伊達巻が余った時
正月は毎年、実家へ。ダラダラしてる。こたつで駅伝を見て、みかんをなんとなく食べてる。
小宮灯音、三十歳。そろそろ実家の正月も居心地悪くなるそうな予感だけはする。明日は既婚の兄も子供と奥さんを連れて帰ってくるし、父はなぜかマッチングアプリの話題も持ちかける。
「はーあ」
といっても、結婚の予定もない。仕事も一応新しい資格をとるため勉強中だったが、去年落ちた。他、英語、副業のライター、ハンドメイドなど色々と挫折中。今年の目標を立てる気力もないぐらい。
気づくともう昼過ぎだ。お腹が減った。どうせ雑煮かお節料理の残り物しかないだろうと思いつつ、食卓に向かう。
「あれ? 玉子サンド?」
食卓には意外なメニューがあった。確かに雑煮やおせちの残りの黒豆や数の子もあったが、玉子サンドがあるじゃないか。正月の料理が続いていた中、玉子サンドが妙に眩しい。玉子の黄色さ、少し明るく見えるぐらい。
「この玉子サンド、余った伊達巻で作ったの。簡単よ。伊達巻潰して明太子マヨと適当に混ぜただけ」
いつのまにか側に来た母が言う。
「伊達巻の余りには見えないね?」
「でしょう?」
胸を張っている母。その姿、ちょっと偉そうで笑ってしまうぐらい。
元伊達巻、玉子サンドに転生か。確かに少し甘めだが、そこが良い。こんな転生だったら、異世界に行かなくても可能かもしれない。
「お母さん、おいしいじゃん。これは前世が伊達巻だったようには見えない」
「ふふふ、そんなもんよ。生まれ変わったら、過去のことなんてどうでもいいもんよ」
母の明るい声を聞きながら、はっと顔を上げた。確かに去年は失敗だらけ。資格も落ちたし、他も上手く行かなかったが、今年もそうだと決めつける必要、全然ない。
「そうだね。今年もとりあえず、頑張ってみるか」
玉子サンドを頬張りながら、頷いていた。




