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5。

 


 あの宴が終わった夜、すべてが予定通りに進んだという安心感からか高熱を出したガイルは、そのまま一週間以上も熱が下がらず意識も戻らないという正に生死の境を彷徨う事となった。

『言わんこっちゃない』と、宴に参加するためにガイルが安静にすることも、一切の痛み止めも鎮静剤もすべて拒否したことにカンカンになって怒っていた王宮医師から輪をかけて盛大に怒られはしたが、それでも、サリーナの怪我の手当てと、念のためにと内密に受けさせられたアーマニの健康診断について知っている分、ガイルへの治療はその辛辣な言葉とは裏腹に始終恭しく丁寧なものであった。

 夢現半醒半睡。熱に浮かされながらもたまに目を開けるとそこに心配そうなアーマニの顔がある。その顔はまったく似ていないにも拘わらず、何故か幼い頃の愛娘が病に伏した愛妻に付き添ていた時と重なって見えて、その泣きそうな顔を見つける度に、ガイルは声にならない声で『だいじょうぶだ』と毎回答え、宥めるように頬を撫でた。


 そうして、更に半月の時が過ぎてようやく床から起き上がれるようになったガイルは、宰相から宴の前に行われた打ち合わせについての報告を受けたのだった。

 眉間を揉みながらやってきた老宰相から世間話のついでのように聞かされた下世話な噂が報告されなかった件についての顛末はこうだった。

「あまりにも我が国の第二王女様とはかけ離れた醜悪な噂に、それこそが王太子に懸想する沢山の令嬢達による根も葉もない噂だろう、と判断したようです」

 苦虫を噛みつぶしたような顔でため息交じりに告げられた言葉に、ガイルも肩を落とす。

 本当の、フォルト王国第二王女アーマニ・イル・フォルト殿下を知っているからこその判断であったのだろう。

 確かに、些細な下町の噂全てを王国に報告する必要はない。玉石混合となる情報に対する取捨選択は必要で、その意味では間諜が下した判断を一概に叱責する訳にもいかないだろう。

 しかし、実際にアーマニがリニアと対面する前にその情報が届いてさえいればとガイルは思わずにはいられなかった。多分、目の前で苦虫を潰したような顔をして座っている宰相も同じ気持ちだろう。

 そうして、その噂について最もアルフォンス王の逆鱗に触れたのは、その噂達の出どころが()()()令嬢達だったということだった。

 更に言えば、その沢山の令嬢達は皆すべてが本当に王太子殿下の恋人だったのだ。

 ただし”秘密の”という言葉が先に付く。

 ジャイユ国の王太子の口説き文句は、『国同士の付き合いという言葉の下、意のそまぬ相手との婚姻を強引に受け入れさせられそうなのだ。私の心は、貴女にしかないのに』というものだったらしい。

 これまでずっとそのお相手となる令嬢の名前は伏せられたままその陳腐な台詞は使われてきたそうだったが、ここにきてその名前にフォルト王国第二王女の名前が急遽浮上してきたという。

 勿論、それはジャオユの中で婚約の打診について話し合われた結果によるものだろう。

 そうしてついにリニア王太子殿下がフォルト王国入りしたことで噂を真に受けた一派が声を上げ、また騙された令嬢の1人が騎士団に関係する立場の者だったことであの蛮行となった、それが今回の事件の真相のようだった。

