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部屋に集う高校生の話

あの曲がり角で···

作者: (サンダ)

 ···突然ですが、皆さんは周りの人に隠していることが関わったことのない人にばれたら、どういう行動をしますか?


 私は···


「···これって、お前のか?」

「ぇ···ぁ···ぅ···」


 ···まさにこの状況に陥ってます!誰か···助けてください!!


 2時間前···


「···えっーと···確かここら辺に···あった!!」


 皆さん初めまして、野本(ノモト) 結花里(ユカリ)といいます、10月の何の変哲もない日、高校進学の為に田舎から上京してきた私は、好きなアニメのグッズを買いに聖地に来ていた、小さい頃からアニメというアニメが大好きで借りている部屋の中は全部アニメキャラで埋め尽くされている···簡単に言ってしまえばヲタクだ


「(···まぁ、小さい頃とはアニメの見方も違うし、初めての一人暮らしでヲタクに磨きがかかったし···こんな姿学校の皆には見せられないなぁ···)···ほわぁ~···!!こっちに限定ものもあるぅ!!!」


 ···ホントにこんな状況見せられないな、見せたら笑い者にされちゃうもの


 普段の学校生活ではクラス委員をやっており、生真面目な性格の(ように見える)ため煙たがられることも多々ある、そんな時に好きなキャラの出ているアニメをみてすっきりしている、···みるアニメがちょっとハードな内容だから色々と誤解されたら困るし···まぁ正しいんだけど


「あ、これとこれも買おうっと、これもいいかな?」


 結果、今日だけでも2万は使ったと思う、···うん、大収穫だ


「···よし、後は今日の夕食を買ってディスク買って帰ろっと」


 高校生で一人暮らしとなるとさすがに親の仕送りだけでは生活できないので、学校に届け出を出して正規にアルバイトをやっている、···まぁ、アルバイト代のほとんどはこうやってグッズに消えちゃうんだけど


 そんな話は置いといて、今日の夕食を買う為に近くのスーパーに寄る、ちょっと周りの目が痛いけどそこは無視しよう


「えっと···先週このサラダとお弁当だったから···今日はこっちにしよ」


 苦学生には味より値段が重視だ、その中でいかに安くておいしいものを選べるようになるかが重要になる


 夕食も買い終えたので家に帰ることに、月が雲で隠れているからいつもより暗く感じる、今日は···確か見るアニメはなかったはずだ、うん


 ···だから忘れていた


 ···ドンッ


「キャッ···!!ってて···あぁ!!?私のバッグ!!」


 自分の地元より人が多いこと、人が多ければ悪いことを考えている人も沢山いることを


 家まであとちょっとのところで後ろからぶつかってきた男の人に財布の入ったバッグを盗られてしまった、早い話がひったくりだ、実はひったくりの被害にあったのは今日が初めてではなくこっちに来てから何回も被害にあっている···私が苦学生なのはこの理由も入る


「まっ···(ガサッ···)!!」


追いかけようにも手荷物が邪魔で走ることができない、おまけに私の家の周りは人が誰もいなくて助けを呼ぶことすらできない···あぁ···、また次の給料日まで絶食生活の始まりだ


 ···そう思っていた時だった


 ···ドカッ!!! 


「ぐへぇっ!!?」

「!?」


 ひったくりが曲がり角を曲がった瞬間に何かにぶつかったらしく尻餅をついた、今なら間に···駄目だ荷物が···


「その人はひったくりです!!捕まえてください!!」

「!!チッ···」

「あ!!待て···」


 ···ヌッ···ガシッ


「カッ···!!?」

「!!?」


 ひったくりが逃げようとした瞬間、その顔が何かに包まれた、···暗闇でよくわからないが白い服みたいなのが見えるから多分手だろう···ちょっと待って、ひったくりは小顔とは言えない大きさの顔をしてるはずだ、その顔を片手で掴むほどの大きな手を持つ人がいるだろうか


「ガッ···グッ···!?」

「···女相手に随分と卑怯な真似してんじゃんおっさん」

「!!」


 この地を這うような声···聞き覚えがある···!!


「···おっさん結構やってるだろ、よく捕まんないでやってこれたな」

「はっ···離せ···!!クソガキ···!!」

「···あ゛?」


 ミシミシミシッ···


「ぐあぁあっ!!!?」

「!?」

「···人にぶつかって外道なことして、···よく俺に盾突くことができるなァ!!」

「アァアアア···ア···」


 叫び声が聞こえなくなったと思うと、掴まれてることに抵抗をしてたひったくりの腕が力なく下がった


「···チッ、だらしねぇな」

「え···え?」

「ほい、これアンタのだろ?」

「ふぇ!?あ、あの···ありがとうござい···」

「···なんか、どっかで聞いた声してんな···」


 そうこうしてる内に隠れていた月が晴れてきて、目の前にいる人物を照らしてくれた


「···お、委員長じゃん」

「!!」


 そこに立っていたのはクラスでは授業中いつも寝ている、···簡単に言ってしまえば不良の部類に入る人物···桐嶋(キリシマ) 孝彰(タカアキ)がいた


「き···桐嶋君!?」

「なんだよ、んなに驚くことじゃねぇだろ、つか委員長こんな時間に何やってんだよ」

「えっと···私はその···きょ···今日の夕食の買い出しよ!!」

「あっそう···」

「そ、それより桐嶋君の方こそ···こんな時間になにしているんですか!!」

「俺は···気が付いたらこの時間になってた」

「···あぁ···」

「なんだよその目は」

「いや別に···それよりその···ありがとうございます···」

「別に···それよりさ委員長···」

「···はい?」


 桐嶋君の指が私の手元を力なく指す、···待てよ、今私が手に持っているものはさっき盗まれかけたバッグと···!!?


