過去へ戻り勇者たちへ復讐を
短編小説「デーモンリベンジ」
@1話
そこは戦場だった。
荘厳だった魔王城は、見るも無残に破壊され尽くされた。
贅を凝らした調度品や美術品類は人間たちに奪われていった。
魔族大半は嬲り殺され、女子どもの一部はさらわれていった。
ガタッ・・・と音がする。魔王の玉座の間の隠し部屋から一人の男が出てくる。
誇り高きデーモン一族の一人。魔王レディスの息子のレイモンドであった。
「あぁ・・・みんな・・・みんな死んでしまった。」
涙でぐじゃぐしゃになった顔をゆがめながら彼はさまよう。
その姿はまるで許しを乞うているようであった。一人だけ立ち向かわず、臆病に、逃げ隠れていた、そのことを恥じるように。
何人もの同胞達の屍を過ぎ、玉座に近づく。
そこには切り捨てられ、首から上、頭の無くなった魔王の姿があった。
偉大な魔王レディスは人間側の最先鋒である勇者の一撃にやられ絶命。レイモンドは覆いかぶされるように魔王に、父に蹲る。
「父上・・・、ちちうえぇ・・・」
孤独にうめく声のみ部屋に反響する。
泣き続けてしばらくすると、レディスの胸元に固いものを感じることに気が付いた。
レイモンドは不思議に思いレディスの胸元を探る。
見つかったのは一つの指輪。
紫と黒を掛け合わせた色の水晶をはめ込んだ指輪で内包されている魔力は、あり得ないほどのものを感じた。
レイモンドが指輪に手をかけると突如として指輪は輝きだし、周囲は暗黒に包まれる。
「なっ!?」
真っ暗な空間にはレイモンドとそこには亡き父であり、魔王であるレディスがいた。
「この指輪の起動条件は、私が死に、そしてレイモンドが生き残ったという状況下のみ作動する。」
驚いて理解できずにいるレイモンド。
そんなレイモンドをほってレディスは続ける。
「レイモンドよ、辛い思いをさせた。弱い父を許せ。人間どもは魔族の降伏宣言を受け入れず、そのまま攻め込むつもりだ。魔族は良くて捕虜、悪ければ全員惨殺されているだろう。この指輪が起動しているということは少なくとも私は死んでいるということだろうがな・・・。」
「この指輪は時間遡行する魔法を込めている。私の最後の魔力を全力で込めているがどの程度時間遡行可能かは分からない。」
「指輪の魔法を使い、過去へ飛べ。そして・・・自由に生きろ。人間へ復讐してもよい。人間から逃げてもよい。そなたの思うように生きろ。これまでこの城に閉じ込め生活させることしかできず、すまなかった。私は・・・私もアデラもお前にもっと自由に生きてほしかった。
さらばだ、レイモンド。愛しの我が子よ」
レディスの言葉が終わると指輪の輝きがさらに強くなる。
「ま、待ってください!!父上!ちちうえ!!!」
手を伸ばすが、レイモンドの手は空を切るばかり。指輪の光が収まると父の姿はそこにはなかった。
「あ・・・」
真っ暗な空間で立ち尽くすレイモンド。
その後ろから時空のゆがみが彼を襲う。
まるで嵐に巻き込まれるかのようにレイモンドは渦に飲み込まれていった。
to be continued