プロローグ
あなたは地球の寿命が、あとどのくらいなのか、ご存知だろうか?
科学技術の発展などにより、人間の寿命は百歳近くにまで伸びたといわれているものの、星の寿命というのは、その十倍どころか、百倍あるいは千倍を優に超えるものなので、イマイチ実感が湧かない者も多いだろう。
また、実感が湧かないことに付随して、自分が生きている間の向こう百年くらいは大丈夫だろう、と高を括っている者も多いはずだ。
目の前の現実を生きて、より良い暮らしを実現する為、特に産業革命以降は飛躍的に生活水準が上がったが、それによって地球の寿命は大きく変動したともいわれている。
後世の人類の為にも、地球環境を保護することを掲げ、世界中でその取り組みがなされていたが、一度楽を覚えた人類は、簡単にその利便性を捨て去ることはできなかった。
日本は早々に戦争を放棄したものの、諸外国は平和の祭典に参加する側面を持ちながらも、常に他国への警戒を怠ってはいなかったことも、一つの要因だったとされている。
実際、付け入る隙を与えてしまえば、容赦なく侵略・侵攻しようと企てている国も少なくなかった。というのも、悠長に未来のことを考えられるのは、現状でそれほど困っていない裕福な国に限られるからだ。
貧しい国であれば、未来を生きることよりも今を生きることに手いっぱいで、地球環境など気にしている場合では無いのだから、それも一つの道理といえるかもしれない。
結果、地球環境を改善しようと大きく掲げたものの、大した成果を得られず、人類は自分で自分の首を絞める末路を辿っていた。
そして、地球自身がそんな人間への怒りを表すように、世界は大きく変容した。
まず、最初に起こったのは、新型ウイルスによる感染症のパンデミック。世界中で感染が確認され、これまでに類を見ないほど各国で多くの死者を生んだ。
度重なるウイルスの変異によって感染力や致死性の変動はあったが、ワクチンの開発により、それもようやく落ち着きを見せ始めた。
パンデミックが終息したかと思えば、以前から紛争が続いていた西アジアを舞台に、第三次世界大戦が勃発した。
元々、そちらに援助していたアメリカやロシアなどが本格的に参入して紛争が過激化した結果ともいわれているが、それに乗じて侵攻を開始する国もいくつか見られ、核兵器すら使用されてしまうことになった。
パンデミックの比ではない被害をもたらしたその戦争も、やがて終戦の時を迎える。
しかし、それは降伏したからではなく、続けている場合では無くなったからだ。
その発端となった大きな要因の一つは、複数の巨大隕石が落下してきたことにある。
巨大隕石はあらゆる大陸のあちこちに落ちてきて、多くの国に被害をもたらした。
そして、それに呼応するように、恐れられていた大地震がついに発生してしまった。
大地の怒りともいわれたその地震によって、日本全土は壊滅的な危機に陥った。
電気・水道・ガスのライフラインが壊れてしまったのはもちろん、ほとんどの建物は倒壊し、夥しいほどの死傷者で溢れかえったのである。
これらの出来事を、地球からの復讐や報復だと訴える者もいれば、人間の自業自得だと考える者もいた。
これは、そんな変わり果てた地球で生きる人類の物語である。