 秘密裏に行われただろう決起集会の中で、その悲劇の恋人たるご令嬢がひとりではないことに誰かが気付きさえすればこの悲劇は起こることが無かったのかもしれない。

 ただし、王太子の変更という違う事件が起こったかもしれないが、フォルト王国に関係なく済んだならそれで構わなかったというのに。

 ちなみに。ガイルの進言でこの根も葉もない中傷について解決した訳ではない。

 確かに進言を受けて調べていたからこそ、真相を掴むことが出来たという事は間違いなかったが、それ以前の問題であった。

「あなた様が寝ている間に、大きく事態が動きました」

 眉間の間にできたまた皺を揉みながら、年老いた宰相は真面目な表情になり口を開いた。

「報告に先んじて。遅れましたがこの国の救世主へ多大なる感謝を。貴方様のお陰でこの国が他国より侮られるような事態に陥る危機から救われました」

 そういってその白髪交じりの頭を深く下げる。

 ガイルは慌ててそれを止めさせようと身体を起こそうとして、苦痛に唸る。

「無理はもう十分された筈。いまはご養生を」

「いやぁ、歳は取りたくないものですな。怪我は治りにくくなるし、高熱が出ればなかなか下がらなくなる。挙句、いつのまにやら骨まで折れている」

 そう不平を洩らしながらガイルは再びベッドへ身体を横たえた。

 ガイルは歳というがそれほど高齢ではない。しかし、張りつめていた気が抜けて気絶して初めて、足の火傷による痛みだけでなく、肋骨が折れていることにも周囲は気が付いたのだった。

 ガイル本人にも、それがどこでどうして折れたのかは判らない。

 しかし、散々剣で打ち合いその腕で殴り足で蹴り合ったのだ。その際に受けたものに間違いないだろう。本気の死闘を繰り広げたのだ。自分も相手も、普段よりずっと強い力でやり合った記憶がガイルにはあった。

 実際に、大した怪我はないと思われた部下たちも実際には満身創痍であり、腕や鎖骨が折れていたり、大きな打撲や擦過傷ができていたりしていた。それだけ、敵も本気で命のやり取りをしたということだ。

「『折れた骨が肺に刺さらなかったことを神に感謝しろ』と医師殿には怒鳴られました」

 頭をがしがしと掻きながらそう笑うガイルに、老宰相はもう一度深く頭を下げ話を続けた。


 ガイルから持たされた情報と、ガイルから引き渡された生き証人となる犯人達と騎士団の刻印のある剣や鎧といった物証、そして犯人達の遺体や遺品。

 それらすべてを集めて検証を行い、その事件の目的とされた盗まれた物だけはそれと代えて、正式ルートでフォルト王国からジャオユ国騎士団に対して正式に抗議を行った。

『貴国の騎士団から脱走した騎士共が野盗となって我が国で野蛮な不法行為を行った。友好国として抗議するとともに、その犯人について取り調べを行い、処罰を行われたい』

 人相書きと、遺髪や持っていた剣などの物証を添えて使者を立てた。

 しかしその使者が持ち帰った手紙には、『剣は、訓練で起きた事故の際に、いまだ見つかっていない不明者のものであり、遺品を盗んだ野盗による行為だと思われる』とだけ書かれており、誠意ある態度を取る様子は見られなかった。

 ジャオユから届いた回答書を読んだアルフォンス王は、その手紙を文字通り握りつぶし、床へと叩きつけた。

 そうして、騎士団長や近衛師団長や外務大臣そして宰相といった今回の件について主要な役職の在る者を集めて会議を開くすることにした。

 円卓に集まったメンバーは皆ジャオユ国に対する嫌悪の表情に歪んでいた。

 会議開始早々、騎士団長レクト・トフランが大きな声で主張した。

「このままジャオユに口元を拭って知らぬ顔をさせる訳には参りませぬぞ! 例えその盗まれた宝が王女の個人的な宝物であったとしても、王家の離宮へ隣国騎士団の小隊が盗みに入ったなど、それをただ捉えるだけで許してしまったら、このフォルト王国は近隣諸国で腰抜け国家と嗤われることになってしまいます!」

 話しながら激高したのか、握りしめた手でどんどんとテーブルを叩く。

 それを受けて外務大臣セイン・コートも強くその言葉を後押しした。

「王女が離宮入りする前に防備を確認すると入っていた近衛が3名も命を落としているというではありませんか。アーマニ殿下との婚約を打診して油断させておいて、この仕打ち。よもや唯々諾々と謝罪成っていない馬鹿にした報告書の内容を受け入れる御積もりではございますまいな?!」

