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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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ワインが余った時

 飲み過ぎた。クリスマスだからって飲み過ぎた。


 安元ナオは後悔していた。といっても酒に強く全く二日酔いはしていなかったが、四十すぎた女性がクリぼっちにやさぐれ、愚痴を言いながら飲んでいたこと、急に我にかえる。恥ずかしい。


「あー、でも。ワインは残ってるな。かといってアルコール、もう飲みたい気分じゃないんだけど」


 ビールの空き缶などを片付けつつ、ワインが余っていることに気づく。


「なんか、いい感じに飲む方法ないかな?」


 ネットで調べると、余ったワインのアレンジ方法が出てきた。スパイスと一緒に煮込み、ホットワインとして飲むのがいいらしい。


 特にドイツのクリスマスマーケットで売られているホットワインはグリューワインと呼ばれているらしい。専門の屋台もあり、かわいいデザインのカップで提供される。他にもクリスマスマーケットの画像を見ているだけでワクワクする。その上、グリューワインは風邪予防になるらしい。


「スパイスはうちにないけれど。スーパーに売ってる?」


 普段あんまり料理をしないナオ。スターアニスやグローブとか聞いたことないが、売っているだろうか。シナモンはたぶんありそうだが。


 それでもクリスマスマーケットの画像が気になり、近所のスーパーへ。驚いたことに店員にきくと、スパイス、あっけなく見つかった。


 こうして家に舞い戻ると、さっそくワインとスパイスを煮詰め、グリューワインを作った。驚くほど簡単。しかも温かい。スパイスの匂いも元気が出てくる。ほかほかの湯気に身体も熱くなってきた。


「安物の余ったワインに思えないよなぁ」


 たぶんアルコールは飛んでいたが、気分はドイツのクリスマスマーケット。想像の中でグリューワインを片手にサンタやリースのグッズを買って楽しんでいる。


 思えば、今まで夢もなかった。ただ毎日仕事をこなしているだけだった。


「来年のクリスマス、ドイツのクリスマスマーケット行くのも、アリかな?」


 やってみたいこと、一つ決まった。夢というのは大袈裟かもしれないが、来年のクリスマスは今年より楽しい気がする。

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