お餅が余った時
お餅は不思議な食べ物だ。焼くともちっと柔らかく、煮るとトロトロ。そして揚げるとカリカリだ。
「わぁ。すごい、これっておかき?」
松戸絹羽は正月の余った餅を揚げていた。適当に小さく切り、数日乾燥させ、油で揚げるだけ。砂糖で甘くしてもいいし、醤油でおかき風にしてもいい。
絹羽の実家ではいつも余った餅は揚げていた。ジュワジュワした揚げ物の音、実家から出て数年たつ絹羽の耳に残っていた。
そして、こたつに入り、揚げた餅を食べる。今日は醤油をかけておかき風にしてみたが、揚げたては別格。店で買うおかきと全然違う。
ついつい手が伸びてしまう。
「しかし、お餅って不思議な食べ物……」
どんな風に調理しても、どんな味付けでもおいしい。チーズやチョコレートのような洋ものとも相性がいい。常に合格点とっているような食べ物。
そんな事を考えていると、絹羽はとてもお餅みたいになれないと実感。正直、苦手な上司や客もいるし、常にニコニコ笑顔で合格点は難しい。尖っていたり、ダメな部分も自覚している。
ちょっとお餅に嫉妬しそうにもなったが、食べ方を間違えると凶器にもなるのも思い出す。喉につまる危険性はもちろん、水分と栄養素が多いため、カビが発生しやすい。お餅は余らせずにさっさと食べてしまった方がいいのだ。
どんな食べ物も、赤点にするのも、合格点にするのも、自分次第かもしれない。
「あれ? もう無くなった」
気づくと、皿の中は空っぽだった。これで余ったお餅は全部無くなった。同時に正月も終わった寂しさも感じるが、あと二か月もしたら春がくる。桜も咲く。気温も温かくなるだろう。そう思うと、寂しさは一瞬で消えてしまった。




