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名のない僕ら①

ホラー×ブロマンス作品です。

一応下書きでは完結しているので段々載せていく予定です。

最後には〇〇に入る文字が判明します。

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




怖いのは怪異や霊。

ずっとそう。

ずっと怯えてきた。


救いになると思った。

側にいてくれるって。取り返そうって。


だから手を組んだんだ。

君が霊だと知っても。


でも────

「やった〜!今年も同じクラスじゃ〜ん。」


「俺B組!お前はー?」


「クラス離れちゃった、寂しいね〜。」



新学年のクラス発表。

校舎の壁に張り出されたその大きな紙を見るため生徒達が群がっていた。

クラス分けというのは学生生活を送る上でも大事で、知人や友達がいるかのチェックが主に行われる。



(僕はあっち側には行けないな。だって、


______________友達がいないから…。)



少年は生徒達の声が飛び交う中静かにその場を去り、

自分のクラスへと重い足を運ばせる。


階段前まで歩き、ふと上を見上げる。

階段の踊り場。

その手すりに腰掛け、脚をぶらぶらと揺らす人影が見えた。


(ネクタイが緑ってことは、同じ2年かな。)


その生徒は踊り場から見える大きな窓を見つめていた。少年からは後ろ姿であるから顔は見えない。

ただ、窓から差し込む光で、カレの黒髪に潜む茶髪をてかてかと照らしていた。


少年は気にする素振りもなく階段を登り、カレを通り過ぎて登り続けた。


少年が上段を登っている時、

カレが少年へと顔を向けたことには気付かなかったらしい。


***



少年は教室のドアを開け、まだ人の少ないそこに脚を踏み入れた。

名前が順に机に貼られており、少年は真っ先に一番後ろの一番左へと脚を運ぶ。

そして他の机のように貼られているであろう自分の名前を確認しようと視線を移すと、


「オッキラッシッイヤッヌッネッエエ¿」


黒いネチネチと音を立てる生き物が名札を隠している。

少年はソレを一瞥してからそこの椅子に腰掛けた。

名札を見なくても己が一番最後だと分かっていたからだ。


少年が着席してから、ソレの元に同じような生き物が3体ほど集ってくる。


「ハァナンフザッシィ」

「ヒッィイイヤゴイサヒィンネッ」


教室のドアが開き、次々と生徒達が入ってきた。少年が顔を上げ、その様子を見る。

彼の視界には他にも黒い生き物やまた別の生物も目に入る。

少年は俯き、目を瞑り耳を塞ぐ。


全員揃ってからは教師と生徒の自己紹介をして

軽い校則やら2年生のことの説明が済まされ、

すぐに放課後となった。



少年はいつものようにカバンを持ってそそくさと教室を出て行く。

靴箱へと続く階段のある方へと足を向けた。

だが、少年は立ち止まる。

視界の端に見えた気がしたのだ。


少年は振り返る。

目の前には一筋の長い廊下。

その先の突き当たりには、


大きな窓と見覚えのある後ろ姿。


「さっきの…。」


だが、よくよく見てみると彼は窓枠に座って脚を外に出していた。


「えっ…。」

(いやっ、いやいやいやダメでしょ____!)



少年は足早にその一直線の廊下を歩いて行く。

通り過ぎる教室からは生徒達の話し声や笑い声が聞こえてくる。

廊下にも何名か出てきて、少年とは反対方向へと歩いて行く。アノ人がいる方には目を向けることもなく。


『なんで誰も気付かないんだ』


その思いを秘めながら歩の速度を上げる。


カレの元に足音を段々と響かせる。

しかしカレは気付くことなく外をじっと見つめていた。

まるで注意されることもないと思っているようで。


少年は窓枠に着いていた彼の右手の腕を掴んだ。


「なにっ___してるのっ」


カレとやっと目が合った。

澄んだ瞳。

茶黒い短髪。

整った顔立ち。


目が合ったカレは、

薄らと口を開け、眉を上げて目を見開く。

どこからどう見ても驚いた様子だ。


カレは動きも声を出すこともせず、されるがまま腕を掴まれていた。一方、掴んでいる少年としてはこの気まずい状況を一刻も脱したい。


「なっ、なに驚いてるの。注意されて当然でしょ。

危ないから早くおり」


「_____なぁ。」


カレが言葉を発する。

一丁前に注意などして、逆切れでもされるのかと体をビクッとさせたが…



「_____お前も大変だな。」



「………え?なにが……」


カレは窓枠から降りて、廊下へと足裏をつけた。

カレは己よりも背の低い少年の顔を覗き込むように顔をぐっと近づけた。

髪で隠れた少年の瞳、それをじっと見つめる。


「ふーん……。


分かった、



お前陰キャだろ!」





「_______は??」


カレは少年を指差して何とも失礼な発言をする。

少年は片頬を膨らませて勢いよく振り返り、カレと反対を向く。


(心配して損したっ…!)


