6話 酔うと人は何をするか分からない
お待たせいたしました~。6話目です。
今回は遠足編後半、微エロ?ですよ。(エロは人の解釈による)
それではどうぞ~☆
遠足の目的地は都内から二時間程で着く湿原だ。その湿原は自然公園で遠足にはもってこいの場所だった。
駐車場にバスがゆっくりと入り、止まった。その途端にバスからは人が雪崩の様に溢れ出た。
「畜生!ロランめ!」
セドリックが叫ぶ。
「ホントですよ・・・」
「全く同感だな」
リリーを車椅子に乗せ、愛斗が耳を穿り、首を回した。イヴォンは青い顔をして唸っている。
「ロランの奴・・・後で殺す・・・そして吐きかけてやる・・・」
渚やアルマと香奈、クローディヌ、カノンやカリーヌもげっそりもしている。当の本人は満足そうに恍惚の表情を浮かべている。
「歌を歌うっていいな!ジェラルド!」
「うるせぇ!お前のせいで鼓膜が変になっちまった!」
ロランと言う名の音響兵器は気にせずに笑いながら駆け出していった。その背中を恨めしそうに全員が睨む。
「はい、皆さん。整列してください。これから班ごとに自由散策の時間です」
全員が班に分かれ始める。愛斗はリリーの手を握って離そうとしない。
「リリー、今ならまだ間に合う。俺と一緒に行かないか?」
「大丈夫です。寂しいですけど・・・私は耐えて見せます!」
「リリー、お前はもう立派だな・・・」
そう言い、愛斗とリリーは抱き合う。
班がそれぞれ出発しても二人はまだ見詰め合っている。
「やはり・・・」
そう言い、リリーの方に歩き出した愛斗を渚が抑止する。
「愛くんはこっちよ」
よって秀人がリリーの車椅子を押す形となった。
「リリー、そのマフラーは?」
「これは愛斗さんに編んで貰ったんです」
秀人はそのマフラーにリリーの名前が編みこんであるのを見つけた。
「あのロリコンが・・・」
ロランが呟いた。
「全くね。あいつは変態の塊よ!」
二人がぼろくそ言っているのを尻目に秀人はリリーを見た。見れば見るほど可愛らしく見える。
おっと、いかんいかん。こんな目でリリーを見たら愛斗に殺される。でもリリーに好きな人が出来たら愛斗はどうするんだろう?自殺するんじゃ?いや、相手を殺すかも・・・。
秀人が色々な想像を膨らませているとリリーが秀人を見た。
「秀人さん?考え事ですか?」
「あ、いや、何でもないよ」
リリーが周りを見回した。
「それより秀人さん?霧が濃くなってきていません?」
秀人があたりを見回した。確かに白い霧に覆われた湿原は少しの恐怖を感じる。
「確かに・・・」
その時、黒い物体が草むらから飛び出した。
「きゃっ!」
リリーが叫ぶ。その声は湿原に木霊した。
「リリー!」
愛斗が霧に向かって突然叫ぶ。
「どうしたの?」
渚が愛斗を振り返った。
「リリーの悲鳴が聞こえた。俺は行く!」
愛斗は湿原の霧に消えていった。
「ちょっ、愛くん!」
「僕が追いかけますよ」
アルヴィが愛斗の消えた方向に走り出した。
「頼んだわよ!」
リリーが驚いて車椅子から転げ落ちた。
「リリー!」
秀人が叫んで、駆け寄った。飛び出てきた黒い物体は・・・。
「狐?」
そう、秀人が素っ頓狂な声を上げた。
「びっくりしました・・・」
リリーが必死に車椅子に戻ろうとしている。秀人はリリーを車椅子に優しく乗せた。
「でも可愛いな・・・」
リリーが狐の背中を撫でた。
「いい子ですね。帰り道が分からなくなってしまったの?」
狐がキューと一声鳴いた。ロランの叫び声が響く。
「わぁ!」
ロランがバランスを崩して、湿原に倒れこんだ。
「ロラン!」
ロランは返事を返さない。か細い声が聞こえてきた。
「助けてくれ・・・」
ロランの腕が湿地から出て来た。
「無事か?」
「まあな・・・」
ロランが湿地から這い出てきた。汚れは少ないが、顔はドロドロに汚れている。きっと顔から落ちたのだろう。
