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射抜くハーフエルフ

 投稿しないと言ったな。アレは嘘だ。流石に全部消えたのは泣きましたけどね(笑)

 兄貴の息子達の仲間である三人から自己紹介を受ける。

 大きな盾を持ったリック、神官の弟子をしていたと言う村長の長女ルゥ、そしてウェイルに負けず劣らずな華奢な体だが身の丈ほどある刀を使うユウジン。

 一番の驚きであったリックが兄貴の息子でではなく、女の子と思っていたユウジンが兄貴の息子だったっていう非情な現実。いや、体が小さいことに仲間意識を感じていたとかじゃないからね? それで親を見て将来大きくなるかもしれないことに対して腹を立てた訳じゃないけどね?


 今からでも行こうか、とそんな雰囲気だったのだが軽くなったポーチを思い出し、素材の買い取りの受け取りついでに中身を更新することにした。


「すいません、買い取りお願いしていたのを忘れてまして……少し、時間が掛かるかもしれません」

「そっか……待ってれば良いか?」

「準備とかは大丈夫です?」

「ああ、それは元冒険者の親父が口うるさく言っていたから大丈夫だ」

 そう言って背負っていたリュックを見せる。パンパンだった。

 少し、悪いような気もするがその場を離れ受付の列に並ぶ。呼び掛けに答えられなかった、ってこっちも悪いのは分かるけど並び直すのは時間的に難しいよね……まぁ、それで列を抜かしたらこの列の人全員から袋叩きにされるのが落ち何だけどね。

 前に見た祭りにも似た大乱闘を思い出す。その後が流血騒ぎで後々大変だった事を知らないウェイルは一人、和む


「は、次の……って、何度か呼んだんですけど……」

「完全に頭から抜けてしまって……」

「もう……次からは気を付けてくださいね。よっこいしょっと……はい、これが換金したお金ですね。手数料として幾らか引いておりますので」

「はい、ありがとうございます」

 もっと人がいなかったらこの場で中身の確認をするのだが生憎と後ろにはまだまだ列が伸びていた。まぁ、冒険者ギルドが中身を誤魔化すことは無いと思うけどね。

 お金を受け取り、ギルドの中の建物に向かう。向かう最中でポーチの中を確認し、少なくなった物をリストアップする。紙に書くのではなく、頭に記憶するだけなのだが。


「(毒消しと……後は気付けのポーションかな? 後は十分な量あるし)」

 一階の受付を抜け、二階に続く階段を上る。防具なども売っているそうなのだが基本的には弓などしか使わないウェイルにとってしてみれば殆ど冒険者ギルドは道具屋みたいなものなのだ。何か違うような気もするが。




 十分に道具も揃ったことでパンパンになったポーチを満足そうに触りながらリック達の方へ向かう。ウェイル自身、初めてのパーティーなのだ。親元を離れたのが十四の時で一年とちょっとは一人で暮らしていたのだ。

 表情はあまり変わっていない様なのだが内心はワクワクで止まらないのだ。それ以上に面倒い、と言う感情が出ているのが今の現状なのだが。


 ウェイルに見せられた依頼はアゼフィと言う寄生生物の素材の採取なのだ。

 基本的には山などに生息し、鹿や猪などに寄生するのだ。寄生された動物は額に白く濁った目が生え、凶暴性が増すのだ。

 正直言って初心者がやるには荷が重たい相手なのだが初心者と言う枠から抜け出すためには絶対、対峙する必要がある相手なのだ。直線的な攻撃や、我を見失った攻撃を避け、見極めつつ相手を討伐するのが中級者に至る道なのだ。

 それの相手にはズンズが一番、丁度良い相手とも言えるのだ。



 人数が増えたことによって四十分ほど時間を掛け、森についた。正直、この森の中は腐るほど歩いてきたから何処に何が生息しているかは何となくわかるのだがそれでは意味がないと判断した。


「アゼフィは特殊な条件で出てくるとか無いから森の中を歩いていたら出てくると思います。道とかは大体覚えているので迷子になるとかの心配はしなくて大丈夫ですね」

 まぁ、それでも道を覚えるのが必然的何だけどね。

 道中はリック達の連携で倒していくのを後ろで見ながら混血のゴブリンなどの素材をある程度回収していく。完全に荷物運び的な立ち位置なのだがこれ以上楽な仕事はない、と内心喜びながら進んでいく。

