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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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ピーマンを食べる時

 給食の時間、冷や汗が流れてきた。


「え、今日のおかずはピーマンの肉詰めなんだ……」


 橋川万知、十歳。食べ物の好き嫌いが多かった。食べるのも遅い。胃も強くない。給食も半分以上残し、先生から怒られる日が多い。


 それに今日はピーマンの肉詰め。万知はピーマンが大嫌いだった。他にもコーヒー、トマト、メロン、マンゴー、生ハム、牡蠣、いくら、にんじんも好きじゃないないが、ピーマンがダントツで苦手だった。


「もう、本当にいやだから」


 涙目で給食を食べ始めたが、全く美味しくない。しかも今日の飲み物はコーヒー牛乳だし、スープにはにんじんも入ってる。


 他のクラスメイトは楽しそうに食べていたが、全く理解できなかった。


 案の定、先生にも怒られ、クラスメイトに笑われた。家に帰って愚痴をこぼしても、母も笑っているだけ。


「大人になれば自然と好き嫌いなくなるから。ピーマンだって冷凍すると、苦味が取れるのよ」


 そんなこと母に言われたが、全く納得できない。


 そして十年後。


 万知は大学生になり、一人暮らしをしていた。大学に近いアパートでの一人暮らしだったが、自炊もしていた。


 今日はにんじんとキャベツのスープを作っている。


「あれ? そういえばにんじんって子供の頃、嫌いだったのに、なぜか今は普通に食べられてるな……?」


 スープを作りながら首を傾げる。ピーマン以外、嫌いな食べ物は全部克服していた。しかも自然に。意識していないうちに。


「もはやピーマンも克服できるか……?」


 にんじんを切り刻みながら、そんな発想にもなってきた。


「確か、ピーマンって冷凍保存すると苦味がマイルドになるってお母さんが言ってたし……」


 さっそく試してみることにした。あの独特な青臭さや苦味が嫌いだったけれど、今は食べられるだろうか?


 冷凍保存したピーマンを解凍し、切っていく。解凍も簡単。水にちょっと浸けたら、簡単に切れた。


 そして肉詰めにし、焼いて完成。トロッとし、いい匂いもする。焼け目の色合いも悪くないが、果たしてどうだろう……?


「い、いただきます……」


 あえてケチャップもつけずに箸をつけた。目をつむり、一口目。


「あれ? 思ったより苦くない。むしろトロッと柔らかい……」


 拍子抜けするぐらいだ。苦くも青臭くもなかった。むしろ肉汁がついて美味しい。やわらかだ。


 もくもくと食べていく。


 どうやら苦手は克服できたらしい。子供の頃、あんなに苦手だったもの、単なる幻想だったのかもしれない。


「ごちそうさま!」


 笑顔で完食していた。

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