2日目、朝 騒がしい友達と。
「おにぃちゃん!朝だよぉ、起きてよぉ。遅刻しちゃうよ?」
うーん…。まだ眠いし……。
あと少し寝させてくれ…。
「もう!起きないとこちょこちょするよぉ?」
妹からこちょこちょ…。いいなぁ、可愛いなぁ。これなんてエロゲー?
もうここは天国か?あんな生意気な妹がこんな可愛くなるなんて………
…ごふっ!
「おい、馬鹿兄貴!早く起きないと遅刻するって言ってんでしょ!?」
……夢オチ、というか妄想オチでした。
現実の台詞は
「馬鹿兄貴!朝だよ、起きな。遅刻するんじゃない?」
「起きないとぶん殴るよ?」
でしたとさ。
なんて悲しい現実。可愛くて純粋で素直な妹が欲しかったよ…。
「変な面下げてないで早く下降りて。もう7時だよ?」
7時かぁ……。って7時?
えーといつも7時20分のバスに乗っててバス停まで歩いて約10分だからー。
「あと10分で家出ないとじゃん!!」
「だから起こしてたのに」
妹を部屋から追い出し、急いで着替える。
こんなときに限ってネクタイが絡まってうまく結べない。
着替え終わるとすぐに下に降り、髪を少し整えてからテーブルの上に置いてあったコンビニのパンを手に取り、家を出た。
やべー。昨日買い物から帰った後飯食って風呂入ったらずっとギャルゲーしてたからな。
寝るの遅くなっちゃって……何時に寝たんだっけ?3時くらいだったかも…。
最近ギャルゲーのしすぎでろくに寝れてねぇな。
昨日は買い物で疲れてたのにあんなにしちゃったし。
そろそろちゃんと寝ないと。
「蓮ー!今日はギリギリね?」
バス停まで走って行くと夢華がいた。今日も馬のしっぽがよくお似合いで。
いつもはだいたい同じくらいに家を出るみたいで家の前で合流するんだが、今日は僕が遅かったから先に着いていたみたいだ。
「あれ?パン持ってるってことは寝坊でもした?」
さすが幼馴染だ。よくわかってらっしゃる。
「あぁ。寝るの遅くなって…」
「まーたギャルゲーとかいうのしてたんでしょ?」
「それにおまえの買い物に付き合ったせいで疲れたし」
「な……。別にあんたがちゃんと早く寝ればよかったんじゃない!」
「あーはいはい。そうですね。すいませんでしたー」
ったく、うるさいなー。おまえは僕の親かっての。
すぐにむきになりやがって。
「はぁ、間に合ったか。もうバス行っちまったかと思った」
僕たちの家とは反対側の方から高校は違うが中学は一緒だった友達の尚紀が走って来た。
こいつの高校と僕たちの高校は近いので同じバスに乗るのだ。
「あぁ。僕も今来たばかりだけど」
「え?蓮が?いつも早いのに」
「ゲームをしてたら寝るの遅くなって寝坊したらしいわ」
「ギャルゲーか!」
「おう」
尚紀も結構なオタクなので僕の本性は知っている。
同校のオタクな友達にも僕のことは隠しているが、尚紀とは色々あって知られてしまったのだ。
あ、バスが来た。
***
「なぁ、今は何のギャルゲーやってんだ?」
「天神嵐漫ってやつ」
「あぁ、みかんソフトのか。PAPに移植したやつ?」
「そう」
「みかんソフトのって他は全部エロゲーだからな」
「まぁな。でもエロゲーもおもしろいじゃん」
僕と尚紀はオタク話、というかゲーム話に花を咲かせていた。
隣で夢華が聞いているのにも関わらず。
「ねぇ、女の子がいる前でエロゲーとかいう話はないんじゃないの?」
やはりちょっと怪訝そうだ。少し眉間にしわが寄っている。
でもまぁ今更じゃないか。
「いいじゃんよー夢ちゃん。俺達高校生だぜ?でもこんな話している蓮がモテるのは気にくわん!」
「知らねーし。別にモテたいわけじゃねーよ」
「なんなんだよ!不公平だよ!俺だってオタクだってこと隠せばきっと──」
「あ、そろそろ同校の奴ら乗るバス停着くからこの話やめ」
「うぐ…」
決して僕はモテたいからオタクだってことを隠しているわけじゃないぞ?
ちゃんとした理由があるんだ。まぁそれはおいおい。
それを尚紀も知っているからこうやってオタクだってことを隠していてくれる。
普通に良い奴なんだがうるさいのが難点なんだな。
「山瀬、夢ちゃんおっはよー!今日もラブラブですなー」
「そんなんじゃねーし」
「そうよ、光!それに私はこんな奴、全っ然好みじゃないし!」
いや、そんなに否定されても悲しいぞ。
僕たちは幼馴染だしいつも一緒に登校しているせいかよくこんな風に言われるのだ。
もう高校2年生だというのに。皆おもしろがって言ってるだけだから別にいいけど。
ついでにこの騒がしい娘は同校の夢華と同じクラスの(僕と夢華は違うクラスだ)河上光だ。
いつも元気いっぱいで(うざいくらいに)明るい、ショートカットの女子である。
こうかいてみると僕の周りにはうるさい奴らばっかだな。
「そんなこと言って夢ちゃん、いっつも山瀬のこと─」
「わああああああああああ!なっななな何言ってるの光は!」
河上が何か言おうとしたが夢華に遮られてしまった。
何を言おうとしたんだ?こんなに夢華が必死になるってことは弱点か!?
それは知りたいな。今度買い物に誘われたときに弱点を引き合いに出せばなんとかなるかも…。
「おい、河上。なんだ?何言おうとしたんだ?教えろ!」
「えー?いやぁ、夢ちゃんがこんなに嫌がってるし無理じゃないかなー」
「そうそう!蓮は黙ってて!何も聞いちゃだめよ!?」
「はぁー、蓮はほんと乙女心わかってねぇな…」
後ろで微妙に尚紀が何か呟いていた。
皆してなんなんだよ、僕に隠し事か?
っていっても僕は河上に隠し事をしているわけだが。
なんだかんだ喋りながらバスはどんどん進んでいくのでしたとさ。