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2。

 


「ひめさま、その表情はこの国を背負って立つと決心した未来の女王候補としても、隣国の未来の王妃としてもどちらにしても相応しくないと思われませんか?」

 ガタガタと揺れる馬車の中、目の前に座る乳母兼教育係であるサリーから窘めるような声が掛けられたアーマニは、「はぁい」と投げやりな返事をして更にサリーから不評を買った。

 いきなり王位継承権第二位という地位を背負うことになった反動が、小さな頃からずっと傍に居てくれた乳母と二人きりになったことで一気に表に出てきたのだろう。アーマニの態度はすっかり元の甘えた二の姫のそれに戻っていた。

 でも、そんなにも拗ねた態度になってしまうのも仕方がない事だとアーマニは思うのだ。

 出掛けようとした所で届いた隣国王太子からの手紙。これがまた酷かったのだから。

 姉姫の婚約に対する使者を受け入れること。それ自体はさして隠そうともしていない情報だ。隣国へ洩れても当然ではある。

 しかし、そこに邪推が入ることでその情報は歪んで元の形に受け取ることはできなくなるものだ。

 彼の国は先にアーマニへ婚姻の打診をしたのは我が国なのにどういうことかとねじ込んできたのだった。


 フォルトとしては本決まりになった訳でもない姉姫の婚約について勝手に他国へ説明する訳にもいかず、「謂われなき非難に困惑している。他国との国交について貴国へ説明する責はない」と返すしかないが、それすらアーマニには業腹だった。

 アーマニからすれば、「馬鹿か阿呆か」と直球で返してやりたかった。

『アマーリエの婚約が成りさえすれば、お前を隣国へ嫁入りさせる訳には行かないことについて説明も成る。それまで押さえなさい』

 とはいえ、弟王子が生まれた今、本当にそれだけでアーマニの婚約を阻止できるかはジャオユがその説明を受け入れるかどうかに掛かっている。

 なにより実際に婚約の打診を先に申し入れてきたのはジャオユなのだから。どちらかの姫が嫁入りできるとすれば自国こそ優先されるべきだと強く出られたら、その説得には苦慮することになるだろう。

 姉姫の幸せのためにも、なによりアーマニの幸せのためにも、父王にはその舵を慎重に取って欲しいものだとアーマニは揺れる馬車の中で不機嫌に思った。

「ひめさま。そのように心配されなくとも、賢王として名高い父王様が、判断を違える事などあり得ません。きっとお二人の姫様どちらにとっても最良となる選択をして下さいます」

 そう宥める乳母の言葉に、アーマニは少しだけ心を持ち直して姿勢を正して座り直した。

 その時だった。

 馬車の速度がいきなり上がる。脇を固めていた近衛がその編隊を変えたのか聞こえてくる蹄の音の位置が変わったのが判った。そうしてコンコンココン、と御者席から合図が伝えられた。

「襲撃?! ひめさま。ご準備を」

 その言葉に、座席の下から軽い防具を引っ張り出し身に着ける。

 外套としか見えない薄手のマントは、しかし特殊な金属が織り込まれており刃は通らない。内側には小さなナイフや、ロープや包帯代わりにもなる細長い布や水を通さない袋などといった装備が表からは判らないように縫い付けられている。

 靴も華奢なそれから走りやすいブーツに履き替えた。

「いいですか。今から貴女様の使命は悪漢の手に落ちないことです。必ず逃げ延びてください。誰が犠牲になろうとも、ひめさま自身の手で、ひめさまのお命を守り切る、それだけを一番にお考え下さい」

