① 辿り着いた現実
大地の怒りと呼ばれた大地震から、早数週間。突然、住む家も両親も失ったことに嘆き悲しんで、涙を枯らしたのも昔の話。
泣いていても、失ったものが蘇るわけでも無ければ、腹が満たされることも無い。
こんな状況だからこそ、生き残った者たちと手を取り合って、今を過ごしていた。
「ふぁぁ……」
本来なら、朝早く起きて登校する必要があったが、学園自体が無ければ意味がない。
ビルの残骸である瓦礫を基に囲いを作り、キャンプ用のテントらしき布を被せて作られた簡易的な住居からは、その隙間から明るい光が差し込んでいた。
時間に追われず過ごせるようになったのは、ある意味開放的だったが、この開放的な空間は、やはり心許無い。
雨風を多少凌げるものの、台風が来たら、どうなってしまうか分からないこともあり、失って初めて、家という存在の大切さを知った。
「ぐうぅぅ…」
「ぐごぉぉ…」
上等なマットレスも無ければ、布団すらボロボロの酷い生活環境で寝ている間に凝り固まった身体を解すように、ぐぐぅと伸びをする。
「まだ、三人とも寝てるのか」
周りを見回せば、表面が剥がれたソファーなど、同じように劣悪な環境で睡眠を取っている男たちが、大きな寝息を立てていた。
のろのろと布団から出ると、重たく感じる身体に力を入れて立ち上がり、寝る前に傍に置いていた服へ袖を通す。
パジャマのような寝間着に一々着替えることもしなくなった現状では、せいぜい上着を一枚脱いで寝るくらいなものだ。
当然、床がフローリングや畳で覆われているはずもなく、剥き出しのコンクリートや砂利なので、もはや外と変わらない。
家の中では靴を脱ぐのが日本の一般的な習慣だったが、今そんなことをしていては、すぐに怪我をする恐れもあるので、そのまま靴も履いてしまう。
「さて、と…」
起きてすぐ朝食が出てくるなんて、今思えば夢のような話だ。電気も水道もガスも通っていない今の環境では、冷蔵庫すら使えず、ただのかさばる入れ物にしかならない。
専ら朝には情報番組を放送していたテレビなんて物は、特に役立たずで、電気を確保できたとしても、テレビ局自体がもう存在していないらしいので、何も映ることは無い。
広く普及したスマートフォンなどの携帯電話も、電話回線やWi-Fiが機能していないが為にどこにも繋がらず、もはや何の意味があるのか分からない代物になっている。
そんなものを律儀に持っているのは、過去に撮った遺族との写真や思い出が残っているからという者くらいで、既にあまり見かけなくなっていた。
「ん、んんぅ……、あれ…司くん、おはよう。どこか行くの?」
少ない手荷物を持って出掛けようとしていると、寝起きの一人から声を掛けられた。
「ああ。ちょっと、食料の調達をしてこようと思ってさ」
「そっか。なら、僕も行くよ…」
そう言って、のろのろと立ち上がったのは、敷嶋 勇聡。
彼に限らず、まだそこで寝ている二人もそうだが、俺たちは同じ学園に通っていた同級生だ。そして、中学で出会って以来、普段から仲良くつるんでいた友人でもある。
大地震によって、彼らも同じように家と家族を失ったものの、辛うじて生き残った俺たちは、手を取り合って生活しようと意見がまとまり、今に至る。
「まだ眠いなら、寝ててもいいぞ。そんなに、遠くまで行くつもりも無いから」
「一人で行ったら、危ないよ。まだ、倒れる可能性がある家やビルもあるんだし」
「確かに、それはそうだな。じゃあ、一緒に行くか」
「うん」
四人の中で一番か細い彼に正論を説かれてしまっては、断ることもできない。
彼の言う通り、有事の際のことを考えると、単独行動をするより、二人以上で出歩いた方が良いと言い出したのは俺でもある。
普段から、二人ずつや四人揃って探索するようにしているのに、言い出しっぺがそれを破ってしまえば、説得力が無くなり、他の者たちへの示しがつかなくなってしまう。
