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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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レモンの皮が残った時

 自分って何しているんだと思う。


「あ、家事代行サービス業者っていっぱいあるな。よくわかんないけど、ここで申し込むか」


 小原和歌は家事代行サービスを申し込んでいた。WEBデザインの仕事をしていたが、連日残業。家事も全然できず、一人暮らしのマンション、かなり汚い。食事も連日カップラーメンと野菜ジュース。これでは不味いと思い、家事代行を申し込んだ経緯。


「でも結構値段は高いのな。稼いだお金、家事代行に消えるってさぁ」


 そう思うと、やはり何やってるんだと思ってしまう。アラサーの女としては年収もよく、実際、ちょっと自慢もできるが、家事代行に頼ってる現状って……。


 そんなことを思いつつ、家事代行が来る日にになった。


「本日はよろしくお願いします。担当の栗原菜緒と言います」


 家事代行の栗原菜緒、三十代ぐらいの女性。雰囲気的に主婦だろう。同年代だが、身近な友だちは全員ワーカーホリックだったし、こういうタイプは未知だ。


 とはいえ、奈緒はテキパキと動き、あっという間に部屋を片付け、料理も取り掛かった。


 作り置き料理を十品も作ってくれた。手際がよく、手品みたい。こんな一人ぐらし用の狭いキッチンなのに。主婦っぽい雰囲気の人だったが、仕事は有能そう。


「では、またよろしくお願いします!」


 最後まで笑顔で帰って行った。


 さっそく和歌は出来上がった料理を食べてみた。雑穀米ご飯は胃に優しい。野菜のスープは温かく、身体全体がほかほかしてきた。鮭のホイル焼きも家庭的でいい。こういう料理、久々だ。実家にいた頃を思い出しそうになったところ、テーブルの端に何かあった。


「何これ? レモンの皮?」


 小皿にレモンの皮がある。子細く切り刻み、白い部分もない。爽やかな匂いが心地いいが、これはなんなのだろうか。


 確かこの鮭のホイル焼きにもレモンも輪切りが。よく見ると皮も剥いである。


「何これ? レモンの皮?」


 菜緒が作った他の料理も確認したが、サラダにもレモン水が使われているようだが。


「わからない……」


 レモンの皮の匂いを嗅ぎながら生ゴミの匂いも確認したが、料理の後なのに、ゴミの量がそう多くない。ブロッコリーの芯も料理に使っているようだ。にんじんも皮ごと使っているのがわかるが、このレモンの皮は謎だ。


 ネットで調べるとレモンの皮を干し、料理に使えるらしいが、用途はわからない。干しているとカリカリになり、色も変わってきたが。


「匂いもちょっと落ち着いてきたけど、また菜緒さんに頼んだらわかるかな?」


 ということで二回目の火事代行サービスだ。また部屋も散らかってきたし、ちょうどよかった。


「今日もよろしくお願いします!」


 菜緒は前回来た時と同じかそれ以上に元気だった。テキパキと部屋を片付け、洗濯ものを干し、作り置き料理も十品作っていた。


 料理している時は話しかけにくいが、ちょうど菜緒がレンジのスイッチを入れたタイミング、例のレモンの皮を見せた。


「あぁ、レモンの皮ね! 色々料理に使えるけど、ハーブティーに混ぜて入れるのおすすめ!」


 そういえばお茶にレモンの皮が入っているのカフェで見たことあった。その時はオシャレだなぁと思っていたが、まさか家でも再現できるとは。


「ハーブティー、うち持っていないんですが」

「そうだとうと思って持ってきました!」


 菜緒は持参した大きなカバンからハーブティーを取り出し、本当に作って帰っていった。もちろん、あのレモンの皮も入ってる。


「あ、良い匂い」


 レモンの皮のおかげでハーブティーの草っぽさが中和されて飲みやすい。不思議なものだ。普通は捨てられているものが、こんな風に活用されているとは。


 ゆっくり、ゆっくりとハーブティーを啜る。


「はぁ……」


 ほっと息が溢れる。こんな落ち着いた時間、久しぶりだった。


 仕事を頑張り過ぎていたみたいだ。スッキリと綺麗になった部屋を眺めながら、肩の力が抜けてくる。


「まあ、適度に手抜きしたり、こんな風に代行に頼ってもいいのかな……」


 ハーブティーを飲み干し、独り言が溢れる。それにレモンの皮の活躍方法なんて家事代行を頼まなければ一生知らなかったことだ。


「うん、また菜緒さんに頼んでみるのもアリだな」


 稼いだお金が家事代行に消えるなんて本末転倒だとも思っていたが、それはそれで悪くないと思う。




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