 何度も聞かされてきたサリーの言葉にアーマニは黙って頷いた。

「でも、大丈夫ですよ。我が近衛が野盗ごときに遅れを取ることなどあり得ません。この装備も、訓練のひとつだとお考え下さい」

 そう言って、アーマニを安心させようと微笑んだ時、ついに馬車の周りで激しい剣戟が始まった。

 ガン、ゴンと激しく何かがぶつかり合う音と誰かの悲鳴。

 そうして、ガン、という衝撃が馬車に伝わり、箱馬車本体が斜めになる。

「ぐわぁぁ」

 御者をしていた従者が倒れ込む悲鳴が聞こえてきた時、馬車自体が倒れて停まった。

「ひめさま。使命、かならず果たしてくださいませ」

 そう囁いたサリーナが天井についた扉から飛び出していった後、教えられた通り10数えてから床下にある扉を静かに開けてアーマニは身を低めて走り出した。

(はあはあはあはあ。サリー、サリー。貴女を囮にしなくてはいけないなんて、聞いてないわ)

 涙で曇る視界で、ただひたすらに、樹々の生い茂る繁みへと走り込む。

 足元は降り積もった落ち葉が重なりふかふかで走り難かったが、それでも懸命に足を進める。

 しかし、後方でサリーナの悲鳴が聞こえた瞬間、アーマニの足が勝手に止まって振り返った。

 その時、視線の先で、野盗の男の昏い瞳と目が合った。

「ひぃっ」

 足が縺れて滑って転ぶ。手や膝は土に塗れ、頬は涙で濡れ髪も乱れてぼろぼろだ。

 それでも、サリーナに言われた言葉を胸に、一歩でも離れようとアーマニは努力した、つもりだった。手も足も震えてまったく動けない。無為に足掻く手は濡れた落ち葉を掴むだけでその身を前に進む力にはなってくれなかった。

 がっ。

 身に着けた外套ごと、アーマニは吊り上げられるようにして捕まった。

「見ぃつけた」

 そのまま引き摺られるようにして馬車のところまで連れてこられる。

「いやっ。放して。手を離しなさい。わたくしを誰だと思っているのです」

 アーマニは懸命に身体をくねらせて男の手から逃げ延びようとしたけれど、その手はがっちりと外套と髪を一緒に掴み上げていて、痛くて苦しくて起死回生の一手となるようなことは何もできなかった。

「ははは。知ってるよ。アーマニ・イル・フォルト第二王女様だろう?」

 ぐいっと歯をむき出して威嚇される。

 その異様にぎらついた顔に、アーマニは息を呑んだ。

「大人しくしていろ。今すぐお前の命を取ろうとは思っていない。だが、騒いだら、その限りではないぞ」

 脅しつけられた言葉の意味を、アーマニは懸命に考えた。

 その時、

「ひめさまー!!」

 サリーナの小さな身体が、アーマニと男の間に割り込もうと走り込んできた。

「サリー!!」

 助けがきた、と思った瞬間に、その小さな身体が後ろにいた男によって斬りつけられた。

 ばしゅっという音と共に、アーマニの視界が、サリーナの身体から噴き出した血飛沫で一杯になった。

「ひめ、さま…」

 そのまま、サリーの身体が崩れ落ちる。そのサリーナを男が苛立ち紛れに蹴り飛ばした。

「サリー!! サリー!!! いやーー!! サリーー!!」

 ごん、と太い樹の根本あたりに当たったサリーナの身体がぐったりとして動かなくなった。

「五月蠅い、黙れ!」

 ばしっと頬を張られた。初めて受けた暴力の衝撃に、アーマニは黙った。口の中に血の錆味が広がる。

 猿轡を噛まされ縄で拘束された上に袋を掛けられた。狭い布の空間で無理な姿勢で持ち上げられる。痛みに抗議の声を上げたけれど、猿轡の嵌まった口からはくぐもった呻き声にしかならなかった。

「何も残すな。奴らの命もだ。いくぞ」

 粗い布越しに聞こえてくるその声は、絶望の色にアーマニの心を染め上げた。


「止まれ。そして静かに。…微かだが焦げたような臭いがする。それと誰か、女性の声がしないか?」

 遙か遠くにある、オリハ・リコンが産出するという噂のあるフォルト王国との国交を求めて旅立ってから半月。ほうほうの態で慣れない海路を超えて、ようやく王都近くの王領地の関所をくぐり、王都へと続くと説明された森の中を通る街道を進んでいる時だった。

