3話 真意は理解するのもされるのも大変
後書きにキャラ対談?を始めました。ずっとやりたかったんですよ。
「おい、ロラン。何考えてんだよ」
ロランはセドリックの声とイヴォンの視線で我に返った。
「何だ?」
「元気ないぜ、何かあったのか?」
イヴォンがそう言うと、突然後頭部に衝撃が走った。
「そうや!元気ないと損するで!」
「誰だよ!」
ロランが振り返ると、そこには一人の少女が笑みを浮かべて立っていた。
「君は・・・鳳凰院絢さんだっけ?」
「そうや、ウチは元気ない奴見とると、どつきたくなるんや」
「で、何かあったのか?ロラン」
ロランは映画のチケット二人分を取り出し、机に置いた。
「映画のチケット?それがどうした?」
「実はな、今日カミーユとデートなんだ」
イヴォンが思い切り舌打ちをした。
「デートかよ!はいはい、どうせ俺には縁の無い事ですよ」
「で、それがどうした?」
セドリックは悪態をつくイヴォンを無視して尋ねた。
「いや、最近さ、何か気まずくてさ・・・」
絢はロランの背中を思い切り叩いた。
「なんや?そんな事だったんか。なら話は簡単や。気持ちをぶつけたらええねん」
「そうだぜ。自分の思うようにやってみろよ」
ロランも頷いた。
「そうだな・・・でも他の奴の意見も聞きたいな」
丁度、そこに何時ものようにリリーを抱きかかえた愛斗が教室に入ってきた。一人の少女が愛斗に気づき、叫び声を上げた。
「愛斗さま!」
少女は愛斗に抱きついた。
「浅代!昨日は何故、来なかったんだ?」
「ちょっと急用が出来てしまったんです。愛斗さまと一緒に学校に通えるなんて夢見たいです」
そんな愛斗をロランが恨めしげに見つめた。
「愛斗は相変わらずモテるな」
イヴォンも同意を示す。
「あいつ、顔がいいからな」
「俺、愛斗にも聞いてくるわ。あいつも年下と親しいだろ?」
ロランは映画のチケットをポケットに詰め、愛斗に向かって歩き出した。
「よう、愛斗。お前に尋ねたい事があるんだけど」
リリーを椅子に座らせた愛斗が顔を上げた。
「何だ、言ってみろ?」
「いや、デートのコツを教えて欲しいんだ」
「簡単だ。相手を気遣えばいい。それで後は好きにしろ」
ロランは分かったようで分からない気分になった。愛斗はリリーと話し始めた。
ロランは小さな声で尋ねた。
「あの・・・キスまでどう持ち込めば・・・」
ロランはある光景を見て言葉を失った。愛斗がリリーの頬にキスをしたからだ。
「ちょ・・・ここ教室ですけど?」
愛斗はロランに向き直る。
「ロラン、別に場所は関係ない。大事なのはそこに愛情があるかだ」
ロランは頷いた。
「分かった。俺も頑張るぜ」
夕方。
ロランは映画館の前でカミーユを待っていた。
「ロラン」
名前を呼ばれ、そちらを向くとカミーユが丁度、ロランに向かって歩いてきた。
「よぉ、カミーユ。可愛い服だな」
カミーユの服は可愛らしいピンクで白いフリルのついたスカートに白いワイシャツを着ていた。
「ありがとう、ロラン」
ロランは心の中で微笑んだ。中々いい出だしじゃないか?
