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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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タッパーでカレーを作る時

 自炊というとハードル高そうだが、レンジがあればなんとなかなる。須田圭花はしみじみ思う。


 今日も仕事から帰ってきたら、レンジで夕飯を作る予定だ。しかもカレーだ。肉と野菜はあらかじめ切って冷凍しているので意外と簡単だ。


「さて、手を洗ったし、準備するか」


 まずはタッパーを取り出し、そこにオリーブオイルをたらす。この一手間が重要だ。タッパーのカレーの色移りを防ぐためだった。あとは野菜、肉、カレールウ、水を入れてレンチンするだけ。多少、加熱ムラはあるのでレシピよりは少し長くレンチン。


 チンと軽やかな音が響く。カレーの匂いもふわりと漂っていた。冷凍していたご飯を温め、最速でカレーが完成だ。


「うん、美味しいじゃん。全然、レンジでつくったように見えないな」


 カレーをさっそく食べ始めた。タッパーからそのまま食べているの、ちょっと背徳感。いや、キャンプ気分とでも言っておこう。一人暮らしじゃなかったら決してできない芸当だ。


「うん、いいじゃん。へー、レンジでサラダチキンとか麻婆豆腐もできるのか」


 この際、行儀の悪さをきわめてもいいか。レンジ用のレシピブックを眺めながら、カレーを食べる。やはり便利だ。レンジは圭花のような働くアラサー女の味方かもしれない。


「お、もう食べちゃった……」


 気づきと綺麗に完食。タッパーを見たところ、色移りはしていないようだ。


「オリーブオイル垂らしておいてよかった。洗い物楽だぁ」


 洗い物をしながら鼻歌が出て来るぐらいだ。そういえば前、同じようにタッパーでカレーを作ったが、色移りして洗うのが大変だった。いくら洗剤でこすっても消えず、砂糖と氷を入れると綺麗になるというネットの情報を参考にようやく落とせた記憶が蘇る。


 あらかじめオリーブオイルをタッパーにたらしておく。その一つの手間が結果に差が生むらしい。


「そういえば……」


 圭花は新卒で入った会社でパワハラに遭い、円形脱毛症と適応障害になったことがある。あの時はとにかく仕事を休めない、転職するとかブランクを作るという発想すら怖くてできなかった。結果、無理がたたり、鬱病にもなり、かえって人生の遠回りをしてしまった。


 今は仕事もほどほど、休む時は休み、止まる時は止まるように心がけている。無理矢理、直進することが正解でもなさそう。


「あれ? なんでこんなこと思い返していたんだ?」


 気づくと、流しの洗い物全部綺麗になっていた。箸も皿もコーヒーカップもタッパーもピカピカだ。


 それを見ていたら、圭花の気分もすっきりとし、小さく頷いていた。

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