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春
”魔術”
これはここ数十年の間で世界の基準となった概念である。
88年前、地球全体に一筋の光も差さなくなった瞬間があった。
それ以降、数多の超常現象が起きるようになった。
人々は道具を介さずとも火を起こせるようになり、鯨は空を泳ぐ。トガゲは空想上の生き物であるドラゴンのように空を飛ぶようになった。
それ以前であれば人々が皆、口を揃えて「ありえない!」というようなことが次々と、世界のそこらじゅうで起きるようになったのだ。
好奇心旺盛な人間たちはこの現象の原因を究明しようと、研究機関を作った。
それから数十年経つ。
まだ人々が究明できた事象は極々わずかであるが、徐々に世界に新しい概念が浸透しつつある。
数十年消えることなく、人類の興味の対象になったこの概念は
”魔術”と呼ばれるようになり、ある程度一般の間でも親しまれるようになった。
そして、2113年、研究メンバーに期待のルーキーが加わることになる。
これを機に世界の魔術に関する研究は一気に躍進することになり、世界は進化する。
この進化は人類に大きな変化をもたらすことになる。