少年は数歩歩いてから立ち止まる。

目の前に、歩いてきた廊下の先にまたいたのだ。

廊下を塞ぐほど大きな黒いナニカ。そこから無数の手が生えていた。他の生徒達は何も気づかずにそこを通る。

阻まれることなく。


立ち止まった少年の右耳元にカレが口を近付けた。


「あれ。見えるんだろ。」


「______ッ!」


少年が右耳を塞いで少年を向いた。


「なん……で。もしかして君も見えて」


「あぁ。見えてるさ。気持ち悪ぃよな。」


少年は己の肩に手を添える。

いかにも怖がった様子。

カレはそれを見る。


「______学校にいる間、俺が一緒にいてやろうか?」


「ぇ……?」


「どーせお前1人なんだろ。

だから"見える"俺が一緒にいてやろうかって。

まぁ、怖くも何にもねぇんなら別に」


「お願い!」


少年はカレの裾を掴む。

目をまっすぐに見つめた。


「お願い、一緒にいて。ずっとあいつらがいて怖いんだ。うんざりなんだ、もう……」


カレは少年の肩に添えた手の上に己の手を被せた。


「いいぜ。けど、俺の願いも聞いてくれたらな。」


「君の願い?」


少年は何かを含んだ笑みをみせた。


「俺に、あることで協力して欲しい。」


「____なに?」


「__________この学校の」


キーンコーンカーンコーン…


「あ、チャイム…。」


「たしか職員会議があるからすぐ帰れって先生言ってたよな。」


カレは少年の手を握り、廊下を走り出した。


「えっ?!」


先程まで賑わっていた教室の前は既に静まり返っていた。ただ2人の足音だけが響く。


走って行くと、先程見た廊下を塞ぐ黒いアレへと接近して行く。


「まって!だめだめだめだめ!だめ!!」


少年は目をぎゅっと瞑る。

しかしアレとの衝突はなかった。


「は?!」


少年は薄く目を開いてから首を回し後ろを見る。

いたはずのアレは姿を消していたのだ。


「どうゆうこと…」


カレは一気に階段を降りて行く。

引っ張られて少年も後を追うと、靴箱までやっと辿り着いた。

少年は息を切らしながら急いで靴を履き替え始めた。


「きみっ、あしっ、早いねっ…。」


少年は息を切らしながらそう言う。


「へへっ。」


カレは少年が履き替えるのをただ見守る。


「______話はまた明日だな。」


「えっと…君は2年何組?」


カレは天を見つめ、考える素振りを見せてから、


「うーーーん。2年……B組だっけな。」


「B組、、隣だ。」


(けどこんなに顔整ってたら人気になるだろうし…

流石に僕でも知ってるはずじゃ…。)


少年は履き終えた靴を拾い頭を上げようとした時、

頭を上げたすぐ側にカレがまた顔を近づけてきた。


「_____ッ!」


「きみきみきみきみ…俺の名前をきみじゃねぇっつーの。名前を聞けよ!」


「なっ、名前は…?」


カレは己の胸へと手を置いて


「俺は宵。宵月のな。」


少年は上履きを靴箱に置いて、履き替えた靴のつま先を床へと打ち付ける。


「宵も靴早く履き替えないと…」


「いーや。必要ねぇよ。」


「え?」


キーンコーンカーンコーン…


「あっ!えっ、じゃ、じゃぁね!宵、また明日!」


少年は校門へと駆け出した。

カレは手を振って靴箱からそれを見守る。


「そーいやあいつの名前聞くの忘れてたな…。」


カレは「ふっ」と笑みを溢す。


「気付いてねぇよな。

アイツらのことも。俺のことも。」


少年の姿のない校門をじっと見つめる。

後ろの廊下には、

少年が気にしてならないソレが蔓延っていた。


「色々とめんどくさくなっけど、」


宵は自分の口元を手で覆い隠し、綻んだ笑みを覆い隠した。


「いい駒が手に入ったと思えば……」



***




少年は校門へと駆けて行く。


(何でまだ帰らないんだろ。

先生に怒られちゃうのに。

先生に…

怒られ…)


「あっ!」


校門を通り過ぎても尚、少年は走り続ける。


(そうだ!今日昼までに帰るってじぃちゃんに言ってたんだ!早く帰らないと怒られる…!)



少年は家まで駆けていく。

距離はそれ程遠くもないから徒歩での通学。

走ればもっと早くなり、家はもうすぐそこだった。

そして目的地、大きな古い建物。

少年は家の門を潜り抜け、目の前にある家、

ではなく左手にある小屋へと駆け、勢いよく横に扉を開けた。


「ごめんじぃちゃん!」


扉を開けると、目の前には少年の祖父が正座して仏像へと向いている。仏像の周りには沢山の食物が並んでいる。


「遅い!何時だと思っとる!」


祖父が振り返り、少年の頬を強く何度もつつく。


「お前が今日は早く帰ると言っていたから準備をしておったのじゃ。待たせおって。」


「ごめんなさいぃぃ。」


祖父は扉へと向かって行く。


「ふんっ。」


少年はつつかれた頬を撫でながら祖父の座っていた所へと歩いて行き、同じように正座する。


(そう言えば…

宵と七不思議が何で関係してるんだろう…。)


少年は下にしていた顔を上に向けて、仏像を見る。

だが脳内にはカレの姿が焼き付いていた。


少年をその室に残し、祖父が扉を閉めた。





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