「ぐぅぅぅ……」
それはそうとして、こんな状況でも、悠長に寝ていられる図太い神経が羨ましい。
若干呆れながらも、支度を終えた勇聡と共に俺たちのシェアハウス(仮)を離れた。
二人でまず最初に向かったのは、近くの河原だ。
蛇口を捻れば簡単に水が出ていた時と違い、今は毎回川から水を汲む必要があった。
「ごく…ごくっ…。ぷはぁっ……」
喉が渇けば水分を欲する身体に水を流し入れて、口内を潤した。
正直、ペットボトル飲料水の方が、よっぽどマシな味をしていた覚えがあるが、無いものを強請っても仕方ない。
「ここの川、随分綺麗になったよね」
「ああ、そうだな。とても、飲もうと思えるものじゃなかった気がする」
以前拾った比較的綺麗な水筒に水を汲みながら、同じように川の水を飲んでいた勇聡は、上流の方を眺めながら感心していた。
「あれから一か月も経ってないと思うけど、こんなに変わるものなんだね」
「それだけ、人間が汚してたんだろう。むしろ、これが本来の姿なんじゃないか?」
「うん、そうかもしれないね」
下水道が整備されていても、古い建物ではそのまま汚水を垂れ流していたり、そうでなくとも、ゴミなどを捨てることで川が汚れてしまっていたのは、事実だろう。
しかし、今では透明度の高くなった水に透けて、小魚や川底の石が良く見える。
日に照らされることで乱反射して、キラキラと輝いてさえいるので、濁って底が見えなかった頃に比べると、見違えるような光景だ。
「山に近い上流の方に行けば、もっと水質も良いはずだ。この辺りの探索が終わったら、そっちへ移るのもありかもしれないな」
「そうだね。旭くんたちにも、相談してみないとだけど」
「だな」
水分補給を終えて立ち上がると、川のせせらぎを後にして、次の場所へ向かった。
瓦礫の山となった街の探索は、以前とはまるで違って、歩くのも一苦労だ。
広い通りだった場所なら、まだ道路が地表に出ている場合もあって、歩くための道筋ができている所もあるが、大抵は瓦礫の上を歩く羽目になり、不安定な足場の時もある。
馴染み深いコンビニの看板も剥がれ落ちて道路に転がっているが、大きく亀裂が入って割れており、無残な姿を晒していた。
「ここもダメか」
「もう、先に誰かが取っていったみたいだね」
分かりやすく看板が落ちていれば、そこに食料があると教えているようなものだ。
先に訪れた者がいれば、その場を漁って、持てるだけ持って行ってしまうのも共感できるので、悔しいが文句は言えない。
「上に乗ってる瓦礫を退けられれば、もう少しありそうな気もするけど…」
「今の僕たちには、難しいね…」
おにぎりらしき残骸が転がって、米粒が辺りに散らばっているが、そこにも既に小さな先客が集まっており、虫けらにさえ嘲笑われているようで、癇に障った。
「やっぱり、あいつらの仕業かな?」
「ああ、多分な」
この辺りに居ついているのは、何も俺たちだけではない。その中で、特に厄介なのが、近くの公園を占拠している『ワイルダム』と名乗る連中だ。
広い公園であれば尚の事、現状では瓦礫が少ないエリアとして有用な公園を占領していることも問題だが、組織立って動いていることが、さらに嫌な方向へ事を運んでいる。
十人も超える人員を使えば、俺たちよりもさらに広範囲を探索できるので、先手を打たれがちな上に、人が多ければ多いほど、必要な食料も増えてくるので、あればあるだけ持って行き、自分たちの為に確保しているのだ。
その為、後手に回ってしまった俺たちのような者は、さらに探索範囲を広げて、時に危険をも顧みなければ、満足に食料へ辿り着くことすらままならない。
「僕たちも…ワイルダムに入れてもらった方が、良いのかな?」
「また、その話か…」
初めて彼らと遭遇した時、俺たちにもお呼びが掛からないわけではなかった。