「リリー!」
愛斗が湿地の中から姿を現した。
「愛斗?何でここに?」
「リリーの悲鳴が聞こえたから飛んできた」
ロランが機嫌の悪い声で呟いた。
「何だよ・・・結局只のロリコンじゃねえか」
その一言が愛斗を刺激したらしい。愛斗の拳がロランの腹にめり込む。
「がっ!」
その後、ロランの悲鳴が湿原に木霊した。
「愛斗さん、何処に行ったんだろうな?」
アルヴィは一人湿原を彷徨っていた。アルヴィが全員と合流出来たのは一時間後の事だった。
霧が晴れた湿原の一角で全員は昼食をとることにした。それぞれが敷物を広げ、友達繋げて仲良く食べている。リリーはもちろん愛斗と一緒だ。周りには親衛隊もいる。
「リリー、チョコがあるぞ。ポテトチップスの方がいいか?それともこっちのクッキーがいいか?」
相変わらずの愛斗だがリリーもそれに素直に応じている。
「愛斗さん、気が早いですよ。まだお弁当食べていないんです。折角、愛斗さんが作ってくれたお弁当なんですから美味しく食べたいです」
愛斗はリュックからピンクの風呂敷に包まれた弁当箱を取り出した。それをリリーに手渡す。
「ほら、リリー。これがお前の分だ」
リリーが両手で丁寧に弁当を受け取った。
「ありがとうございます。愛斗さんの分は?」
愛斗は青い風呂敷に包まれたリリーのと同じサイズの弁当箱を出した。
「開けてみてくれ」
愛斗がリリーに言うと、リリーは風呂敷を解いて蓋を開けた。
「凄いですね」
秀人とアルヴィ、ロランやイヴォン達親衛隊も覗き込む。
「派手だな・・・」
ロランが呟いた。
「これがキャラ弁と言う物ですかね?」
アルヴィの疑問に愛斗が答えた。
「そうだ、俺の手作り弁当だ。ちなみに・・・」
愛斗が自分の弁当箱も開けた。中身はリリーのと同じだ。
「わあ、愛斗さんとお揃いですね」
リリーが感嘆の声を上げる。
「でも、愛斗さん。飲み物は?」
リリーが愛斗の持ち物を見て言った。
「そうだ。忘れていたな。今買ってくるから待っていろ」
愛斗が立ち上がり、自販機へと向かった。
愛斗が見えなくなるとイヴォンがバッグから何かを取り出した。
「イヴォン、何だそれ?」
秀人が尋ねる。イヴォンの手にはビールのような液体が入ったペットボトルが握られていた。
「これはな、俺の親戚のカジノに来た奴が俺にくれたんだ。不思議な効能があるらしいぜ」
「それはどんな?」
アルヴィが首を傾げた。イヴォンが自信満々の顔で喋りだした。
「まあ基本は酒だな。直ぐに酔っ払って大変な事になるらしい。俺はこれから愛斗を使って実験したいと思う」
「面白そうだな」
愛斗に殴られた恨みが強いロランが賛同を示した。秀人達も少しなら、と頷く。
イヴォンが紙コップに液体を注ぎ、愛斗の前に置いた。
「後は待つだけだ」
秀人達は素知らぬ顔をして待ち始めた。
二分後、愛斗がジュースを両手に戻ってきた。
「リリー、お前が好きなコーラを買ってきたぞ」
愛斗がリリーにコーラを手渡し、自分の場所に座った。直ぐに紙コップに気付く。
「何だ?」
愛斗は少し疑う素振りを見せたが、気にせずに一気に飲み干した。
「ビールみたいな味だな・・・」
愛斗にまだ変化は無い。秀人達は更に見守った。
三十秒後、愛斗に変化が起きた。目が焦点を失い、後ろに倒れこんだ。
「愛斗さん!?」
リリーが愛斗の腕を掴み、揺さぶった。
「何だ?これだけか?」
ロランが残念そうに呟いた。しかし、イヴォンは首を横に振った。
「いや、まだ後一つ効果があるんだ」
「どんな?」
秀人が適当に質問しているとイヴォンがそれを遮った。
「まあ見てろ」
更に見守り、五秒後。愛斗がゆっくりと目を開けた。
「愛斗さん?大丈夫ですか?」
リリーが愛斗に優しく声をかけた。
「リリ~?」
明らかに呂律が回っていない。リリーが愛斗の異常に気付いた。
