放浪する系ハーフエルフ
今投稿している作品の息抜き的な意味で投稿しました。今やってる作品は全部完結させる予定だから……
風が頬を掠めながら過ぎ去っていく。
肌で感じる温度は少し、湿った感じでじめじめとしているのだが記憶にある通りだと今の季節は夏の始まりぐらいだ。
夏の始まり、それは生物、モンスター問わず全ての生き物が活発に動き出す時期なのだ。それに比例して僕達、狩人も活発に狩りを行うようになる。
僕ーーウェイルもその内の一人なのだ。
狩人は基本的に森の化身とも言われるエルフが一人前になるために自分を鍛えるのに使う職業と言うか身分なのだ。自分の故郷を離れて技術を磨き、知識を蓄え故郷に戻る。その知識を生かして故郷の発展を促したり、外から来る外敵を排除する為の策を広めるのだ。
その中で帰らぬ人、森の精霊になる事も沢山いるみたいだけどそれは純粋に運が無かったとしか言えないのだ。
父親曰く森の精霊になる事は恥ではないのだが、それ以上に森の化身、守り人として生涯を全うしていく方が格好いい、と言っていた。
と、純血である父は言うが生憎僕はハーフエルフ。人間である母親の血が混ざった子供なのだ。
混血のエルフになったとこで寿命は人間と同じになるし、森の精霊になれなくなってしまうのだ。
まぁ、別に恨みも感謝もしてないんだけどね。
限界まで引いていた矢を離す。
風を切る音を置き去りにしながら座って休んでいた混血のゴブリンの額に矢が突き刺さる。
刺さった衝撃か、矢に塗った毒液が原因なのかは分からないが音をたてて倒れた。
「ふぅ、全然ゴブリン来ないんだもん……正直、この場所で待機はいい考えじゃなかったのかな?」
そう、呟きながら数十メートルはある大樹から飛び降りる。
背中に自分の体の数倍はある大きな弓を背負い、腰には十数本の矢を入れた状態だったのだが降りる時の音は一切無かった。
これがハーフなのだけれども何個か使えるエルフの強みのひとつなのだ。
混血のゴブリン、大体のゴブリンが他種族の血が混ざっている混血なのだが結構、農業的な意味で役に立つのだ。混血な影響で純血のゴブリンより頭は多少良く、攻撃手段も投石等、結構嫌らしい物を使ったりするのだが唯一の弱点が致命的なのだ。
圧倒的に骨が脆いのだ。
で、何故農業的な意味で役に立つのかと言うと混血のゴブリンの骨を混ぜた畑は作物が育ちやすいのだ。その結果、何年経っても需要が絶えない素材になったのだ。
まぁ、ある程度力を付けたら純血のゴブリンや、ドラゴンなどを倒した方が多く、報酬とか素材とか売れるみたいなんだけどね。
倒れたゴブリンに慎重に近づき、首をナイフで切り落とす。ナイフにも傷口に触れたらイけない系の毒を塗り込んでいるのだが幸い、ゴブリンの肉は色んな意味で需要がないのだ。
息の仕様がない、と判断して今度は別のナイフに持ち替えて解体を始める。内蔵類は余り、高く売れないので予め掘っていた穴にぶちこんでいく。使えるものは骨のみなのだ。
解体し終わり、骨を少し大きめの袋に詰め、この森から少し離れた町に向かう。純血のエルフは人の臭いを嫌うがハーフエルフはそんなことないのだ。云わば、寿命以外の弱点を取り除いたのがハーフエルフなのだ。
「十五越えた辺りから長く生きるのに意味はあるの? って、悟り開き始めちゃってるもん。まぁ、エルフと言えば長寿って感じだもんね。しょうがない」
よっこらしょ、と年齢に見合わずおじさん臭い言葉を言いながら袋を背負う。背中に背負った弓が邪魔なのだがこれはエルフにとって誇りであり、自分の半身なのだ。ハーフエルフはそうでもないが。
片道、三十分弱。
道はある程度整備されており、宿屋もある関係からモンスターに教われる心配がないのが唯一の救いなのだがこんな場所に宿屋とか……モンスターに襲われたいのかどうなのか聞いてみたい所だね。
留まって狩りを行うエルフと放浪しながら世界を回り、色んなところで狩りを行うウェイル。安定、と言う文字で見れば圧倒的にエルフの方が良いのだが、探検と言う文字で見ればウェイルなのだ。まぁ、その分危険なのだが。