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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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23/28

お餅を焼く時

 お正月が嫌い。これって少数派だろうか?


「はぁ……」


 内井小雪はため息をこぼしながらキッチンに立っていた。


 今日は元旦。餅を焼いていたが、アルミホイルにくっつき、べちゃっとしていた。


 案の定、夫や息子たちから不満。


「お母さん、老けた?」


 高校生の長男には関係ないことも笑われ、全く楽しくない。近所の義実家に行ったり、初詣したり、初売りも行ってみたが、忙しいだけで一切楽しくない。


 お餅も飽きた。


 正月は終わったが、余ったお餅を見るだけでため息しか出ない。


 思えば料理、そんなに好きじゃない。でも「女だから」という理由でやっていた。ほぼ義務。正月も義務をこなしていたと思うと、どっと疲れてきた。


 たまには自分のためだけに料理したい。美味しいもの食べたい。義務感から離れたい。


 そう思った小雪、お餅の美味しい焼き方を調べてみた。焼く前に醤油を垂らしておくと、ベチョベチョにならないらしい。


「そんな簡単でいいの?」


 拍子抜けするぐらいだが、その通りにやったら、綺麗に焼けた。


 表面はカリっとし、中はもちもち。匂いもいい。特に焼けた醤油の匂いが。


「あれ、お餅ってこんなに美味しかった?」


 自分の為だけに焼いたお餅、いつもよりずっと美味しい。


 相変わらず夫や息子たちにも料理の文句を言われてる。


「なんか、味が濃いな」


 今日は夫に味噌汁の味にケチつけられたが、怒る気にもなれない。


「だったら自分で作って食べてください」


 そっけなく言うだけ。しかも一切、表情も変えずに言ったおかげか、夫も息子も黙ってしまった。明日のの夕飯は、ファミレスかどっかで食べてくるという。


 その方がいいかもしれない。義務感で料理していても、伝わってしまうもの、大いにありそうだかから。


 そして、次の日も自分の為だけにお餅を焼いてみた。醤油を垂らして、綺麗に焼く。義務じゃない。自分の為だけに作る。そんな時間が、たぶん一番必要だ。

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