年越し蕎麦を食べる時
もう一年たってしまった。
尾山ジュンコはキッチンに立ち年越し蕎麦を茹でていた。
水から麺を入れるのがコツだ。それに米油も大さじ一入れると美味しく茹でられるという。ネットでコツを探した通りにやってみることに。
「油入れてもいいの?」
味が変わったりしないか不安はあるものの、最後は水でしめるんだ。そこまで影響ないかもしれない。
そして手順通りに茹で上がり、つゆと器も準備し、最後に天ぷらを載せて出来上がりだ。
キッチンには出汁のいい匂い。天ぷらはお正月価格で高かったけれど、まあ、今日ぐらいいいだろう。
「いただきます」
こたつに入り、ひとり手を合わせて食べ始めた。
今年も結局一人。今年のはじめ、婚活を成功させると誓ったんだけどなぁ。仕事もバリバリとやる予定だったが、婦人系の病気も見つかり、停滞気味。
とはいえ、病気は再発していないし、他は健康だ。仕事も食うに困ることはない。世間は高齢の独身女だと笑うかもしれないが、今年一年、死ななかった。生きてる。
「もう、それだけで充分でしょ?」
そんな事を考えていたら、天ぷらがつゆにつかり、ぐずぐずになってきた。蕎麦はセーフだ。まだ伸びていない。コツ通りに作ったおかげか、ツルツルだ。喉越しもすっきり。
「うん、満足だわ」
部屋も暖かい。年末年始のテレビの雰囲気も楽しい。それに年越し蕎麦もちゃんと美味しい。
「ま、来年もゆるーく頑張りまりましょう」
目標はあくまでもゆるく。肩の力を抜けば、視野も広がるだろう。
目の前の器、気づくと空っぽだ。ごちそうさま。今年一年おつかれさま。良いお年を。
たまには自分を労っても悪くない。