ただ、彼らは仲間になるなら歓迎するようなことを言っていたが、それもどこまで本当のことか分からない。とはいえ、ひもじい思いをするよりは、彼らの側について、少しでも生きやすい環境へ身を置きたい気持ちも理解はできる。
「前にも言ったけど、行きたければ好きにしていいぞ。止めはしないし、恨みもしない。でも、俺は御免だね」
「あいつら、食料を確保する為なら、手段は問わないっていう話だし。あんな奴らの言いなりになるくらいなら、自分一人になっても、図太く生き抜いてやるさ」
「うん…。そう、だよね…。ゴメン、ちょっと弱気になってた」
「今の変わり果てた環境なら、弱音の一つも言いたくなるさ。いいから、次行こうぜ」
「うん、ありがとう。…あ、あれ」
思い止まった勇聡が、何かに気付いて指を指すと、瓦礫の下から少しだけ顔を覗かせた色鮮やかな物が目についた。
「お、これくらいなら、退かせそうだな。勇聡」
「うん。一緒にやってみよう」
「せーの…!」
「ふんぬぬ…っ!!」
自分の体重より重いのではないかという瓦礫を、細身の二人掛かりでなんとか押し退けると、まだ手付かずで残されていた飲料が日の目を浴びる。
「アセロラに、マンゴー、ヨーグルト、バターミルク。どれも癖が強い物ばっかだな」
「うん。でも、あいつらを出し抜いて、手に入れられたことに変わりないよね」
「ああ、その通りさ。俺はアセロラでも貰うとして、後は誰かが飲むだろう」
「じゃあ、僕はマンゴーにしようかな。よし、この調子で他の場所も探してみよう!」
「そうだな。次は、腹ごしらえをしたいもんだ」
他にも手の届きそうな場所に埋まっていないかを一通り見回してから、気を取り直して、さらに別の場所へ向かった。
あからさまな目印が無く、分かりにくい場所なら、まだ探索の手が伸びておらず、食料が残っている可能性はある。とはいえ、もう生物は食えたものではないだろう。
そうなると、ある程度日持ちがする食料品が目当てとなり、お菓子のようにパッケージされている物の方が安全に食べられるが、特に重宝するのは缶詰だ。
外装が比較的頑丈に作られている為、多少潰れても密閉されたままであれば問題ないし、かなり長い賞味期限が設けられていることもあって、有用な品といえる。
一方、カップラーメンや湯銭して食べるレトルト食品は、優先度が下がっている。
一応、川から汲んできた水を火にかければ食べられるが、以前の手軽さが嘘のように手間が掛かる上に、燃料が底を尽きれば、それも叶わなくなることが災いしている。
これらを踏まえて、目についた場所を漁りつつ、更なる目的地を検討していた。
コンビニ、スーパー、ドラッグストアが主な狙い場だが、それは誰でも同じように思う場所であり、デパートは瓦礫が多すぎて、とてもじゃないが視野に入れられない。
以前の街の様子から変わり果てている所為で、同じ場所を歩いているはずなのに、全く別の場所にいるような記憶との齟齬に悩まされつつも、食料を売っていた心当たりのある場所を巡り、ようやく手に入れた少しばかりの食料を手に、一度道を引き返した。
「おっ?帰ってきた帰ってきた。ママー、お腹空いたー!」
「誰がママだ、誰が」
仮住まいに戻ってくると、残していった二人もさすがに起きていた。
上を見上げれば、もう日が高いので、それも当然といえるだろう。
冗談なのは分かりきっているが、ふざけたことを抜かして、飯をたかろうとしたのは、四人の中で唯一肥満体系の速川 旭だ。
既に歩き回ってきた俺からすれば、眠気どころか疲れを覚えるくらいだが、まだ二人は眠いのか、暢気に大きく口を開けて欠伸をしていた。
「でも、色々収穫はあったから、みんなで食べようよ。僕もお腹空いたし」
「お?マジ?やっりー!」