「…森の中からのようですね」

 ショーン・ライドから返ってきたその言葉に頷くと、ガイル・リーディアルは同行していた文官ライル・ノールトに向かって「護衛は一人残す。馬車の中で待て。もし一刻待っても我らが戻らなければ先ほどの関所まで戻り衛士に伝えよ」そう声を掛けると、残りの部下を引き連れて急ぎ森の中へと進んだ。



 声は既に聞こえなくなっていた。しかし、漂ってくる臭いを頼りに森の中を黙って進む。

 少し開けた場所に、火矢を射かけられ焼け焦げた馬車の残骸が残されていた。

 護衛とみられる兵士の遺体だけでなく馬にまでトドメが刺されている。その徹底された荒らされ方にガイルは眉を顰めた。

「生き残りを探そう」

 先ほどまで聞こえていた声は女性のものだった。しかしここに見える遺体は近衛らしい男性だけだ。どこかに隠れ潜んでいる可能性がある。もしくは失血のせいで気を失った可能性も。

「ガイル様、女性です。まだ息があるようです」

 貴族位にあるであろう年配の女性だ。このような惨劇に巻き込まれていいような人物だとは思えなかった。簡素ながら上品な仕立ての外套もデイドレスも、今は血と土に塗れていた。

 肩から背中にかけて大きな刀傷がある。外套の上からバッサリと斬られたそこから流れ出る血の量は服の破れ具合からするとかなり軽微にみえるが、それだけでなく手と足の骨が折れて変な方向を向いているのを確認して眉を顰めた。

「外套とドレスの上からの、この刀傷。かなりの手練れだな」

 盗賊ではあるまい。綺麗すぎる傷跡は、きちんと手入れされた武器により訓練を受けた騎士がつけたように見えた。

 とりあえず旅の支度の中から簡単にでも傷の手当てをしていると、女性が意識を取り戻し焦った様子でそれを口にした。

「誰か、だれ…か、ひめさまを、助け…」

 それだけ言うと再び気を失ってしまった。その掠れた声で告げられた言葉に、そこにいたすべての男の顔が引き締まった。

 この周辺に『ひめさま』の言葉が似合う存在は、命を持つ者も大切なそれをすでに失ってしまった者も見つけられなかった。

「無法者が連れ去ったか。騎士が守るべき女性を襲い攫うなど…許せぬ」

 生々しく残る争った跡の残る馬車の周辺から東の方向に向かって、何頭もの蹄の跡が残されていた。

 慌ただしく逃げ去ったであろう相手に追いつけるかは判らないが、それでもこの女性が命の灯が消えそうになりながらも助けを求めた『ひめさま』と呼ぶ御方を救える可能性があるならそれに賭けたかった。

「急ぐぞ。女性には申し訳ないがここに人員を割く訳にはいかない。その代わり我が命を賭けて『ひめさま』をお救いしよう」

 既に聞こえていまいが、それでも誓いの言葉を口にしてガイルは馬を走らせた。




 

 アーマニが入れられた袋は、どさりと馬の背に乗せられて運び去られていく。

 硬い鞍が脇腹に当たって痛い。しかし、残してきたサリーナや近衛、御者たちのことを思うとそれどころではなかった。

(悔しい)

 もっと何かできた筈なのに実際には何もできなかった自分が悔しかった。これでも真面目に訓練を受けていたのかとこれまでの自分を振り返った。

(泣くな)

『ひめさまのお命を守り切る、それだけを一番にお考え下さい』

 アーマニは、サリーの言葉を思い出して自分を叱咤した。そうだ。まだそれに失敗した訳じゃない。

 何もできない小娘と侮ったのか、腕は身体ごと縛られたけれど手首や足首までは縛られていない。身体の位置を変えればこの自由を奪う縄も解ける筈だ。

 馬の背にうつ伏せに乗せられたまま、身体を捻り縄が緩む場所を探す。みぞおちに縄が当たり余計に苦しくなったり何度も挫けそうになったものの、肘の位置がようやく身体の前まで来たところで、その腕が自由になった。

(やったわ!)

