ハンドクリームが余った時
「私、何でこんなハンドクリーム買ってたんだろう?」
早瀬莉里は頭を抱えていた。コスメボックスを整理していたら、他にも使っていないマニュキュア 、アイシャドウ、マスカラなども出てきた。
特に金持ちでもない。平均よりやや低めの事務職だ。貯金だって少ない。莉里は二十代半ばだが、このままアラサーやアラフォーになったとしたら……。
「いや、ダメじゃん。無駄遣いとかやめよう」
反省した莉里は肌にあうブランドだけ決め、それ以外のコスメは極力見ないようにした。ネットの口コミや新製品が出ると気になるが、買ってもちゃんと使いきるか、肌に合うか、その場の気分に流されていないか、よく考えるようになった。
おかげで無駄遣いは減ってきたが、無駄に買ったコスメはどうしよう。捨てるのも勿体無い。
「あ、使いかけのコスメってなぜかフリマアプリで売れる!」
それに気づいた莉里はマニュキュア やアイシャドウやマスカラを順調にフリマアプリで売っていったが、ハンドクリームだけ売れない。同じくハンドクリームを安く売っているアカウントがあり負けてしまったようだ。
「なんかハンドクリームの活用法はないかな?」
調べてみると、鏡の汚れをとるのに再利用できるらしい。薄い布にハンドクリームをつけ、拭いていくと、いつも使っているコンパクトミラーもピカピカになった。
鏡に映る自分の顔もスッキリして見える。不用なコスメを手放し、身軽になったからだろう。
それに無駄遣いも減って内面も少し磨かれたのかもしれない。そんな気がした。
「うん、肌だけじゃなく心も磨くぞ!」
そう笑顔で宣言すると、鏡を見るのが毎日とても楽しい。