2話 この二人をどうにかしないと・・・
今回はリリーと愛斗がとことんイチャつきます。ご了承ください。それではどうぞお楽しみ下さい。
「じゃあな、みんな」
愛斗は秀人たちに手を振った。自転車の後ろにはリリーがちょこんと座っている。
「あぁ、また明日」
イヴォンたちも手を振り返す。
「皆さん、また明日」
リリーもにこやかに手を振る。
ここから二人の時間が始まる。
「リリー、確かシャンプーを切らしていたな。スーパーに寄るがいいか?」
「はい、構いません」
愛斗は頷き、自転車を扱ぐスピードを速める。
「リリー、寒くないか?」
「もう春ですよ。平気ですから心配しないで下さい」
スーパーの前、駐輪場に自転車を止めると愛斗は自転車の後ろに座っているリリーを抱きかかえ、店に常備されている車椅子にそっと乗せた。
「じゃあ、行くぞ」
「はい」
スーパーに入ると、リリーはまず一言感想を漏らした。
「いい香り、コロッケですか?」
「そうだな。リリーはコロッケが食べたいのか?」
「そうですね。たまにはいいかもしれませんね」
愛斗は頷き、惣菜コーナーからなるべく揚げたてのパックを選び、籠に入れた。
次に向かったのはシャンプーが売っているコーナー。そこで愛斗はシャンプーを見比べる。
「どうだ、リリー。何時もと同じのでいいか?それとも新しい種類にするか?」
「そうですね~。何時ものでお願いします」
愛斗は何時ものシャンプーを籠に入れた。お会計を手早く済ませ、自転車に戻る。愛斗はリリーを車椅子から持ち上げて、自転車の後ろに乗せる。
「よし、リリー。背中にしっかり掴ってろ」
「はい」
自転車は家に向かい、速度を上げ始めた。
愛斗とリリーの家は大きなお屋敷である。広い庭園があり、畑もある。この広い家に二人しか住んでいないのが驚きだが。
愛斗はリリーを再び抱きかかえ、屋敷の玄関に向かう。鍵を開け、中に入ると直ぐ両手が塞がっている愛斗の代わりにリリーが電気をつける。
「ありがとう、リリー」
「何時もの事じゃありませんか」
この動作は毎日やる事だが、愛斗は毎回リリーに礼を言う。
愛斗はそのままリリーを洗面所に連れて行った。洗面所の椅子に座らせ、靴下とストッキングを脱がせた。
「愛斗さん、くすぐったいです」
「自分でやるか?」
愛斗は尋ねた。
「いえ、お願いします」
愛斗は脱いだ物を洗濯機に入れる前に洗面所の片隅の籠に置いた。次に脱ぎやすいように制服のボタンを外した。ここから先はリリーが自分で脱ぐ。
「リリー、俺はお前が風呂に入っている間に夕飯の支度をするが、何かあったら直ぐに呼んでくれ」
「分かっています。毎日言いますよね、その言葉」
愛斗はリリーの頭を撫で、キッチンへと向かった。
愛斗はリリーが風呂に入っている間にフライパンで冷蔵庫から取り出した牛肉を二枚焼き始めた。
「今日はステーキだ。リリーも喜ぶな」
愛斗はリリーの笑顔を見るのが何より楽しみだ。いい具合に焼けたステーキにワインを入れる。
愛斗が丁度、夕飯の支度を終えた頃、リリーの声が洗面所から聞こえた。
「愛斗さん、お願いします」
愛斗は直ぐに洗面所に向かう。リリーは先ほどと同じような姿勢で、胸にバスタオルを巻いて椅子に座っている。
リリーの服を他の棚から出し、リリーに手渡す。リリーが上を着る間に愛斗は靴下を履かせる。
「相変わらず細いな。リリーの足は」
「そうですか?ありがとうございます」
着替えが終わったリリーは愛斗の横で車椅子に座っている。
「今日は天気がいいし、テラスで夕食にしよう」
「いいですね」
愛斗は屋敷の二階のテラスにある白い円形のテーブルに純白のテーブルクロスをひいた。そこに料理を並べる。
準備が出来ると愛斗は下に降り、リリーを車椅子から抱きかかえてテラスの椅子に座らせる。そして愛斗も反対側の席に座る。
「じゃあ、リリー。夕食にしよう」
「はい、頂きます」
二人のディナーが始まった。リリーはナイフとフォークを器用に使い、ステーキを小さな口に運んでいく。愛斗はそんなリリーの顔をとても優しい笑顔で見守る。この瞬間が至福の瞬間なのだ。
そんな風に微笑む愛斗を見て、リリーは悪戯っぽく笑った。
「愛斗さん、目を瞑って口を開けてください」
愛斗は素直に目を閉じ、口を開いた。リリーはステーキをフォークで刺し、愛斗の口に運んだ。
「はい、愛斗さん、あ~ん」
愛斗はそれを口に含んでから目を開けた。
「美味しいな。ありがとう、リリー。俺からのお返しだ」
リリーは目を閉じ、口を開く。
「美味しいですね。愛斗さんの料理」
「当然だ。お前に食べさせる料理は美味しいのが最低条件だ」
夜風に吹かれながら二人のディナーは続く。ディナーが終われば次は愛斗が風呂に入る。愛斗は外での食事の
時にリリーに必ず一枚ストールを羽織らせる。湯冷めをしては大変だからだ。
愛斗が風呂から出ると、愛斗は直ぐに後片付けを始める。その間、リリーは常に愛斗の目の届くところにいる。
片付けが終われば寝る時間。愛斗はリリーを抱きかかえ、寝室に向かう。寝室の電気は点けずに枕の上の照明のみを点ける。愛斗はリリーをベッドに優しく乗せる。リリーはこの瞬間が一番嬉しい。軟らかい布団に横たえられ、愛斗の暖かい手が、胸が傍にある。
だから遂、甘えてしまう。
「あの・・・愛斗さん?その・・・お休みの・・・」
愛斗は全てを分かっているような顔でリリーの頬に優しくキスをする。リリーも愛斗の頬にキスをする。
その甘えタイムが終わると、愛斗はリリーの横に入り必ず、
「お休み、リリー。明日も元気で」
この言葉を言う。愛斗が照明を消すと真っ暗になるが、目が慣れると月光がベッド全体を照らしてくれる。
リリーはとても暖かく、そして柔らかい愛斗の体に自分の腕を絡ませ、静かに眠りに落ちた。
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