 外務大臣に就いて日が浅く、功を焦るセインのその剣幕を受けて、宰相が苦い顔をする。セインの言葉に頷くものはあるがそれでも、怒りのまま行動を選ぶことはできない。

「このままにはしない。それは絶対だ」

 中央に座るアルフォンス王は目を伏せ腕を組んだまま重々しい声で答えた。

「ならば!」

「しかし、戦争をするつもりはないのだ」

 その言葉に、ゼインもレクトも心のまま激情を口にした自分を諫めた。

 勿論、アルフォンスとしても馬鹿にされたままでいるつもりは無かった。 

 脱走兵であったとしてもジャオユの騎士団の装備を着けた者に離宮を荒らされ守りについていた近衛や使用人を殺されたままで済ますことは業腹というだけでなく、国家としての威信にも関わる。

 だが、戦争を始めたい訳ではないのだ。

 更にあまり強気に出てしまっては、せっかく客人の助力により無かった事にした筈のことまで明るみに出てしまうかもしれない。そう思うと手段については慎重にならざるを得なかった。

 どこまで強気に出るべきか。出るにしてもどう出るか。難しい判断が要求される。

 その時、それまで腕を組んで目を閉じ、黙っていた近衛師団長サンク・ゼイルが口を開いた。長年、王の傍付き近衛として王の信頼厚く勤めていたが『老骨がいつまでもでしゃばるものではないかと』といって一線を退き、後進を育成すべく指導する側についたばかりの老伯爵である。

「わたくしめに一計がございます」そのサンクがにやりと笑って提案があるという。

「ほう。言ってみよ」その自信ありげな表情に含むものを感じたアルフォンス王が発言を許した。

「捕まえたリーダー格の男を縛り上げて届けるのです。騎士団の刻印のある、軽鎧と剣を身につけさせた状態で献上品として。直接、ジャオユ国国王へと」

 近衛師団長である老伯爵が、その瞳を爛々と光らせてとそれを主張する。

 その言葉に外務大臣が感嘆の声を上げた。

「なるほど! そこまですればジャオユとて無関係を主張することはありませんな。しかし、どうやってその男たちをジャオユ王の前に連れて行くのです?」

 しかし、王と宰相はお互いに顔を見合わせ囁き声で情報を交換した。

『これは、ガイル殿の?』

『おそらく。あの時、王付き近衛も一緒でしたし、その後の捕虜の扱いも任せております。近衛3名が犠牲になっておりますからそちらからも報告は上げております』

 サンクは王付として長くその地位にあった者だ。もちろん、アーマニに対しても生まれる前からずっと傍でその成長を見守ってきた存在である。彼女の未来を傷つけるようなことは絶対にしないと信頼もしている。

 そうして、王が近衛師団長へ視線を送ると老伯爵はしっかりと視線を合わせて頷いてみせた。

「奴がジャオユ騎士団で大隊長の位にあった子爵であるということは調査済みです。それを箱に隠し入れ連れ込み、友好の証にと国王にお渡ししたいと告げるつもりです。謁見室でその箱を開け、ジャオユ騎士団が関わっているという事実を突き付けてやるのです」

 完全に、ガイルがアーマニをここに連れて帰ってきた時の焼き直しだ。

 確かにそれが実現できればフォルト王国としても弱腰と嗤われるようなことにはなるまい。

 ただし。そこまですれば使者は生きて帰ってこれないかもしれないと王も悩む。そこへ提案者である老伯爵が更なる決意を口にした。

「その狼藉者どもを献上品として送る使者には、是非わたくしめをお選びいただきたい」

 さっと片手を胸に当てて頭を下げた。そうしてそのまま心の丈を述べる。

「我が国に騎士団を送り込み大事な国宝を狙う不届き者を放置してはフォルト王国の名折れです。しかも命を奪われたのは我が近衛師団に所属し若い命。これを許すことはできませぬ」

