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1K -「彼」と内臓-  作者: はにわ人間
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自分の死体を自分で眺めているような感覚だった。


2日前に退去したばかりのマンションの元自室の物件情報を眺めていると、そういう不思議な感覚に襲われる。

むしろ、居住者たる「僕」という内臓を抜かれて横たわる「彼」の死体と言う方が適当だろうか。


今どきの不動産業者というのは商売熱心だ。

もう退去後の清掃も終わらせて中途半端な時期に空室となった商売道具をネット上の商品棚に陳列していた。

面白いもので、2日前に内臓抜きのミイラと化した「彼」は業者に死化粧を施されて賃料六万円、1DK、閑静な住宅街にありながら利便性に優れた優良物件になっていた。

「僕」が住んでいた2日前までは賃料五万三千円、1K、駅から遠くて何処に行くにも不便な立地の安アパートだったから、これは化粧というより整形だろう。

業者の明らかな誇大広告に誘われて次の「彼」の内蔵になるのは一体どんな人だろう。


大学生 サラリーマン OL フリーター

或いは「僕」のような何者でも無い人だろうか?


そう

「彼」の胃袋に入っている頃、「僕」は何者でも無い人間だった。

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