未知からの目線
88年前、地球に新たな概念が具現化した。
それは人間が想像してきた摩訶不思議な現象をそのまま現実にしたようなものだった。
ファンタジー小説を読む時、人間は冒険心で胸を膨らませ、持ちうる想像力をめいっぱいに働かせる。
夢と希望で人間を満たすはずのファンタジーだが現実になるとそれは恐怖と混乱の原因にしかならなかった。
それもそうだろう。突然すぐ隣に座っている人が火を吹いたら人間は自分も燃えてしまうという恐怖に支配される。
動物が喋り出したら自分の精神状態を疑うし、本来地に縫い付けられているはずの足が宙を蹴り出したら正気でいられない。
世界は見事に恐怖に飲み込まれた。
新たに生まれた概念を御すことのできなかった人類は数を減らしていった。
地面は隆起し海は大地を削った。
土地の形は大きく変わり、大きな一つの陸地になった。
それに伴い、国という概念は機能しなくなっていった。
未知の概念に適応するのには時間がかる。
一部の人間は新しい概念に適応すべく研究班を立ち上げた。
それが現在の魔術研究機関であるMCRIの前身のMCCMの成り立ちだ。
それから人は地道な努力の末、新たな概念を制する術を見つけ、概念に名付けた。
”魔術”と。