「じゃあ、チケットもあるし入ろうか」
「うん」
カミーユは割と無口な方だったが、逆にそこがロランの好みだった。五月蝿い女と違って傍にいるだけで癒されてしまう。
映画館の受付は少し冷房が効いている。まだ春先だが、やはり日中は汗をかく。チケットを受付の女性に見せ、シアターに入る。右手にはレギュラーサイズのポップコーンとエルサイズのコーラが握られている。カミーユは何も買わなかった。
「Hの三番か・・・あったあった、ここだよカミーユ」
二人は隣同士の席に座る。沈黙・・・気まずい雰囲気。その時、マナーモードの携帯電話が着信を告げた。愛斗からだ。
「ロランへ、映画館で隣同士で座ったら手を握れ」
ロランはほくそえむ。何とタイムリーなメールだろうか。
「映画、始まったな」
ロランは呟き、カミーユの右手に自分の左手を伸ばす。後七センチ・・・。
もう少しのところでカミーユはロランのポップコーンに右手を伸ばし、ロランの左手は虚空を掴んだだけだ。
「もう少し・・・」
ロランは小声で呟き、カミーユの右手に何度も挑んだが悉く失敗した。
二人の見ている映画は「真夜中の少女」というタイトルの取り留めの無いホラー映画だった。
暗闇の中、携帯電話が震える。
「ロランへ、お前の趣味から予想して、ホラー映画を見ているのだろう。カミーユが怖がる素振りを見せたり、お前の腕を掴んできたら、そっと肩を抱くんだ」
ロランは見ている映画の主人公に負けず劣らず、背中に肌寒さを覚えた。愛斗の頭脳は天才級だ。
ロランはじっとチャンスを待つ。しかし、カミーユはロランのポップコーンを上品に食べながら、無表情でスクリーンを眺めている。結局、チャンスはやってこなかった。
シアターを出た二人は映画館を後にした。辺りは暗くなっている。お約束のように携帯電話が震える。
「ロランへ、映画館を出たら次はレストランだ。食事で上手くムードを盛り上げろ。店の場所も指定する。東湾埠頭沿いの国道にあるレストランだ。しっかりやれ」
ロランは唸る。何故、映画の終わるタイミングまで予想出来るのだろう。
「愛斗さん?さっきから携帯電話ばかり弄ってますけど何してるんですか?」
リリーは机で日記をつけながら愛斗に尋ねた。
「ちょっとした人助けだ。心配しなくていい」
リリーは少し首を傾げたが、再び日記に視線を戻した。
愛斗は携帯をしまい、椅子に座りなおした。
ロランはタクシーでレストランにたどり着いた。もちろん料金はロランが払う。
「ここがレストラン?随分と洒落た所ね」
ロランは店を見て、頷いた。
「そうだ。さあ、中に入ろう」
ロランがカミーユを先導し、店の扉を開ける。直ぐに店員がやって来た。
「お名前をどうぞ」
「ロラン・ギヌメールです。こっちは連れのカミーユ・ドルゴポロフ」
店員は名簿を確認した。
「はい、ご予約してある席へどうぞ」
ロランは首を傾げた。予約をした覚えは無いが・・・。
「今は便利だな」
突然の愛斗の呟きにリリーが反応した。
「何がですか?」
「今は携帯一つで店の予約が取れる。いちいち電話をする必要は無い訳だ」
リリーも頷く。
「確かに通販とかは便利ですよね」
「あぁ、他にも携帯で支払いも出来るし、天気予報、ねずみがいる某有名遊園地のアトラクションの待ち時間も分かる。時代は進化したな」
そう言い、二人は笑いあった。
その頃ロランは東京湾と夜景が見える特等席で二人向かい合っていた。ウェイトレスが魚料理を二人の前に置いた。
「前菜のサーモンのマリネ白ねぎ和えです」
「上手そうだな。この店を選んだのは正解だったみたいだな」
実際にチョイスしたのは愛斗だが・・・。ロランは料理を口に運び、感想を漏らした。
「うん、口で蕩ける味わい。最高の一品だな」
カミーユも料理を口に運び、頷いた。
「ロランの感想のセンスは美味しくないけど、この料理は美味しい」
