をカバンに詰める。どうしてこんなに上機嫌なのかというと、毎月買っている雑誌の発売日だからだ。
今月号には僕の大好きな絵師さん(ゲームの原画をやっていたり、ラノベの挿絵を描いたり、マンガを描いたりする人)の特集が載っている予定。
その人の描く女の子はとっても可愛い。ああ、考えただけでにやけそうになる。
今はテスト一週間前期間なので部活もない。だからすぐに買いに行けるというわけだ。
でもオタクだということを学校の皆に隠している以上、この制服のまま買いに行くことはできない。早く帰って着替えなくては!
「お、もう帰んの?」
荷物を詰め終えて教室を出ようとしたとき、七原に話しかけられた。
今急いでるのに!なんなんだよ!
そう言いたいところだが、ぐっと抑え笑顔で応じる。
「なーに、七原?」
「あ、いや、その、忙しいならいいんだけどさ」
僕のとびきりのスマイルを前に少し戸惑っている七原。
「すこおおおおおおおしばかり急いでるけど、何の用?」
またまたとびきりスマイルで対応する。
いやあ、僕って優しい。
「ならいいんだ。勉強教えてほしかったけど、明日でも良いし」
「ごめんよ。じゃあ、明日じっくり教えてやるから!また明日!」
「おう、ありがとな。また明日」
爽やか笑顔でキリッと決め、教室を出る。七原が苦笑いをしていたが気にしない。
颯爽と教室を出てすぐに下駄箱に向かう。
―つもりだった。
「あ、山瀬だ」
「蓮…?」
廊下を早歩きで歩いていると(走りたいのはやまやまだが、走ると先生に怒られるのだ)河上と夢華に話しかけられた。
なんなんだよ今日は!急いでいる時に限ってなんでこんなに話しかけられるかなあ!
「何?なんか用?」
まあ一応まだ雑誌の件でテンションが高いので、笑顔で振り向き返事をする。
すると、夢華は目を見開き少し顔を赤くする。
あれ?この反応はまさか…この笑顔ならあのいつもツンツンな夢華にも通用するのか…?
意外なことを発見してしまった。これからはこれで夢華を落ち着かせることにしよう。
「あちゃー、夢ちゃんが…」
河上はそんな夢華を見て苦笑いをする。
「夢華、顔赤くね?大丈夫か?」
にやにやしながら問い掛ける。
「赤くなんて、なってないし!」
「うそだー、ほらさっきより赤くなった」
「うるさーい!今、蓮が変なこと言ってくるから怒ってて顔赤くなってんの!」
「俺が変なこと言う前から顔赤いじゃん?」
「そそそそんなことないもん!」
言葉こそいつものように刺々しいが、なにもしてこない。なんだかいつもより少し大人しいぞ。
「まあ、俺の笑顔がそんなに」
「もう、ばかばかばかー!」
僕が更にからかってやろうとしたら、夢華は目をつり上げ顔を更に赤くさせ僕の鳩尾に前蹴りを食らわせると、一目散に走り去っていった。
鳩尾に思いっきり蹴りを決められた僕はというと、大きなダメージを受けしゃがんでうずくまる。
ああ、やっぱり夢華だ。調子に乗った僕が悪かった。
最初の方はまだ大人しかったのに。なんだ?笑顔のことを持ち出したのが悪かったのか?
「あらら、山瀬も大変だねえ。まあ頑張って!私は夢ちゃんを追いかけるからー」
うずくまる僕に声をかけると河上も夢華を追って走っていった。
僕も早く立ち上がらないと…。これじゃあ一人で腹を抱え込んでる変なやつだ。
便秘で腹が痛くてうずくまってるのかと思われてしまうかもしれない。
「あれれ?先輩じゃないですか。なぜこんな廊下のど真ん中でお腹を抱え込んでるのですか?…ああ、わかりました!生理痛ですね!」
「んなわけあるかああああああああ!」
僕はばっと立ち上がりそんな失礼なことを言い出す後輩に目を向けた。
予想の斜め上をいく発言でびっくりしたぞ。
「俺は男だ!そんなものあるわけないだろう!」
「これだからなんでも本気にする男は…。ただのジャパニーズジョークじゃないですか」
「ジャパニーズジョークってなんだよ、ジャパニーズジョークって」
「アメリカンジョークの少し先をいくジョークですよ」
そう得意気に言い、たいしてない胸を反らせた。
ああ、本当に今日は厄日なんじゃないか。次々と色んな奴らが足止めをしてくる。
最高潮だったテンションがどんどん下がっていくのがよくわかる。
「で、ジャパニーズジョークは置いておくとして、なぜ日夏は二年生の階にいるんだ?」
「そうでした!私は山瀬先輩なんかに話しかけている場合じゃありませんでした」
「なんか言い方酷くないか…?」
「これからテスト期間中の朝練について、このえ先輩と話をする予定だったのです!では先輩、あまりウチと話をすることができなくて寂しいとは思いますが、また今度です!」
早口でそうまくし立てると日夏は走り去っていった。
途中で先生が通りかかり、日夏を注意する。日夏は慌てて早歩きに転換した。
なんとなく、ぷっと吹き出してしまう。
あーあ、乗る予定だったバスは絶対に行ってしまっただろうな…。
「まあ、いいか」
なんだか疲れてしまい、いらいらする余裕もなくなってしまったのでゆっくりと帰ることにした。どうせ雑誌は無くならないだろうし。
部活がないだけまだ早く買えるじゃないか。
前向きに考え、僕は再び下駄箱に向かったのだった。