 そこまで言い切った老伯爵は顔を上げて強い瞳で王を見つめた。

「生きてフォルトへと戻れぬかもしれぬぞ?」

 その瞳をまっすぐに見返して王が問う。

「この老骨、最後の最後までお役に立てて戴けるなら本望」

 こうして、この件について近衛師団長サンク・ゼイルに全権が託された。


 そうして旅立っていったその老伯爵は、その大役を見事やり遂げた。

「『先に届けた剣以外にもまだあるのだ』と、『遺体も何体もあるぞ』とジャオユの謁見室で言い切って、近隣諸国へその狼藉を触れ回ると大音声を以って大見得を切ってやりました。大変気持ち良ようございました」

 意気揚々と帰国してきた老伯爵の第一声はそれだったという。


「近衛師団長のお陰で、『きちんとした調査を行い、かならず納得して戴ける処罰を行い報告する』というジャオユの言質は取れました」

 ぴらりとジャオユの印璽が入った書状を目の前に差し出される。そんなものを軽々しく持ち出していいのかと思っていたガイルだったが、続けられた宰相の言葉に、ガイルは思わず吹き出してしまった。

「まぁ、我らがその手を下さなくとも、あのふざけた王太子はすでにその罰を身に受けたようですがね」

 その件については、すでにガイルも自分の部下から軽く報告を受けていた。

 数多の令嬢を架空のごり押し婚約者の名の下に口説き落としていた王太子だったが、ついにそれが嘘であり、それどころか同じ口説き文句で複数の令嬢を落としては弄んでいたということが明るみに出たのだった。

 まぁその情報をジャオユ王国で流したのは、フォルトの間諜とガイルの部下だったが。

 そうして、令嬢達に詰め寄られたリニアは、『あんな冗談を本気にする方が悪い』と開き直り、ある夜、王城で何者かの手によって刺されたらしい。

 ただし、その事件が王城の中であったこともあり医師の手当てが早かったこともあって命に別状はなかった。

「ところで、リニア王太子は廃嫡を?」

 外交官として他国の情報を仕入れ国元へと送ることは大切な仕事だ。

 だから、疲れた様子の宰相がガイルにそれを流してくれるのは恩人に向けての御礼であろう。決して、あまりの顛末に誰かに愚痴を言いたくなっただけではない筈だ。

「はい。王となった暁には次代を持つことを望まれるのは必然ですから。それが為せなくなったからには、王太子取り消しだけでは足りません。王位継承権を持つことすら許されない。廃嫡は当然の事でしょう。それに伴いアーマニ様への打診も無かった事にして欲しいと謝罪の書状が届きました」

 命に別状はなかった。ただ、男性としての機能を完全に失っただけだ。

 そこが切り取られたのは狙ってなのか偶然なのか。

 もし偶然だとしたら犯人はかなり背が低いことになるが、犯人が捕まっていない現状ではどちらによるものなのかは判らなかった。

 そうして、王城ではその犯人を捜すことに熱心ではないという。フォルト王国からの通告を受けての騎士団による戦争を仕掛けたといわれても仕方がない不法行為についての調査が優先されてしかるべきであるし、最近王都で囁かれている王太子としてあまりにも不名誉な噂のせいかもしれないし、その犯人に対して憐憫を持つ者が多かったからかもしれない。

 その内のどれが理由だとしても、王太子たる資格を完全に失った失意の王子に心を寄せる者は誰もいなかったということだ。

「アーマニ様との婚約が正式に成った後でなかったことは神に感謝します」

 出会わせないでくれればもっと良かったといわんばかりの宰相の言い草に、今度こそガイルは大きな声で笑いだした。



「聞いてください、ガイル様。ジャオユ国との婚約が正式に不成立になりました!」

 宰相から報告を受けた翌日、季節は冬に差し掛かり空気は刺すように冷たく空は鈍色をしていたが、春の陽射しというよりまるで真夏のきらめきのごとき満面の笑みを浮かべて、アーマニはガイルが与えられた客間へと駆け込んだ。