 慎重に、外套の内側から小さなナイフを取り外し掌の中へ握り込んだ。

 ──馬から下ろされたら、その場で男のことを袋ごと刺す?

 しかしそれでは袋の上からまた捕まえられるだけかもしれない。

 ──袋から出された時を狙う?

 しかしすでに牢などに入れられているかもしれない。

 手に入れた武器をどう使うのが効果的か、考える度に頭の中で反論が浮かぶ。

 それでも、どこか遠くに連れ出されたり建物の中に閉じ込められる前になにか行動に移すべきだと結論づけた。

 まずは、自分を包み込んでいるズタ袋にナイフを斬りつけてみる。しかし意外に頑丈なのか穴を開ける事は出来ても、切り開くことがどうしてもできない。

 そうこうしている内に、口を縛っている紐に気が付いた。

 その紐に何度もナイフを突き刺して、ついに切ることに成功する。これならなんとか内側から開ける事も出来そうだ。

 その時、袋の上から背中の辺りを殴られた。

「なに動いてやがる。大人しくしてろ」

 衝撃に息が詰まる。それでも、その痛みは却ってアーマニの闘争本能に火をつけた。

(やるわ!)

 そう心に決めたアーマニは決心が鈍る前に、その小さなナイフを馬上の男の太腿辺りに向けて突き刺した。

「痛てぇぇっ」

 ぎゃあっと馬上で男が叫ぶ。その声に怯むことなく、アーマニは目を閉じて何度もナイフを突き刺した。

 ついに馬の脚が止まり、アーマニを支えていた男がそこから転げ落ちる。

 そうして一緒にアーマニの入った袋も、その男の上へと落ちた。

「ぐえっ」

(早く、早く)

 袋の口を、内側から引っ張り開こうとするも何かが引っ掛かっているのかなかなか開かなくて、アーマニは涙が出そうだった。

 仲間が戻ってくる前に、せめて袋から出たいのにと焦れば焦るほどアーマニの指は縺れて上手く動かなかった。

「くそっ。ふざけやがって」

 怒鳴りつけられたと思うと、袋に入ったままのアーマニが高く持ち上げられた。

(捕まった! 逃げられなかった)

 慌てて藻掻くも、すでに男はその腕にがっちりとアーマニの入った袋を抱え込んでおり逃れられそうになかった。

「おい、いい加減にしないと本当に殺すぞ?!」

 先ほど指示を出していたリーダー格らしき男の怒った声がする。

 悔しさにぎゅっと目を瞑る。アーマニは、自身の失敗に目が眩んだ。

 そんなアーマニに、「ふん。じゃじゃ馬め。こんな小娘を王妃と仰いで堪るものか。お前を国母とするなどお飾りですら不愉快だ」となじられた。

 その言葉がアーマニの頭の中で意味を成すと、勝手知らずにアーマニの身体を、恐怖が怒りで押しのけて本能のまま突き動かした。

「っっ!!! !!!!!」

 ズタ袋の中で、先ほどより一層激しく暴れまわる。

(ふざけるな。ふざけるな、ジャオユめ!!)

