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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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カップ焼きそばを食べる時

 買ってしまった。自分でもわからない。それでも目の前にカップ焼きそばが一つ。


「なんで? 私、どうかしてた!? よりによってなんでカップ焼きそば買ってしまったの!?」


 井関深月の声が響く。残念ながら、一人暮らしのアパートでは誰からも返事はないが。


 そんな深月、SNSでは陰謀論界隈にどっぷり浸かっていた。ワクチンや宇宙人、悪の組織はもちろんのこと、自然派食品にもズブズブと浸かり、肉、砂糖、小麦粉、油を抜いた生活を送っていた。実際、キッチンには米粉やにがり、天然塩が積まれている。電磁波カットのグッズもある。


「なんで? カップ焼きそばなんて身体に悪いもんいっぱい入ってるし! 私は自然派食品食べたいのに!」


 そんな嘆きとは裏腹に、今日、スーパーでカップ焼きを買ってしまった。


 SNSではインスタント食品、コンビニ食品、ファストフードは悪の三位一体としてボコボコに叩いていたのに、どうして買ってしまったのだろう。もう深月はため息しか出ない。


 しかし、こういう食事、禁止されればされるほど食べたくなるもの。深月は副業で家庭教師の仕事をしていたが、親が厳しい子ほど隠れて何かするのに興奮するらしい。アラサーの深月にラブレターまで送ってくる高校生もいて、正直引いていたが、今はその気持ちだけはなんとなくわかる。


「そうか。なんか義務感で自然派食品にこだわっていたのが良くなかったか……?」


 実際、代替肉とか美味しくないし。砂糖も油も添加物も、ちょっと食べたぐらいでは死なないか?


 おそるおそるカップ焼きそばのパッケージを開ける。もう何か油っこい匂いがする。かやくのカサカサした音だけでも、唾を飲み込んでしまった。


「そういえばかやくって麺の下に入れると、蓋にくっつかないで良いんだよな。母ちゃんがよくやってたわ」


 そういえば母は、インスタンも食べていた。タバコも吸っていたし、コンビニのケーキやチキンもよく食べていたが、これといって不健康でもない。祖母も似たような食生活だったが、長生きしている。


「そうか。我慢や義務感がストレスになって身体によくないのかなぁ」


 お湯をカップ焼きそばに注ぎ、三分待って捨てた。そして付属のソースを絡め、最後に青のりを散らす。ソースの油っこい匂い、なんとも言えない背徳感。SNSではあれだけ偉そうにしていた過去が背徳感を増してしまう。


 割り箸を折り、出来立てのカップ焼きそばを一口食べた。ベトベトなソースの味しかしないのに、なぜか満足感が爆増。米粉麺では決して味わえないモチモチ麺、最高。クズみたいな野菜も免罪符みたいでいいじゃない。


 気づくとあっという間に完食。口の周りがソースでテカテカだが、悪くない。


「あれ? 私、なんであんなに自然派食品って言ってたんだろう? 何かに洗脳されてた?」


 目が覚めるような気分だった。

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