「駅近くのノーブランドの店が、意外と残っててな。それなりに持って来たつもりだけど、また近いうちに行っても良いかも」
「へぇ、なるほど。穴場だったってわけね。お手柄お手柄」
『ノーブランド』というのは、パッケージデザインにお金を掛けず、低価格で売りに出している会社のことだ。
俺の覚えが正しければ、凝った物というより素朴な物のイメージが強く、オーソドックスながら安く売っているお菓子類が代表格か。
「二人は、ヨーグルトとバターミルク、どっち飲む?」
「じゃあ、ワイミルク!ママのミルク飲みたい!!」
「アホか」
「二人は良いの?」
「ああ、先に貰ったからな」
この四人組の最後の一人、知桐 義兼に気を利かされ、チラっと別の飲み物を見せつけると、僅かばかりの非難を浴びる。
「あー!ずっりーの。自分たちばっか、先に選んじゃってさ」
「俺たちが見つけてきたんだから、それくらいの優先権はあっても良いだろ?」
「あはは、ゴメンね」
「ぐぬぬ…。じゃあ、ワイが見つけてきた時は、優先的に貰って良いんだよな?」
「そういうことだな。俺たちに回ってくる分があるかは、不明だが…」
こんな生活を続けて、食いぶちに困ってくれば、見た目通り食い意地の張った旭も痩せそうなものだが、そうなれば、初めて彼の痩せ細った姿を見ることになる。
なんせ、出会った当初から、今のような体型だったから、まるで想像がつかない。
以前、彼のように太った男が、劇的に痩せて見違えるようなイケメンに変貌を遂げるというテレビ番組もやっていたが、正にそれを目の当たりにするかもしれない。
「とりあえず、残りのヨーグルトは俺が貰おうかな」
「ああ、うん。はい」
マイペースな義兼は、言い争う二人を他所に勇聡から残り物を受け取った。
「僕たちが言い争って、いがみ合っても仕方ないでしょ。きっと、そういう時はお腹が空いてるのが悪いんだって、どっかで聞いたことあるよ」
「…そうだな。飯にしよう」
「そんな元気があるなら、食料の調達でも何でもした方が良いってね」
「なんでもいいから、早く食おうぜ」
重たくなった荷物の中から、パッケージされた袋を取り出して見せると、幾重もの腹を空かした間抜けな音が鳴り響いた。
「なあ、一斉に欲しい奴を指差して決めないか?」
「被った時はどうすんだ?」
「そんなのは、じゃんけんで決まりっしょ。買った奴が持ってって、負けた人は他のから一個選ぶってことで」
「良いんじゃない?」
「下手に、嫌いな物を食う羽目になるよりはマシか」
「意義なーし」
「じゃあ、決まりだな。よし、いくぞ…せーのっ!」
ビシィっ!とそれぞれが別の物を指差して、昼飯争奪戦は平和的に解決した。
「バラバラやな」
「息が合ってるのか、合わないのか。これはどっちっていうべきなんだろうね?」
「まあ、結果としてすぐ決まったなら良いじゃない」
「そういうこと。早速、食べようぜ」
思い思いに、自分へ配給された袋を開けると、徐に手を突っ込んで食べ始めた。
一応、食べる前に、水筒の水で手を洗っておいたから、大きな問題は無いだろう。
「この素朴な味のビスケットに、このバターミルクが…ごっくん、合うぅー!」
寝起きにも関わらず、飯だけは一丁前にかっ食らう旭は、食べては飲んでを繰り返し、こんな食事でも満喫しているようだった。
昔、親から「お菓子をご飯前に食べると、ご飯が食べきれないでしょ」と叱られた覚えもあるが、まさかお菓子が主食になってしまうとは、当時の俺も思わなかっただろう。
「ポテチがあれば、もっと良かったんだけど、これはこれで美味いね」
「ポテチなんて食ったら、余計喉が渇くだろ?」
「でも、気持ちは分かるよ。普段食べていた物が食べられるだけでも、だいぶ気分的には変わるから」
たった一か月も月日が経たないうちに、日本は大きく変わってしまった。
そんな中でも、以前の当たり前だと思っていた生活の片鱗が感じられるだけで、その頃の思い出も蘇るというものだ。