ロランは言葉を失い、黙り込む。カミーユのツッコミのセンスは一級のようだ。
その後も食事は進むが、ロランのムード作りは進まない。何か言えばカミーユの冷静なツッコミで上手くかわされる。
結局、何一つ作れないまま食事は終わってしまった。店を出た二人はその雰囲気のまま、桟橋を散歩し始めた。また携帯が震える。
「ロランへ、今ごろ海辺を散歩しているのだろう。後は一気に行け」
ロランは桟橋の中央付近で意を決した。
「あの、カミーユ?」
「ロラン」
声が重なる。
「何、カミーユ?」
カミーユはロランに一歩近づいた。
「もっとはっきりすれば?余計なムード作りなんて必要ないと思う」
「え?」
どうやらロランの地味な作戦は全てばれていた様だ。
「分かってたの?」
「当たり前。態度で分かる」
ロランは下を向き、項垂れた。
「俺、あまり空気読めないし・・・」
カミーユはロランの肩を優しく掴んだ。
「ロランはそのままが一番いい。素直に不器用でもいいから気持ちを素直に伝えてくれればいいから」
ロランの目が輝く。
「じゃあ・・・いいかな?」
ロランはカミーユの肩をしっかりと、でも優しく掴み、自分の唇をカミーユの唇に近づけた。
後、七センチの所でカミーユの人差し指がロランの額に触れた。そして、押し戻される。
「えっ?」
「今日はお預け」
カミーユはそう言い、ロランの頬にキスをした。
「じゃあ、また明日」
カミーユはそう言うと、走っていった。
「何だよ・・・」
その時ロランは悟った。
「そうか・・・愛斗はこの事を俺に伝えたくて・・・」
ロランは愛斗がこの事を予想してメールを送っていた、そう思った。
「愛斗・・・ありがとう・・・」
もちろんロランはその勘違いに気づく事は無かった。
識神秀人(以下、秀)「皆さん、こんにちわ!もしくはこんばんわ!司会の秀人です」
南風渚(以下、渚)「同じく南風渚です!」
秀「でも、何をやるの?」
渚「はい、いい質問だね。やる事はキャラインタビューです」
秀人、書類を読む。
秀「なるほど、よく分かった。それでは・・・」
秀&渚「本日のゲストはこの方です!」
イヴォン(以下、イ)「こんにちわ・・・これ何の番組?」
秀「インタビューコーナーです。じゃあイヴォン、そこに座って」
イ「これでいいのか?」
渚「はい、ではまずQ&Aコーナーです!最初の質問を秀人君どうぞ」
秀「うん、じゃあ愛斗との出会いは?」
イ「う~ん、まあ愛斗と会ったのは俺が中1の時だな。愛斗はクラスでもモテたから羨ましいな~、ってずっと思ってたな」
秀「なるほど、それからどうして今の関係に?」
イ「それは愛斗が俺に生活費を稼ぐ方法を何でもいいから教えろ、って言ってきたからさ」
渚「それで教えたの?」
イ「まあ・・・」
秀「どんな方法?」
イ「ま、基本的に博打だな。俺が愛斗に教えたら愛斗の奴、直ぐに覚えてマスターしやがったからな」
渚「それで?」
イ「そしたら今度はカジノに連れて行け、とか言い出したから親戚のカジノに連れて行ったさ」
秀「もしかして・・・」
イ「ああ、親戚の店で代打ちとかやらしてたら、あっという間に客から金を巻き上げるからさ・・・」
渚「どれくらい?」
イ「いい時は一日ウン十万円だな」
秀「そんなに!?」
イ「ああ、恐ろしい奴だぜ」
渚「そうなんだ・・・では次の質問です。彼女はいますか?」
イ「い、いる訳ねぇだろ!」
秀「ですよね~」
イ「テメェ、ナメてんのか!?ふざけんな!」
渚「(あれ?不思議とキャラが変わったような・・・)」
秀「お、落ち着いて!」
イ「俺の前で女の話をするんじゃねぇよ!許せねぇ!」
秀「う、うわぁ!」
渚「えっと、イヴォン君が錯乱し始めたので今日はここまで」
秀「渚!助けて!イヴォンが・・・ギャッ!」
イ「もう一発殴らせろ!」
渚「(今後は触れないようにしよ・・・)」
おしまい