第四話:終焉
その歪んだ眼に映った世界には何が見えたか。
幾百もの時を過ごしたその魂の終わりに何を感じたか。
悲哀か。絶望か。あるいは。
いずれにせよ、最期に宿った炎は虚構ではなく、紛れもない本物であった。
龍の幻覚に少年の思考が揺らいだその刹那の話である。
※ ※ ※
もう何度目か、洞窟が揺らいだ。
「長老。どうなってるんです」
列の先頭。一つ後ろにいる老人の前で男は振り返ることもなく、降りしきる小石から頭を庇いながらそう言った。
数時間前のことである。
夕方、村に響いた音は龍の洞窟方向から聞こえたものだった。
大切な儀式だ。気にはなるが、洞窟に向かうことはおろか、外出することなど許されない。しかし、その後村全体に広がった何かの悲痛な鳴き声に不安と異変を感じ、超法規的措置とし村の大人たち数人で洞窟に向かった。
そして今。洞窟の最奥。
二つの骸の向こう。見知らぬ一人の少年と一人の少女がいた。
「ミウ…っ!!」
列の中から出てきたのは、少女の母である。
「……」
肝心の少女は、とある方向を見たまま身動ぎもしない。
少年も同様である。
しかし駆け付けた大人が皆思ったのは、その少女の安否だとか、その少年が誰だとか、二つの骸の理由だとかではない。
二人と二つの骸の間にあった、ただ一つの存在に、ただ目を奪われていた。
それは暗闇。
否、巨大な翼であった。
巨大な黒翼を纏う、ナニカの姿。
「…なん、で」
それは言葉を発した。
「ちが…うの」
『ソレ』は言葉を発した。
「や、め……」
『ソレ』は『鳴き声』を発した
「来な……で」
「ーーバケモノ」
「うわあああ! バケモノだ…っ!!」
感情は波紋となり混乱を生む。
それが負のものであれば、尚更である。
各自持っていたものにて、異端の獣を排除しようとする。
それは先程少女を匿った女性も同じで。
「ーーーー」
その瞬間、近くにいた謎の少年が跳躍。
黒色の翼を持つ黒色の身体を掴み、天井の穴より消え去った。
残ったのは二体の屍。
そうして残された十数人には、静寂が舞い降りたのであった。
※ ※ ※
必死だった。無我夢中だった。
繰り広げられる攻防の最中。といっても一方的であったが、そんな中でも妹の助力を得て放とうとしたあの一撃。時が止まったかのように一瞬静止した彼の隙を突いて、バケモノが鈍く目を光らせたように見えた。
何かイヤな予感がした。
身体の内側より弱まっていく力が、それでも警鐘を鳴らす。
だがそれは諸刃の剣だった。
使えば、自分が自分でなくなる。そう感じ取った。
自分の中で起こった一瞬のせめぎ合いは、終わりの力同士がぶつかり合う音が聞こえるようであった。
でも、それでもぶつかり合う一端を掴む。
そこからの使い方はその力が教えてくれた。
教えられるがまま、指向性を加えてやる。
すると先程まで喧嘩していた二つの力は、一つの強大な破壊となって全身を包む。
無我夢中で放った波動は龍の目論見を打ち砕き、少年を守る。
だが代償として負ったのは、自らの変貌であった。
気が付けば周りには見知った人で満ち溢れていた。
恐れ慄き見つめる幾数十もの眼。
「…なん、で」
そんな目で見つめるの。
「ちが…うの」
信じて、もう怖がらなくていいの。
『でもあなたたちだって、私を犠牲に生き残ろうとしたでしょう?』
内なる声が、私を終わりへ誘う。
「や、め……」
『何を止めるというの? これからするのは、間違い直し』
「来な……で」
来ないで。あなたたちを傷付けてしまう。
『ーーーー』
いつの間にか懐に潜り込んだ少年は私の身体を掴み、とても人とは思えない身体能力にて、混沌の坩堝を脱出した。
夜の半月だけが二人を照らしていた。
さて、始まりました「出会った君は龍の生贄」!!
略称募集中〜(`・ω・´)
設定重めが好きな人は好きな物語になりますかね、。
高低関わらず評価ヨロシク!




