シュトレンを食べる時
「つ、ついに買ってしまったが……」
先程、自宅に宅配便が届いた。ネットで注文していたシュトレンだった。
改めて箱から出すと大きい。一人暮らしで食べられるのか。体重やカロリーも頭を巡る、風真花音、二十歳。
大学入学と同時に一人暮らしをはじめた。こんなシュトレンを食べるのだって自由だ。実家は弟が五人もいるし、もしあっちにシュトレンがあったら、奪い合いになり一瞬で無くなりそうだが。
さっそくシュトレンをまな板の上に置く。粉砂糖、想像以上に量が多い。バターや砂糖も相当使っていそうだが、クリスマスムードに負けた。ネットショッピングサイトの画像以上に、実物のシュトレン、美味しそう。スパイスの匂いもほんのりと香り、買ったことには何の後悔もないが。
「あれ? シュトレンってどう切るんだっけ?」
そういえば、シュトレンの切り方、よくわからない。普通に端から切っていいのか?
それに保存方法もわからない。
すぐにネットで検索すると、真ん中から切り、切り目をくっつけて保存用のバックに入れるといいらしい。乾燥しにくいという。
「なるほど」
さっそく試してみた。そして紅茶も淹れ、シュトレンをゆっくり味わう。
甘い。甘すぎるぐらいだが、今日はこれだけ。さすがに全部は食べられない。
こうして毎日ちびちびとシュトレンを味わう。なぜか毎日食べても飽きない。少しずつだからだろうか?
わからない。単純に美味しいせいかもしれないが、毎日好物の焼肉やステーキを食べたいかと言えばノーだ。
「やっぱり味が変わってる?」
クリスマス直前になり、その謎が解けた。全く同じ甘さだと思い込んでいたが、振り返ってみると、最近食べたのは味わいが濃くなってきている気がする。特に中のナッツやレーズン、深みが増したような?
首を傾げつつ、もう一度シュトレンを味わう。そうか、シュトレンの味も変わっていくんだ。ずっと子どものような感覚でいたが、一人暮らしを始め、こんな風にシュトレンを食べられるぐらいには成長したらしい。
今でも弟たちは家でワイワイと騒がしいと思うけれど……。
「そうか。変わっていくんだね……」
これから就活もある。資格の勉強や旅行などやりたいこともたくさんある。
実家の弟たちを思うと、少しだけ寂しさも感じるが、変わっていくのも悪くない。
もう一度、シュトレンをゆっくりと咀嚼する。甘いだけじゃない気がした。




