枕返し
俺はあかなめ。妖怪だ。親友の枕返しと久々に霊界で遊んでいる。楽しみにしていた映画を観終わり、余韻に浸りながら感想を言い合おうと、映画館近くの居酒屋で駄弁っている。
酒の勢いも手伝って、今まで俺が枕返しに抱いてきた疑問を、思い切って聞くことにした。
「なぁ、ひとつ聞いていいかな」
「何を改まってるんだよ。いいよ、なんでも聞いてよ」
では、遠慮なく。
「枕返しってさ…普段、何してんの?」
「何って…人間の枕を返してるんだけど」
「枕返すってさ、枕を裏返すの? 枕を足元に持っていくの?」
「それはまぁ、気分によってかなぁ…」
案外、いい加減らしい。少し興味が湧いてきた俺は、「俺にも一度、やらせてくれ」とねだってみたものの、「一族の秘伝が」とか「堅い掟が」とか、なかなか許してもらえない。
「お前が欲しがってたあの高級枕、今度買ってやるから」
「よし、じゃあいつがいい? いつでもいいよ!」
こいつ、枕どころか手の平も返しやがった。