「っ!? 大人しくしろと言っただろうが!」

 部下に抱えさせたままリーダーの男が苛立ちまぎれに、ついに暴力を揮おうとその腕を上へと掲げた。その時。

 とすん。

 アーマニの見えない場所で、振り上げられたその手首に、ショーンが射った矢が刺さる。

 ちいさくガッツポーズをとった部下にガイルは手で合図を出して、先回りして罠を張らせる。

「ぐわぁぁぁっ!! だ、誰だ?! 後ろから奇襲をかけるなど卑怯なっ!」

 利き腕に刺さった矢を強引に引き抜いて、リーダー格の男が振り返りざまに叫んだ。

「旅の馬車をいきなり襲った卑劣漢が何をいうか。か弱き女性に暴力を揮っておきながら騎士を気取る。滑稽すぎるわっ!」

 一足飛びに近づいたガイルが無造作に剣を揮った。

 ガン、と鈍い音が響いて馬上にいたリーダー格の男はその衝撃に落馬した。

「っくあっ!」

 もんどりうって転げまわろうとする胴を踏みつけにすると、男が腰に佩いた剣を吊るすベルトを切り、ガイルは剣を森の茂みに向かって蹴り飛ばした。

 そのまま首のすぐ横に剣を当て、ガイルは眼光鋭く凍ったように動けなくなっていた悪漢たちに向かって言った。

「ほう。ジャオユの紋章、それも紋章を囲む剣と盾…貴様、騎士団の者か」

「どうしてそれを?!」

 今、男たちが着ているのは獣の皮で出来た上着とズボンだ。そうして細く切った革を脛や腕、頭に巻いて防具の様にしている。その様は確かに野盗らしくみえる。

 しかし、ガイルの足の下で苦しげに顔面を蒼白にしているリーダー格の男の上着の下からは、どうみても安物ではない軽鎧の鈍い輝きが覗いていた。

「鎧に刻印された花と蛇が絡まったその紋章がどこの国のものかくらい、誰でも知っているさ」

 ジャオユ国とは、ここフォルトの東隣に存在する海運国家だ。

 アーマニの婚約者である王太子が住まう国。つまりはこの男たちは未来の王妃候補を襲ったという事だ。それも、それを判っていて、狙ったのだ。

「お前達が脱走兵か正規軍に所属したままなのかは知らないが、どちらにしろ正規ルートで抗議する必要があるようだな」

 ガイルの言葉に、未だ踏みつけられ動きを封じられていたリーダーの男が叫んだ。

「俺の事は構うな! 行け!! その宝、かならずあの御方の下へ! 届けよ!」

 そうしてぐっと首元に翳されていた剣を両手で掴むと、己の首をそこへ差し出そうとした。

「ぐあっ」

 旅の途中でも手入れを欠かしたことのないガイルの剣を両手で力任せに掴んだリーダー格の男の指が、ばらばらになって零れ落ちる。

 そこから血か吹き出し生じた強い痛みに怯んだ男の動きが止まった。間一髪、ぎりぎりのところでその首に剣が突き刺さる寸でのところで剣とは反対の方向にガイルの足がその首を蹴り飛ばした。

「…ぐぉ…」

 気を失っただけで息があることを確認した男は慌てて自分の馬に飛び乗った。

 そうして、逃げたズタ袋を持った男を急いで追いかけようと馬の首を回した先で目にしたものは、

「うわぁあぁぁぁ!」

「どう! どう!!」

 ヒヒィーン、ヒヒィーンという馬の哀れな嘶きと、激しく転んで喚き叫ぶ、怒声飛び交う阿鼻叫喚の様相だった。

 先回りしていた男の部下が、樹と樹の間にロープを張り馬の進行を妨げたのだった。

「『ひめさま』は、ご無事か?!」

 慌てて乗ったばかりの馬からガイルが飛び降り駆け寄ると、

「任せて下さい、ちゃんと確保しておきましたよ」

 そう自慢げに言うショーンの腕には、藻掻き暴れるズタ袋が抱えられていた。

「先頭の馬が転んで慌てて停まった時にちょいっと奪っときました」

 自慢げに戦利品を掲げてみせる部下に向かって男は小さく息を吐くと、

「よくやったといいたいところだが、一緒に落馬されたらどうするんだ。しかしまずは取り返せたようでなによりだ。捕り物が終わるまで端でお守りしてくれ」

 そう指示を出すと、ガイルはいまだ暴れる馬でいっぱいのロープで区切られたそこに剣を握って走り寄っていった。




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