「そういえば、昨日の『アレ』何だったんだろう…って話をしててさ」
「ああ、アレか」
義兼が視線を上げて指した『アレ』とは、昨日空から落ちてきた飛来物のことだ。
あわや、隕石でも落ちてきて直撃するかと思い、肝を冷やしたが、少しだけ落下地点が逸れていて、落下による衝撃の揺れを感じるくらいに留まった。
「なんか、すごい勢いで落ちてきて、結構揺れたよね」
「まだ地震酔いも残ってるのに、あれだけ揺れると良い迷惑だったな」
もはや、地震が起こっても、倒壊して大惨事を招くような高い建造物すら周りに無いので、大きな被害は起きないだろうが、かといって起きて欲しいものでもない。
「それなんだけど、何が落ちてきたのか気になるし、後でみんなで行こうか…って話してたんだけど、二人はどう?」
「うーん…。確かに気にはなるが、俺としては先に食料の調達もそうだし、できればキャンプ用品を売ってた店の辺りまで行って、色々調達しておきたいと思ってたんだけど」
「キャンプ用品っていうと、どんな物が狙いなの?」
「テントや寝袋なんかもそうだし、他の道具とか食料もある気がするんだよな」
「確かに。それは、あると便利そうだね」
「だから、今日はそっちと手分けしようかと思ってたんだが…」
「でもさー?落ちてきたのも、アメリカからの支援物資って可能性はあるでしょ?」
「それにしては、あの時別の方へ向かう流れ星みたいなのも、遠くに見えたんだよな」
「あー、それは俺も見たかも」
「だとすると、支援物資の可能性はちょっと低そうな気はする。下手すれば、流れ弾のミサイルが落ちてきて、不発だっただけかもしれないぞ」
「それは、そうかもしれんけどー?でも、のんびり手を拱いてると、奴らも目を付けてるだろうから、先越されてまた全部持ってかれちゃうかもしれないぜ」
「あいつらなら、やりかねないね」
「ワイルダムっていえば、そもそも公園の不法占拠って、問題でしょ?警察が対処してくれれば良いんだけど、全然見かけないよね」
「警察が機能してないから、野放しになってるんだろう。警察に限らず、こんな状況でまともに働いているような人間がいるとも思えないしな」
「だとしたら、尚更だぜ。いつまでも、あいつらの良い様にされてるのは、嫌だろ?」
「それは、そうだが…」
「明日が不安なのは、みんな同じだよ。でも、今日の分の食料は確保できてるし、少しは楽しむことも思い出した方が良いんじゃないかな?」
「楽しむ…か」
現状では、なかなか彼らのように楽観的な考えを持つことが、俺にはできなかった。
明日、そしてその先の未来のことを考えると、不安要素はいくらでもあり、結局のところいつまで生き伸びられるかも分からない。
そんな中でも、せめて生きている間、楽しんで暮らしてやろうという気概は、彼らと共に共同生活を送らなければ、自分の中に芽吹かなかったものかもしれない。
「どっちにしろ、情報が満足に入って来ない今、何が落ちてきたのかを知るのも、自分たちの手でやらなきゃだもんね」
「分かったよ。ただの隕石でした…で、終わらないと良いがな」
「よっしゃ、決まりィ!司ちゃんってば、難しく考えすぎなのよ」
「いやいや、お前とキリマルが楽観的なだけだろ?」
「そうかな?」
「そうだって」
「まあ、良いじゃない。これ食べたら、早速みんなで向かおうよ」
「ああ」
「おうともさ。…あ、でも待って。先にお花摘んでくるから」
「綺麗なお花摘んでくるのよ、旭」
「任せて、キリマル。きっと、あなたに似合う花冠を作って来るわ」
「アホなこと言ってないで、用を済ませるなら、さっさと済ませて来いよ」
「へーい」
まとまりがあるのか無いのか、四者四様の考え方を持つ俺たちは、腹ごしらえを済ましてから、昨日何かが落下した場所を目指して歩き出した。