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1話 始業式の日は一番乗りしたい

それではお楽しみ下さい。ご意見、ご感想、ご要望ありましたらどうぞ。

 まだ数人しかいない教室のドアが勢いよく開かれる。入ってきた少年の名は識神秀人。今年、この朧月学園に入学した新入生だ。

「朝早く来ると気分がいいな~」

 秀人は自分の机に荷物を置くと、他のクラスメイトを待った。

 少し経って入ってきたのは黒髪の女子であった。

「おはよう。秀人くんだよね?」

 秀人は感激した。登校初日に女子、しかも可愛い子に声を掛けられるなんて中々いいスタートじゃないか?

「おはよう。君は?」

「私は南風渚!今日からよろしくねっ!」

「あぁ、よろしく」

 秀人は軽く返事を返すと、教室のドアに視線を移した。

 丁度、水色の髪をした少年が入ってきた。

「おはよう」

 秀人はその少年にも挨拶をした。

「よぉ、おはよう!」

 妙に親近感がある少年はの名札にはイヴォン・フックスとあった。

「イヴォン・・・でいいのかな?」

「あぁ、オーケーだ」

 イヴォンは秀人の前の席に座った。そして、トランプを出した。

「どうだ?えっと秀人?トランプでもしないか?」

「いいけど、いいのか?教室でトランプして・・・」

「大丈夫だって!お前も覚えたほうが儲かるぜ?」

 秀人は儲かる、が気になったが始める事にした。

 教室にはどんどん生徒が入ってきた。秀人が気になったのは最後に入ってきた二人である。気になる理由は一目瞭然だ。黒髪の青年が綺麗な亜麻色の髪をした少女を抱きかかえながら、そう、お姫様抱っこをしながら入ってきたのだ。

 教室の視線が二人に向かう。イヴォンが立ち上がった。

「よぉ、愛斗!今日も朝からラブラブ、新婚だな!」

 愛斗と呼ばれた青年はイヴォンを睨んだ。

「イヴォン、余計な事を言うな。誤解を招く」

 いや、何も言わなくても誤解するような絵面だが・・・。秀人はスルーした。秀人の得意な事、それは現実をスルーする事である。その特技を生かし、スルーして近づいた。

「おはよう。えっと、愛斗くん?」

 愛斗は頷いた。

「愛斗でいい。秀人だな?」

「うん。そうだけど・・・」

 やはり、抱きかかえられている女の子が気になる。年は秀人たちよりずっと年下に見えるが・・・。

 愛斗はその子を席に座らせた。

「リリー、どうだ?学校は?」

 リリーと呼ばれた少女が愛斗を見て言った。

「愛斗さんのお陰で学校に通えるなんて夢みたいです。ありがとうございます」

 リリーは鞄から可愛らしい筆箱を取り出し、机に置いた。その様子を見た愛斗はリリーの頭を撫でた。

「俺は今からジュースを買いに行くが、一人でも大丈夫か?」

 リリーの胸で金色のロケットが陽の光を浴びて、光った。

「愛斗さん、私は大丈夫ですから心配しないで下さい」

 愛斗は頷き、教室から出て行った。

 秀人はイヴォンに尋ねた。

「なぁ、知り合い?それにあの子何?」

「愛斗は俺の幼馴染みたいなもんさ。リリーは戦争で怪我したんだけど、愛斗のお陰で目は見えるようになったんだ。足はもう少しリハビリが必要で、まだ立てないんだ。だから、愛斗に運んでもらっているって訳」

