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5話 先生、バナナはおやつに入りますか?

今回は遠足です。バスと言えばみんな歌ってますけど、最近はバスにカラオケの機械が付いているみたいです。便利ですね~。それではどうぞ~☆

「これから明後日の学年遠足の班決めをしたいと思います。決め方の説明をこれからオスカー先生にしてもらうので皆さん静かに」

 亜麻音が相変わらずの真面目な態度で全員に言った

「えー、別に特に決まりは無いが、基本的に男女混合だ。亜麻音さんの指示に従うように」

「はい、ありがとうございました。それでは公平にという事で機械的に決めたいと思います」

 亜麻音は名簿をペラペラと捲った。

「まず一斑は秀人君、クローディヌさん、リリーさん、ロラン君。二班はカミーユさん、アルマさん、セドリック君、イヴォン君。三班は私と香奈さん、ジェラルド君、シルヴェストル君です。四判、愛斗君、渚さん、カリーヌさん、アルヴィさん。五班はアルマさん・・・」

「ふざけるな!」

 愛斗の叫び声が教室に響いた。視線が愛斗に集まる。

「俺とリリーが別々だと?決めなおせ!」

 それに便乗したのか、ロランも立ち上がった。

「俺もカミーユと一緒がいいぞ!」

 ざわめく教室を尻目にして、秀人は教室の窓の外を眺めていた。亜麻音が二人を両手で抑止する。

「はい、この決定に変更はありません」

「俺とリリーは二人で一つだ。裂く事は出来ない」

 愛斗を無視して班決めは進んでいく。今回ばかりは親衛隊も動けないようだ。

「ではこの班で遠足に出発します。尚、おやつは三百円までです」

 愛斗が恨みを込めて呟く。

「ふざけるなリリーと引き裂かれておやつは三百円までだと俺は認めないぞ絶対に絶対に認めないぞ大体・・・」

 愛斗の呪文のような呟きを聞いてアルヴィが宥めた。

「愛斗さん、大丈夫ですよ。愛斗さんとリリーさんは離れていても心は一つですから」

 尚も不満そうな顔をしていた愛斗だったが、仕方なく我慢したようだ。


 その夜、愛斗は大きな居間のソファーに座り、ある作業をしていた。

 それを不思議そうに見つめるリリーが居た。

「愛斗さん、帰って来てからずっとその作業していますけど何しているんですか?」

 愛斗はリリーを笑顔で見つめ返した。

「完成するまで待っていてくれ」

 小一時間後、愛斗が腰を浮かせた。

「出来たぞ・・・」

 愛斗はリリーの後ろに立ち、リリーの首に暖かい布を巻きつけた。

「これは?」

「明後日の遠足に備えてのマフラーだ。暖かいだろう?」

 リリーはマフラーの感触を味わう様に顔を埋めた。

「ありがとうございます。大事にしますね」

 愛斗はリリーの笑顔を見て、満足そうに玄関へと向かった。

「どちらへ?」

「イヴォンとの約束があるんだ。十時までには帰って来るからな」

 愛斗はそれだけ言うと出かけた。

 リリーはマフラーを枕の様にして頭を乗せ、心地よさそうな寝息を立て始めた。


 そして遠足当日。

「はい、皆さん。一列にバスに乗ってください」

 亜麻音が厳しい声で全員に指示を出す。遠足は私服でオーケーなので全員が違う服を着ている。

 秀人は黒いシャツの上に赤いパーカーを着ていた。あまりファッションについては気にかけない秀人なりに着飾って来たつもりだ。

 愛斗は灰色のシャツに黒いワイシャツ、黒いズボンでチェーンがポケットから出ている中々イカした服装だ。

「イヴォンは?」

 秀人が愛斗に尋ねた。

「あいつなら車酔いに備えて酔い止めでも飲んでるだろう」

 愛斗があっさりと言うと、イヴォンが戻ってきた。

「俺・・・バス嫌いなんだよ・・・見ただけで吐き気がする・・・」

「諦めろ。ほんの二時間程度だ」

 愛斗がイヴォンの肩を叩く。愛斗はリリーを抱え、バスの一番後ろの席に座った。窓側に愛斗、その隣にリリー、その隣には秀人が座り、続いてアルヴィだ。イヴォンはもちろん一番前だ。