「アーマニ殿下。それはそれほど破顔されるようなことなのでしょうか」

 表向きには、隣国王太子との婚約の不成立だ。

 あちらから打診されてのものであり、内々にでも一度は直接顔合わせをした相手から断られるなど、本来であれば不名誉なことだ。それでも。

「いいのよ。あの王太子って本当に最悪で。男としても未来の国王としても最悪の最悪で最低だったのだから。本当なら、ばしんっと一発、張りてでも蹴りでも入れてやりたい気になったわ」

 初めて会ったあの秋の日の事を思い出したアーマニは、大きな瞳を半分にして眉間に皺を寄せて吐き捨てた。

 あのピンクのドレスは今見ても素敵なデザインだと思うけれど、二度と着たくないと思ってしまうほど最悪な記憶と結びついている。

(──でも)

 こっそりと、アーマニはガイルの姿を盗み見る。そうしてすぐに視線を反らした。

 あの日、最悪王太子とのことが無ければ、自分はガイルと出会わなかっただろうと思うと、それだけは感謝したくなる、気がした。

 勿論、自分を守って人が死んでいる。襲ってきた者も死んだ。

 だからそれについて大々的に感謝する訳ではない、けれど。

 ただ国交を求めてやってきただけの外交官としてのガイル・リーディアルについて、これほどアーマニが詳しく知ることは無かっただろう。

 人の関わりというものは不思議だ。

 同じ人間同士でそこにいても、ちょっとした違いで知り合う可能性はゼロになったりゼロじゃ無くなったりする。

 辛い体験を共に乗り越え、その心の在り方について教え導いてくれた人との、この出会いには感謝したい。

 生き残ったことについて膝を抱えて後悔し謝罪し続けることはむしろ命を賭けて守ってくれた人達に対する冒涜である。そんな風に考えられるようにもなった。生き残ったその後の人生を意味のあるものにするのだ。

 その為の努力を、アーマニはする。

 それがきっと、命を掛けて自分を守ってくれた人たちへの正しい感謝の伝え方だと思った。

「そうですか。まぁ、実際のところ、私もアーマニ様のその意見に同意します」

 にやりと笑ったその人に、その考え方を受け止め方を教えて貰った。

 だから、今、こうしてアーマニはここに立っていられるのだ。

 自らの判断が悪かったせいだと、躓いて動けなくなるところだったアーマニに顔を上げることを教えてくれた人。

「あはは。ガイル様から見ても、あの王太子は落第ですか?」

 その人が、同じ判断を下してくれたことが、ただ嬉しかった。

「落第以下ですね。王太子としてだけでなく、人として駄目かと」

 その言葉に、アーマニは再び破顔した。

「そこまで?」

「特に、アーマニ殿下の配偶者としてこれほど相応しくない者はいないとすら思っております」

 ぎゅっ。

 心臓が、掴まれたのかと思った。

 違う。掴まれたんだ、とアーマニは思った。顔が、驚くほど熱くなる。

「そ、そうなの? どん、どんなところが、かしら。ちがう。えっとわ、たくしには、どんな方が相応しいと?」

 完全に不審者である。

 緊張して言葉が途切れ途切れで意味不明寸前だ。

「そうですねぇ。どんな、ですか。アーマニ殿下に限ることでもないですが、婚姻相手を探すなら、是非心を繋ぎたいと思える縁を探して戴きたいと思いますね」

 期待した言葉と違うものが返されて、アーマニは肩透かしを喰らった気持になった。けれど、それでも。

(ガイル様と、心を繋げられたら、どんなにいいだろう)

 とくん、とくんといつもより高鳴る胸の鼓動と、視界の先で震える指先が、自分の心の在り処を、アーマニ自身に見せつけていた。





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[気になる点] 誤字:とは ガイルへの治療はその辛辣な言葉をは裏腹に始終恭しく丁寧なものであった。
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