 逆にリック達のウェイルに対する不信感が高まっていくのだがそれはウェイルには分からなかった。


 ある程度疲労感も溜まってきており丁度良い水辺を見付けたときにリックが立ち止まった。


「よし、ここで今夜は過ごそうか」

「賛成……ほんっと疲れて一歩も歩けない~」

「それを神官のばあちゃんが見たらまた杖で殴られそうだな……」

「その時はこうっ、杖で殴り返してやるわ!」

 談話をしながらテントを建て始めるリック達とは違い、ウェイルは基本的に外敵が少ない木の上で過ごしていたためテントなどのものは持っていなかった。


「(流石に一緒に入れて貰うってのは恥ずかしいし……今夜のご飯でも取ってきたら丁度良いかな?)」

 付いてきて回るだけだったのでご飯の準備だけはこっちがしよう、そう考えリックに話しかける。


「僕は鹿でも狩ってきますから準備をお願いしますね、リックさん」

 だが、返ってきたのは想像していた言葉ではなかった。

「いや、こっちは勝手に食べますから大丈夫ですよ。ほら、調理道具も揃ってますし。それに

準備して待ってたらウサギ一匹とかだったら流石にアレですもん」

「えーと、はい。分かりました。僕は周囲の確認とかしてますんでゆっくりしてもらって大丈夫ですよ」

 もしかして肉とか苦手なのかな? そう考えながら木に登る。固い質感と森の香り。懐かしいような気持ちにさせる木が僕は大好きなのだ。

 まぁ、肉はそこまで好きじゃなかったから狩らないって答えが出たことには少し、ホッとしているんだけどね。


 ポーチからドライフルーツを取りだし、かじる。ほのかな酸味と甘味が口に広がるが割りと高級品なのだ。バクバクと食べられないのが残念、と思いながら二つほど食べる。

 ゴブリンを狩ったときの弓は拾い物で既に売ってしまったことが悔やまれるが過ぎたことはしょうがない。背中に背負ったドデカイ弓を手に持ち、回りを見渡す。このせいで弓を買う必要が出てきたので財布も少し軽くなってしまったのだ。

 今回の依頼で懐を暖めよう、そう考える。




 リック達の食事が終わり、順々に寝始めた頃。遠くから獣が吠える声が聞こえ、ガサガサと何かが入ってくる音が聞こえた。


「(まだ遠いけど……って、火が消えてるじゃん……)」

 見張りの代わりなのか根っこに座って火の番をしていたユウジンが眠ってしまったことで火が消え、煙が上に上がっていく。

 この分だと茂みに隠れて見えないだろうな、と思いながら立ち上がる。眠っているリック達を起こすためだ。


 ユウジンを揺すり、起こす。


「……朝?」

「いや、敵ですよ。まだ、見えてませんけど」

「……え、敵? じゃ、じゃあ早くリック達を起こさないと!」

「それは僕がしますから。出来れば火を付けてくれないですかね? 視界を確保しないといけないですし……既に手遅れなのかもしれませんが獣は火が怖いですからね」

 そう言ってテントに手を掛ける。


「獣が走ってくるのが見えたんで起こしに来たんですけど……」

 月明かりしかなく、普通なら良く見えないはずなのだがウェイルはハーフエルフなのだ。昼間のように、とまではいかないがある程度は見えるのだ。中から聞こえた物音はこの音だったのかな、と妙に肌が良く見える二人をテントから出て放置する。

 起こすことも考えたのだが何故かめんどくさいことが起きそうだったので放置することにしたのだ。数が多かったのなら長い戦いになりそうなのだが勝てない戦いではないのだ。ただの獣でもアゼフィに寄生されても、だ。


「ある程度サポートはするから壁になって下さい」

「え!? む、無理ですよ! 実践なんて数えるぐらいしかやったことないですし……」

「二、三匹程に減らしますから大丈夫ですよっ、と」

 腰ほどある草むらを抜けてきた狼の額に矢が突き刺さり、ユウジンの目の前で落ちた。


「ほら、どんどん飛び出してきますよ。……これ、後ろに魔物いますね」

 魔物、魔に置かされた生物の名称だ。それ単体でも結構な驚異になるが戦闘力以上に面倒なのが群れを作ることなのだ。いや、群れと言うより手下と言った方が正しい。

 魔物の力に逆らえないから腹を見せ、服従の意を見せる。恐怖に支配された獣はそりゃあ面倒なのだ。


「これ、長くなりそうだなぁ……」

 目の前で想像以上の猛威を振るっているユウジンを見ながら木の上から矢を放つ。全てが額に吸い込まれるように射抜かれていた。

 弓だけじゃなく、短剣もある程度扱えるのだが……それで獣の群れを倒そうとするのは少し、無理があるのだ。


 矢の数はまだある。

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