「愛斗さん、酔っ払っていません?」
リリーが尋ねると、愛斗がリリーを見つめた。次に愛斗が取った行動は・・・。
「リリ~!」
愛斗がいきなりリリーに抱きつき、押し倒した。
「きゃっ!愛斗さん!?」
リリーはいきなりの行為に抵抗出来ずにされるがままにされていた。
「リリ~!しゅきだ~!(好きだ~!)」
愛斗はそう叫び、リリーの頬にキスをした。
「にゃあ!止めてください!」
リリーが必死にばたつくも愛斗の腕力には抵抗出来ない。
「かあいい~!(可愛い~!)」
愛斗が更に叫びリリーの体を弄り始めた。
「ふにゃああああ!くすぐったいです!」
リリーは猫みたいに叫びながら、必死に抵抗している。周りの視線が集まってきた。
イヴォンが冷静に感想を述べた。
「これは中々官能的な絵面だな」
「そうだな」
そして遂には愛斗がリリーの服の中に手を伸ばした。
「にゃあ!そこは!にゃああ!」
リリーが叫ぶも愛斗の耳には届かない。愛斗がごそごそと服の中も弄り始めた。
「にゃっ!ひにゃ!ふにゃああああ!」
その艶かしい声にイヴォンが鼻血を噴き出して倒れた。
さすがの秀人とアルヴィも止めに入った。
「愛斗!もう止めろ!」
「そうです、愛斗さん!ここは公共の面前ですよ!せめて二人きりの時にして下さい!」
しかし、その声は愛斗に届かない。逆にアルヴィが愛斗の蹴りを鳩尾に喰らい、吹っ飛んだ。
「愛斗!もういいだろ!」
ロランも止めに入る。
「リリ~!」
愛斗がリリーの首筋を舐め始めた。
「にゃあああああああ!くしゅぐったい!」
「貴方達!何をしているんですか!」
亜麻音が腕を組みながら歩いてきた。秀人とロランやジェラルドが愛斗をやっとリリーから引き剥がした。
「いや、何でも無いですから!」
秀人が叫んだ。
リリーは仰向けに倒れて荒い息をしている。服は肌蹴ていて誰の目から見ても良くは見えない。
「リリ~!」
愛斗が秀人達を振り切り、リリーに圧し掛かった。
「にゃ!」
リリーがまた叫ぶ。その時だった。愛斗が急に力を失い、リリーの上に倒れこんだ。
「効果切れだ」
何時の間にか起き上がったイヴォンが呟く。
「愛斗・・・さん?」
愛斗はリリーの膝の上で寝息を立てている。
「貴方達!また破廉恥な!」
亜麻音がそう叫び、紙コップの中の液体を不意に飲み干した。
「あっ!」
全員が叫ぶ。亜麻音の顔が赤くなる。そして・・・。
「かっこいい!」
亜麻音は顔色を変えて寝息を立てている愛斗に飛び掛った。そして頬を摺り寄せる。
「綺麗なお顔!」
その騒ぎに愛斗が目を覚ました。
「ん・・・・!?」
自分に亜麻音が抱きついているのを見た愛斗がいきなり叫んだ。
「止めろ!お前・・・」
亜麻音が愛斗を更に撫で回す。
「止めろ!お前がそんな痴女だとは!」
再び視線が二人に集まる。
「なあイヴォン。止めなくて良いのか?」
「何、直ぐに効果が切れるさ」
イヴォンの予告通り、亜麻音は十分程で元に戻った。
「ん・・・!?」
亜麻音は自分のした事、周りの視線に気付いた。
「愛斗君!貴方は何て破廉恥な事を!」
いや、明らかに抱きついていたのは亜麻音の方だったが。とにかく愛斗は気絶していた。渚も神妙な顔をしている。
「亜麻音、幾らなんでも今のは・・・」
全員が軽蔑の視線を向ける。もちろん愛斗にもだ。
愛斗がふらふらと立ち上がった。
「何だ・・・」
愛斗が見た光景は顔を赤くしているリリーの姿だ。
「そうよ!この飲み物を飲んだら変になって・・・」
亜麻音が思い出した事を叫んだ。愛斗も頷く。
「俺もだ」
秀人がばつの悪そうに呟いた。
「あの・・・それはイヴォンが実験で用意した液体で・・・」
秀人とアルヴィによる状況説明が始まった。
「という事はイヴォンが悪いんだな?」
「イヴォン君がいけないのね?」
秀人が頷く。愛斗と亜麻音が座っているイヴォンを見つめた。亜麻音が蝙蝠傘を取り出した。
