突っ込まれるハーフエルフ
ガサゴソと物音が聞こえ、ウェイルは目を覚ます。顔を上げると近くに寝ていたユウジンの姿がなかった。
ああ、もう起きているのか。と、何故か負けたような気持ちになりながら腰を上げる。無駄に長いせいで声が反響しているのだ。いや、声と言うより物音なのだが。
入り口の方へ進んでいくと陽の光によって照らされたリック達の姿が見えた。どうやら松明は寝ている間に消えてしまったらしい。どっちにしろ暗くなる前に出る予定だったから問題はない、そう考えながらリック達の方へ向かっていく。
「あ、結構物音聞こえてたか? 聞こえてたらスマン……」
「だから静かにしようって言ったじゃない……」
「元はと言えばお前が腹へったなんて言うからだろ!? 何で俺のせいになるんだよっ!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着きましょうよ、ウェイルさんも呆れて声が出ないって感じですし……」
いや、呆れた訳ではないんですけどね? こんなに喋る人達だっけと、思っただけだね。
と、心のなかで呟きながら地面に並べられた小道具を見る。サイズ的には小さいが中の色を考えると結構値が張りそうな濃度の濃い回復のポーションや解毒の薬草などがあった。
「これって全部リックさんの物ですか?」
「おう。流石にリュックを背負うのを忘れたから少なくなっちゃったけど“最低限”は揃っている筈だぜ」
「その手に持っている盾を売って荷物運びとかの方が適職じゃないのかしら」
「結構辛辣何ですねルゥさんって……」
「私の事は呼び捨ててで良いわよ。良いわよって言うかあんな弓の腕を見せ付けられたらこっちが敬語使いたくなってくるんだけどね」
「それは勘弁を……」
「馴れ馴れしいなら変えるけど……って、まぁ、それなら私は私でいくわ。ウェイルもタメでしょ? もっと砕けた感じで良いのに……」
「タメって使う人とタメって変な感じですけどね……個人的にはこれが一番落ち着くので。すいません」
何故、荷物の話から敬語の話になるのかが疑問なのだがまぁ、童顔な人に敬語で話されるって変な感じがするのかな。自分で童顔って……い、いや、まだ成長期だから……望みはまだゼロではない。
なら、俺達は変わらないな。な、先輩? と、笑顔が眩しいリックだったのだがポーチに道具を仕舞うときに謝って一瓶割っていたことを考えるとプラマイゼロ寄りのゼロだな。寧ろマイナスに乗り掛かってカッコ悪いまであるが場は和んだ。
これがリックの回りに人が集まる理由か、と思った。
道具を仕舞い終わり、朝御飯を軽く済ませ、洞窟を後にする四人。
小鳥の囀りが森に響き渡る。ここ数日、雨が降っていなかったせいか乾いた地面を歩く、ザッザッと音とリックの鎧が擦れ合う金属音が囀りに続くように聞こえてくる。
出会った頃の軽い足取りは無なかった。何度かあった会話も今では無かった。無い無い続きなのだが以前よりも仲は断然に深まっているのだ。恐らく。重い足取りと重い空気を取り払うべく、ウェイルは口を開く。
「ちなみに魔獣って何か知ってますか?」
魔獣の話題とは今日の天気の話題と肩を並べるほどよくある話なのだ。それほど魔獣の話は話しても尽きないし、それに関わる武勇伝なんて腐るほどあるのだ。今回は魔獣の討伐、と目標を変えての事だったので聞いてみることにしたのだ。初心者、と見た目でそう思ったから。
そんなウェイルの問いに答えたのはキャラかぶりのユウジンだった。
「えっと、何らかの現象によって急激に集まった際に生まれる魔の集合体、と父さんから聞いたことがあります」
「そう。正解だね。その何らかの現象ってのは大抵はドンパチ魔力を使う戦争とかが大半って感じですね……。うん。まぁ、実際の所は解明されてないって感じらしいです」
「えぇ、結構分かってないじゃねぇか……」
「ま、うん」
「いきなり適当じゃねぇかよ」
軽く、リックに突っ込まれもしたがその他は特に問題もなく、道無き道を進んでいた。