「みんな!バスと言えば?」

 渚がバスガイドからマイクを強奪し、元気よく喋っている。ロランが一緒になって叫んだ。

「カラオケしようぜ!」

「そう!みんなで歌いましょう~!」

 前方の席から歓声が上がる。

「カラオケか・・・どうしよう。ねえ愛斗?」

 秀人が愛斗を見ると、既にリリーと愛斗は二人きりの世界に入っていってしまっている。

 秀人の耳には嫌でも二人の会話が入ってくる。

「リリー、酔ったら直ぐに言ってくれ。後、お菓子も沢山持ってきたからな」

「愛斗さん、大丈夫ですよ。それよりカラオケに興味があります」

 愛斗が頷いて、渚を呼んだ。

「渚!マイクをくれ。リリーが歌いたいそうだ」

「分かったわ」

 渚が頷き、リリーにマイクを手渡した。リリーが座ったままで喋った。

「では張り切って歌いたいと思います。聞いてください、曲は「ハレ晴れユカイ」です」

 その声の可愛らしさに全員がどよめいた。

「ナゾナゾ~♪みたいに~♪地球~儀を~解き明かしたら~♪・・・」

 気付くと全員が手拍子を打っていた。愛斗も聞き惚れている。そしてサビで興奮は最高潮に達した。

「アル~晴レ~タ日~ノ事~♪魔法以上のユ~カイが♪・・・」

 そして興奮を保ったまま最後のフィナーレに突入する。

「走り~出すよ~♪後ろ~の人も~♪おいでよ、ドキ、ドキッするでしょう♪」

 拍手の嵐、イヴォンだけは座席に倒れて目隠しをして死んでいるが・・・。

 歌い終わったリリーを愛斗が強く抱き締めた。

「リリー、よく頑張ったな」

「はい」

 リリーも嬉しそうに笑う。

「次は俺だ!」

 ロランが勢いよく立ち上がった。

「頑張って」

 カミーユがロランをさり気無く励ました。

「行くぜ!曲はオレンジレンジでO2だ!」

 直ぐにセドリックが怒鳴った。

「止めろ!お前の歌唱力じゃ無理だ!」

 アルヴィも叫ぶ。

「そうです!ロランさんは何時もカラオケでその歌、歌って五十点以上出した事ないじゃないですか!」

「そうだ、止めておけ」

 愛斗も頷く。カミーユが耳栓をさり気無くしたのを秀人は見逃さなかった。

「うるせぇ!行くぜ!」

 そして地獄が始まった。



 




秀「えっーと、今回は酷いですね・・・」


渚「何が?」


秀「いや、ロランの歌声が」


渚「どんな声帯をしているのかが気になるわ」


秀「えっと、アルヴィからの情報によると酷いのはあの歌だけで、他の歌はそこそこだって・・・」


渚「じゃあ何であれを歌ったのかしら?」


秀「好きだから・・・かな?」


渚「好きこそ物の上手なれ、は嘘ね」


秀「上手い事言うね」


渚「それよりも今回はリリーちゃんの歌声が聞けたわね」


秀「上手かったね・・・」


愛「当たり前だ!」


秀&渚「うわっ!またいきなり!」


愛「リリーの歌声は本物だ・・・うん」


秀「何だかご機嫌だね」


愛「当然だ。リリーの歌声が聞けただけで、もう俺は満足だ」


渚「でも余韻が台無しね・・・」


愛「ロランはやはり空気を読めない奴だった・・・」


秀「あそこで絶叫だからね~」


渚「音程が取れていない、とかのレベルじゃ無かったわね」


愛「只の絶叫パレードだ。あいつの自己満足で終わったな」


秀「でもまだ遠足はこれからだよ」


渚「次回は微エロです!」


愛「そうなのか?」


秀&渚(意味ありげに笑う)


愛「おい、何だ。もしかしたら・・・」


秀「詳しくは次回をお楽しみに!」


渚「それではさよなら~☆」


おしまい

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