「湿地の天気は変わりやすいのよね~。傘を持ってきて正解だったわ。いろんな意味で」
亜麻音が傘を殴りやすいように握った。愛斗も拳の関節を鳴らしながらイヴォンに詰め寄った。
「秀人!アルヴィ!助けてくれ!助け・・・!」
亜麻音が傘でイヴォンの頭を引っぱたいた。
「ぐわっ!」
続いて愛斗の蹴りが炸裂。
「ぎゃっ!」
イヴォンの悲鳴が平和な湿原を切り裂いた。
帰りのバス。
一名を除く全員が平和に過ごしていた。
「リリー、俺とした事が・・・すまなかったな・・・」
愛斗がリリーに必死に謝っている。
「いえ、大丈夫です」
どうやら二人の関係は崩れていないようだ。秀人はふと呟いた。
「あれ?イヴォンは?」
愛斗が床を蹴った。
「奴は特等席だ」
イヴォンはバスの下の荷物室で足と腕を縛られ、他の荷物と一緒に閉じ込められていた。
「愛斗!ごめん!もうしない!だから許してください!じゃないと吐きそう・・・」
イヴォンの地獄ツアーは始まったばかりだった。
秀「はい、司会の秀人です」
渚「同じく渚です」
ロ「どうした?テンション低いぞ?」
愛「当たり前だ!」
ロ「うわっ!変態!」
バキッ(ロランの何かが砕ける音)
愛「今回の件はどういう事だ?」
秀「だからイヴォンの惚れ薬的なヤツで・・・」
愛「イヴォンの事はどうでもいい。何故こうなってしまったんだ?」
渚「別にロラン君が変になってカミーユちゃんを襲う、でもよかったんじゃない?」
秀「でも愛斗とリリーの方がよかった、って事で」
愛「俺はリリーに何をしたんだ?」
リリー(以下、リ)「それは・・・」
愛「リリー!すまない!本当にすまない!」
渚「愛くん、もういいじゃない」
リ「そうですよ。別にいやじゃなかったですし・・・」
秀「えっ?」
渚「今の発言は私達の解釈から言うと・・・」
リ「い、言わないで下さい!」
愛「どうした?」
リ「何でも無いですよ。愛斗さん」
愛「そうか、なら本題に戻るぞ。俺はお前に何をしたんだ?」
リ「それはまず、飛び掛ってきて・・・」
渚「リリーちゃん、無理に言わなくても・・・」
愛「いや、リリー。全部言うんだ」
リ「それから・・・あの触ってきて・・・」
愛「何?」
リ「こんな事言えません!」
秀「あっ!」
愛「待ってくれ!リリー!」
渚「行っちゃったわね・・・」
ロ「秀人・・・鼻が・・・折れたかも・・・」
ドカッ!(ロランの何かが割れる音)
愛「秀人、俺はリリーの何をしたんだ?」
秀「いや・・・少し触ったて言うか・・・ね?」
渚「そうね。でも少しよね」
愛「何だ。何を俺が触ったんだ?」
秀「それはその・・・胸・・・っていうか・・・」
愛「何だと?」
渚「でも少しよ!」
愛「ぐわああああああああああ!」
秀「うあ!」
渚「きゃあ!」
ドタッ!(愛斗が地面に倒れる)
秀「気絶したね」
渚「したわね」
イ「いい気味だぜ!」
秀「イヴォン?生きていたの?」
イ「人を勝手に殺すな。で、リリーの様子はどうだった?」
渚「とっても恥ずかしそうだったわ」
イ「やっぱりな。あの薬は効果覿面だったな」
亜麻音(以下、亜)「その通りね」
秀「あっ、亜麻音さん」
亜「よくも恥をかかせたわね」
イ「待て!落ち着け!」
亜「蝙蝠傘って便利よね?」
バキッ(イヴォンの何かが砕け散った音)
イ「ぎゃあああああ!」
愛「ん?」
イヴォンに気付く
愛「イヴォン、貴様にはまだ恨みが残っている」
ドゴッ!(イヴォンの何かが折れた音)
イ「ひっ!」
愛&亜「まだまだ!」
イ「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
秀「何かやばそうな雰囲気なので今日はここまでにしようか?」
渚「そうね。じゃあ今日はここまで」
秀&渚「次回もお楽しみに!」
イヴォンの悲鳴がBGMです。
おしまい