 秀人は納得した。

「とても優しいんだね」

「まぁ、俺には只のロリコンにしか見えないけどな」

「全くだ」

 秀人が振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。

「よぉ、ロラン。セドリックも」

 二人は秀人を少し見て、リリーに視線を移した。

「しかも、一緒に住んでるとか・・・いいのか?」

「学校も認めてるからな・・・」

「羨ましいぜ」

 ロランはぼそりと呟いた。イヴォンが呆れた感じでロランを小突いた。

「よく言うぜ。お前も年下の可愛い彼女がいるだろ」

 ロランは顔を赤らめた。

「ロラン」

 ロランの後ろから可愛らしい声が聞こえた。

「おっ、噂をすれば何とやらだ」

 秀人はロランの後ろの少女を見た。リリー程ではないが、十分小さい子だ。ロランが振り向く。

「カミーユ、俺に・・・って!お前!そのスカート!」

 秀人は頭がクラクラした。カミーユの履いているスカートは短かった。いや、短いってレベルじゃない。歩けば、下着が見えそうな程に短い。

「これしか無かった」

「いやいや、これしか無いって・・・とにかく着替えろよ!」

 イヴォンが珍しそうに眺めた。

「いや、これはアリだぞ!」

 イヴォンはロランに殴られた。

「人の彼女を変な目で見るんじゃねぇよ!」

 秀人がイヴォンを起こそうとしたとき、教室の後ろから舌打ちが聞こえた。

「朝からイチャついてるんじゃねぇよ!」

 声の人物は茶髪の青年だ。名札にはジェラルド・カーペンダーと書いてある。

「どうでもいいですけど・・・その位置・・・」

 ジェラルドは教室のロッカーの上に胡座をかいて、携帯電話を弄っている。

「俺の勝手だ!気にすんな!」

 秀人は頷き、スルーした。その時だ、教室のドアが勢いよく開いた。黒髪のいかにも真面目そうな少女が入ってきた。

 そう、例えるならいかにも風紀委員って感じだ。少女の名札には木下きのした亜麻音あまねと書いてある。亜麻音は教室を見回し、始めにイヴォンに近づいた。

「貴方!教室でトランプは校則で禁止されています!没収です!」

「は?」

 イヴォンが惚けた声を出してる内にイヴォンはトランプを手から奪われた。

「ちょ、返せよ!」

「駄目です!」

 亜麻音は次にロランとセドリックを見た。

「貴方たち!シャツが出ています!直しなさい!」

 二人は勢いに押されて、服装を直し始めた。亜麻音の次のターゲットはジェラルドだ。亜麻音はジェラルドの足を掴み、ロッカーから引きずり降ろし、携帯電話を奪い取った。

「返せ!」

 しかし、ジェラルドの声を無視し、亜麻音は携帯電話をポケットにしまいこんだ。亜麻音はカミーユを睨む。

「貴方!そのスカートの短さは何ですか!破廉恥です!直してきなさい!」

 カミーユは何も言わずに教室を出て行った。亜麻音の攻撃は止まらない。次はリリーだ。リリーの前に亜麻音が立った。リリーが亜麻音を見上げる。

「貴方!学校にアクセサリー類は禁止です!没収します!」

 亜麻音はリリーの首から金のロケットを取ろうとした。リリーはその手を振り払う。

「止めて下さい!これは愛斗さんから貰った大切な物で・・・きゃっ!」

 渚が席から立ち上がり叫んだ。

「ちょっと、亜麻音!やり過ぎよ!」

「いいから渡しなさい!」

 亜麻音はリリーを地面に押し倒し、首からロケットを奪った。地面に倒れたリリーは起き上がれない。

「返して下さい!お願いします!」

 リリーは半泣きで叫んだ。秀人が止めに入ろうとしたが、イヴォンに止められた。

「ちょ、イヴォン!何すんだよ!止めないと!」

「いいから見てろ!」

 イヴォンの気迫に押されて、秀人は後ろに下がった。その時だった。亜麻音は突き飛ばされ、地面に転がった。手からロケットが離れる。そのロケットをリリーが素早く拾った。

「誰!?」

 そこに立っていたのは愛斗だった。

「お前、リリーに何をしていた?」

「違反物を没収しただけよ!貴方こそ何?人をいきなり突き飛ばして!」

 愛斗は手に持っていた缶ジュースを握りつぶした。

「リリーを泣かしただろ。お前だけは許さない!」

 愛斗はリリーを抱きかかえ、椅子に座らせた。そして、亜麻音に向き直る。二人の間で火花が散る。

 しかし、亜麻音は向きを変え、他の生徒の方に向かった。

「アルマさん!香奈さん!学校で香料は禁止です!」

「おい!俺の話はまだ終わってない!」

 亜麻音を追おうとした愛斗の手をリリーは掴んだ。

「愛斗さん、もういいですよ」

「しかし・・・」

「いいんです。彼女も悪気があった訳ではないんですから」

 愛斗は腑に落ちない顔だったが、仕方なくリリーの言ったとおり許す事にした。

「まぁ、リリーがいいならいいが・・・」

 丁度、ドアが開き担任が入ってきた。

「皆、席につけ!」

 全員が席につき、担任を見た。

「今日から君たちの担任になったオスカーだ。よろしく!」

 全員が挨拶をする。

 いよいよ新しい学校生活が始まる!

 

 

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