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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「親友」は偽物・嘘・まがいもの

「二人共、ごめん!」


 夏菜子が両手を合わせてオレ達に頭を下げた。

 今夜は地元の花火大会。

 幼馴染トリオであるオレと夏菜子と卓也の3人で観にきていたのだが、夜店を見て回っている時に夏菜子がクラスの女子達とばったり会い、声をかけられた。

「一緒に花火を観ようって誘われちゃったの。ちょっと断りにくくてOKしちゃったから、花火は彼女達と観るね」

 じゃあね!と手を振り、夏菜子は去って行った。


 今年も夏菜子と花火が観れる、と張り切っていた卓也の落胆ぶりはものすごくて、河川敷に座ってからもがっくりとうなだれっぱなしだった。

 やれやれ。夜店で買ってやった焼きそばもたこ焼きも手付かずだ。

 先に自分の分を食べ終わったオレはペットボトルのお茶を飲み干し、空のボトルで卓也の頭を小突いて言った。

「ほら、もうすぐ花火が打ち上げられるぞ。いい加減顔をあげろよ」

「…………」

「なんだよ、親友のオレとじゃ不満なのか?」

 いつまでも落ち込んでいる卓也を見ていると、なんかイライラしてきた。

 そんなに夏菜子がいいのかよ。隣りにいるオレが馬鹿みたいじゃないか。

 しばらくして、ヒュルヒュルヒュル…という音と共に細い光の筋が空へ上がっていった。

「見ろ、始まったぞ」

「……ん」

 ようやく卓也が顔を上げた。

 涙目でしょげている顔を見た途端、たまらない気持ちになって卓也にキスをした。

「んっ!」

 花火がいくつか打ちあがった後、ゆっくり唇を離した。

 見ると、明かりに照らされたお前は目を見開き驚いていた。

 その顔は何が起こったのか理解が追いついていないようで呆けているようにも見えた。


 もうお前の隣に立つことすら出来なくなるかもしれない。

 でも、偽物の「親友」のままでいたくはなかった。

 自分を抑えるのは限界だったんだ。

 花火を背にし逆光になっているから、きっとお前からはオレの表情が見えないだろう。

 泣きそうになっている顔をお前に見られずにすんで、少しだけホッとした。



今回の大賞に応募するため、「ゆいこのトライアングルレッスン」へ投稿した作品をアレンジしました。

気に入ってくださるとうれしいです。

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