眠たかったハーフエルフ
後書きに書いたの説明が長いッス。多分本文に出てくる……かは謎ですが読み飛ばしても大丈夫なやつです(見てね)
変に観覧数が少ないのに深夜に投稿するよくわかんない作者です。まだ、コレっ! と言った作品ならではの物はないせいだと思うんですよね……
あ、前書きも長いですねっ!
リック……俺は名もない小さな村の代わり映えのしない両親の元で育った。いや、名前はあったな。
代わり映え、て言ったら変な感じなんだけど父親は世界中を見て回った伝説の冒険者等ではなく、母親も全ての魔法が使える著名な魔法使い、とかそんなのではなかった。よくある普通の家庭なのだ。
別にそれには小さい時はもっと両親が、と夢を見ていたときはあったのだが今になって考えてみれば文句どころか感謝しかないのだ。
だが、普通故に普通じゃないことに憧れてしまうのだ。
十歳の頃の記憶は無我夢中に剣を振って家の回りを足り回った記憶しかない。小さい頃に聞いたおとぎ話に出てきた勇者の圧倒的な力をもってバッタバッタと敵を薙ぎ倒していく姿に憧れていたのだ。
それは十五になった今でも続いているし、その村にいた天才であるルゥの影響でもある……って、今では思っている。目の前にいる天才を見て「自分にもそんな力があるんじゃないのか……?」と、夢物語を見ていたのだ。
実際は鍛えた分の実力しか身に付いていないし、唯一の幸運はルゥが俺の恋人って事とユウジンに出会えたことだ。
最初は人数集めが一番の理由だったんだけど意外にも剣の腕は良いし(でも優柔不断)、顔も整っている。
優柔不断だと思っていたんだけどなぁ……
「完全にこの場面では一番輝いているよな……何気にウェイル……さん? も、結構弓の扱いが上手いし……」
流石に喧騒の中で寝ていられるほどリックの肝は据わっていない。
途中で目を覚ましたのだがどこか嫌な予感をビンビンに感じながらテントの隙間から覗いていたのだ。その後はウェイルの煙幕に合わせてルゥと一緒に逃げ出したのだ。
勢いよく飛び込んだのは良いのだけれども何も確認をしていなかったので後方の確認を、と明かりの火で松明を燃やし、一人で進んでいく。
倒れている三人を置いて行くのは見事な鬼畜っぷりなのだが実際は走り疲れているだけなのだ。戦おうと思えば戦えるのだ。その場合は疲労を通り越しての三途の川が見えてしまいそうな気もするが完全に他人の事だと、割り切って考えているウェイルだった。
「隠れ家的な感じだから入ってくるって以前に見つけられないと思うんですけどね」
意外にも奥までの空間がある道を歩きながら一人、呟く。寂しさを紛らしているのだろうがこの場合は完全に当然、突拍子もなく呟く気持ち悪いやつになってしまっている。聞こえる範囲には人がいないことだけが救いだ。
松明の明かりを動かしながら回りを確認していく。道中に何かの動物、熊かそこらの動物の骨が落ちていたり、目にしたことがない奇妙な形の骨が落ちていたりと犬でもいたら喜びそうなものだが、生憎今のパーティの中には犬はいない。まぁ、外に行ったらいることにはいるのだろうがこの場合は骨ではなくウェイルを始めとした新鮮な肉にかぶり付くと思うので完全にどうでも良いものしか落ちていなかった。
骨骨骨、と標本でも作るのかな? と、どこを向いても二、三本は落ちている骨にうんざりしながら歩いているとやっと行き止まりが見えた。
結構、奥行きがあるのだが何故、廃墟みたいな感じなのだ? と、疑問は尽きないのだが疑問で命は救えないので切り捨てて来た道を戻り始める。
数分と、散歩にしては短い時間で入り口まで戻ってきた。
倒れていた三人は呼吸も落ち着いたのか倒れた姿勢から壁に背を付けて座っている姿勢になっていた。ある程度落ち着いたのかこれからどうしよう、と家出で迷子になってしまったかのような表情をしていたのだが一方、ユウジンは嬉々とした表情でウェイルの方へ走ってきた。
「あ、ありがとうございますっ! 今までなんと言うか勇気がでないと言うか……えっと、余り口に出し辛いんですけど僕に勇気をくれてありがとうございます!」
「別に僕は特質して変わったことはしてないと思いますけど……でも、感謝は素直に受け取りますね」
完全に放置プレイで後ろで援護と言う名の舐めプだったので素直に受け取れないどころかそんなプレイに感謝してくるユウジンに軽く引いてしまっていた。ほら、何故か客観的に自分を判断できるところが一番覚めきっていると思うところだ。
建前と本音、と早い内から身に付けたいと思うウェイルなのだった。
何故か興奮しているユウジンを聞き流しながら三人の表情を軽く見る。思った感じでは、最初の頃に比べて「え、こんな奴で大丈夫なん? 舐めてんの?」的な表情が無くなっていたことに気が付いた。
「(まさかとは思うけどさっきの戦いで変わったとかじゃないよね? それなら恥ずかしいですけど……)」
手を抜いた試合で憧れの視線で見てくる純粋な子供の表情(見たこと無いが)を想像してしまう。それが僕の限界じゃないんだぞ! 本当はもっと凄いんだぞ! と、声高々に言ってやりたいのだがそれだと逆効果なのだ。多分逆効果なのだ。
今の立ち位置では有能な同年代の先輩で良いのだ。そう考え、話を切り出す。
「これからの事なんですけど僕たちを襲った獣……の、主ですかね。魔物を討伐してみたいと考えているんですけど……皆さんの考えはどうですか?」
「魔物……お父さんが言ってたけど一筋縄では倒せないって聞いたんですけど……じ、自分はウェイルさんの考えで大丈夫です!」
「……別に俺も反論とかはないけどさ。実際に倒せる……いや、何でもない」
ルゥがコクりと頷いたのを確認する。
「まぁ、今すぐにって感じじゃないんですけどね。まだ暗いですし寝て朝を待ちましょう」
「あ、そう言うことなら俺とルゥとで見張るから二人は休んで良いぞ。ってより休んで欲しい」
「急にデレたリックに少し驚いてますけど……では、言葉に甘えて仮眠とってきますね」
緊張がほどけてきたのか重くなってきた瞼と幾分か重くなった体の欲に負けてリックの言葉に甘える。性格と口調が似て……はいないがそんなユウジンと仮眠をとることに。
ウェイルが薄い緑の髪に対し、ユウジンの髪色は黒色なのだ。身長もユウジンの方が拳一つ分高い。
毛布などは無いので壁に寄っ掛かってうずくまりながら寝息を立て始める。意外と夜は長い。
ハーフエルフ
エルフと他種族の血が混ざることによって産まれた種族の名称。エルフではなくてもゴブリンなどの見た目が色濃く出ていたのならハーフゴブリン、等と言われるのだがその場合は両親から色濃く受け継いだ部分を残して産まれた種族のハーフなのだ。
森の守護者として産まれ、性行為を必要としないエルフとは違い、ハーフエルフは生殖器が付いているのだが子を作るためには同種のハーフエルフか混血の種族との間でかできない。理由は特には分かっていないらしい。
その他に死ぬと寿命を全うして逝くことによって精霊樹へと生まれ変わるエルフとは違い、死んだらそのまま肉だけが残る。現世に肉を持った他種族と交わったのが理由とされている。未だに謎が多い種族なのである。