蜜柑をおいしく食べたい時
女子会って楽しい。今日も新年会と理由をつけ、女子会に参加中。チーズフォンデュをしながら、ワインやビールを呑む。
「本当、前に婚活であった男、サイゼリヤに連れて行ったんだから」
「マジ?」
「サイテー! だから男って気がきかないよね」
ずっと女同士で愚痴も楽しみ、春川仁香は楽しくて仕方ない。このメンバー、みんな非正規の実家ぐらしの三十代だし、気が合うっていうのもある。ここではマウントも比較もないし、すっかり安心し切っていた。正直、このまま女子同士で歳とってもいいぐらい。女子会メンバーでシェアハウスしようという話も出ていた。
最後にはホールケーキも分け合って食べ、ふわふわの生クリームとスポンジで口の中は甘みでいっぱい。苺の酸っぱさも全く気にならないぐらいだった。
そんないい気分のまま帰宅した。両親もとっくに寝ていたが、妹は起きていた。茶の間で社労士資格の勉強をしているらしい。
「げ、お姉ちゃん。酒臭い」
「いいじゃん。女子会楽しかったぁ」
「何がそんな女同士で楽しいの? っていうかお腹すいた。廊下から蜜柑もってきてよ」
「えー、めんど」
とはいいつつ、勉強中の妹を励まそうとも思い、廊下の蜜柑箱をチェックしたが。
「あれ? 蜜柑、腐ってる」
一個かなりカビが生えていたが、そこからじわじわとと広がっていた。腐った蜜柑。何か良くない人間関係の比喩によく使われていたと思い出す。
急いで腐った蜜柑を捨てるが、妹は他の蜜柑も食べない。一個腐ってたら、もう全部腐ってる可能性大だという。腐った部分を取り除いたとしても、目に見えないカビがついているらしい。
「そっか……」
腐った蜜柑をゴミ箱に捨てながら考える。今日の女子会、楽しかったけれど、何が残ったのだろうか。愚痴ばかりだった。男性の悪口を言って終わっただけだ。自分のことをすっかり棚にあげて。
妹は勉強してる。妹だけでなく、努力している人は多いだろう。努力したからといって成果が出るとも言いきれないが、このまま、女子会に居るの、よくない気がしてきた。
思い切って、もう女子会メンバーと連絡をたってみた。
蜜柑も新しく買い直してみた。ネットで箱買いし、届いたら、まずは傷んでいないか調べた。
柑橘のいい匂いがする。とくに問題はなさそう。
そして蜜柑の間隔をあけ、丸めた新聞紙を間に詰めていく。母によると、冷蔵庫で蜜柑を保存すると不味くなるという。カビ防止のこの方法も教えてくれた。
「けっこう蜜柑ってデリケートな果物だったんだな……」
こたつで一人、蜜柑を食べる。今のところカビは生えていないが、一個腐ると全部腐ってしまうのは、あまり喜べない。
「実家、出てもいいかも……。資格の勉強も何かやってみようかな……」
それに一人で蜜柑を食べていても、全く美味しくなかった。綺麗に保存していた蜜柑なのに。
その後、仁香は女子会も実家暮らしも辞めた。寮付きの会社に転職し、お金をコツコツ貯めながら夜は資格の勉強もしてる生活へ。
もう愚痴を吐けない。婚活の散々な結果も、自分で受け止めるしかないらしい。相手の条件だけこだわっていたのも、自分のことを棚に上げすぎていたと気づく。
それでも、後悔はなかった。今はお正月、楽しく蜜柑を一緒に食べられる結婚相手を探している。将来のことだけを考えていたら、愚痴も全く出てこない。