「···これって、お前のか?」

「ぇ···ぁ···ぅ···」


 ···ミラレテシマッタ、ヤバイ


「こっこここここれは違うのよ!!?ほら···妹に頼まれたから···」

「委員長自己紹介の時に一人暮らしって言ってたよな」

「なっなんで覚えてるの!!?その時桐嶋君寝てたよね!?」

「あんなでっかい声で言われたらいやでも目が覚めるわ」

「~~~~っ!!!」


 これはホントにまずい、言いふらされたら皆にどんな目で見られるか···


「お···お願い桐嶋君!!このことは誰にも言わないで!!!」

「別にいいけど」

「···え?」

「別に委員長がヲタクとかどうでもいいし、つかむしろそういうの出してたらもっと寄ってくんじゃねぇの?」

「···今更感があるし、このまま高校にいる間は隠し通すつもりでいるわ」

「あっそ、んじゃ帰るわ」

「あ、ちょっと!!絶対に言わないでよね!!?」

「だから言わねぇっての、いつも学校で俺は寝てんだろうが」

「それはそれでダメでしょ···授業はちゃんと受けないと···」

「いいんだよ、追試で満点とっときゃよ」

「···ん!?」

「じゃあな委員長」

「え、ちょっ···桐嶋君!!?」


 私の呼びかけに返事もせず、桐嶋君は私が歩いてきた方向へと歩いて行った···片手にひったくり犯を持って


「···え、満点って言った···!?」


 自慢じゃないが、私が通っている学校は周りの学校よりもいくらか偏差値がいい部類に入る、そんな学校の試験なんか授業をしっかり受けていないと大事な部分を見落として点数が取れない、おまけに追試は本試験と問題が全然違うから満点なんかまず出たことがない、···それを学校にいる間ずっと寝ている人間が満点を取る···だと···!?


「···冗談···よね···!?」


 結局その日は謎を残したままで終わってしまった···ちなみに買ったグッズは全部無傷で済んだ



 次の日···


 ···キーンコーンカーンコーン


「···終わったぁ~、よし!今日はまっすぐ家に···」

「あ、野本、クラスで配布する文化祭の資料をまとめといてくれ」

「···は、はい、わかりました···」



 ···トントン、ガチャン···


「···はぁ~···せっかく今日は早く帰ってアニメ見ようと思ったのにぃ~···」


 10月となると委員長という役職はものすごく忙しくなる、突然先生から頼まれごとをされるのなんてもう一週間連続で経験している、···もちろんこんなめんどくさいことを手伝ってくれる人物なんて誰もいない


「(···トントン、ガチャン···)···誰か手伝ってくれてもいいんじゃないかな···」


 ···ガラッ


「···ふわぁ~ぁ(ゴンッ)いでっ···あれ、委員長帰ったんじゃねぇの···?」

「き···桐嶋君···あなたの方こそ帰ったんじゃなかったの?」

「ん~···呼び出しくらってた」

「そ、そう···おでこ大丈夫?」

「···痛い」


 今日も今日とて桐嶋君は午前の授業は学校来て早々爆睡を決め込んでおり、昼休みには教室から消えて放課後を告げるチャイムと共に戻ってきてた、その後またすぐに教室から出ていったからもう帰ったかと思ったけどこんな時間まで先生に呼び出されていたらしい、···さっきのすごい音は桐嶋君のおでこが教室の扉の枠に当たった音だ、彼は他の男子と比べるとかなりの高身長で昨日話した時は首が痛くなったのを覚えている


「···で、またあのくそハゲに面倒ごと押し付けられたのか」

「ちゃ···ちゃんと先生って呼びなさいって···」···トントン

「いいんだよ、あいつ見た目通り頭の中も空っぽだしよ」

「こ···こら!!そんなこと言っちゃ···」ガチャン

「···どうした?」

「そういえば昨日言ってたことってさ、ホントの事なの?」

「昨日?」

「ほら···追試で満点って···」

「あ~···(ガサッ···)···どこしまったかな···お、あったあった」

「···なにこれ?」


 急に制服のポケットの中を漁りだしたかと思うと私の目の前にヨレヨレになった何かを見せつけてきた


「何って追試の結果」

「···ちゃんとファイルに挟むかしようよ···」

「いいんだよ、所詮追試の結果だしよ、残してられっかよ」

「あっそう···で、見てもいいの?」

「いいからこうして見せてやってんだろうが」

「そ、そうよね···」


 差し出された追試の結果が書いてある紙を開いてみると···


「···ぅそぉ···」

「···なんか今の驚き方ヲタクみたいだな」

「どんな偏見持ってるのよ!!···え···でもこれ···」


 全ての教科の点数欄には縦一本と丸が二つ、どうやらホントの事だったらしい···コメント欄に"頼むから授業ちゃんと受けてくれ"って書いてある、その文脈から先生が必死になっているのがよくわかる


「···すごい···私でも満点なんて取ったことないのに···」

「は?こんなんすぐ取れんだろ」

「む、じゃあなんで普段の試験でこれを出さないのよ」

「···この身形でカンニング疑惑出るから追試で出してんだよ、センコーどもには話つけて追試の方を成績に反映してもらってんだ」

「あっそう···」

「···つか早くやんねーと暗くなんぞ」

「ふぇっ?···あぁ!!?忘れてた!!」

「···委員長ってさ、すげぇアホな時あるよな」

「む、どういう意味よ」

「別に、まともに話したことなかったけどやっぱ委員長も普通の人じゃんってこと、ほら手伝ってやるからとっとと終わらせて帰ろうぜ、今日もアニメがあるんだろ?」

「今日はないわよ、···そりゃ録り溜めたやつ見ようとは思ったけど···」

「録画かよ···まぁいいや、で、これどうすりゃいいんだ?」

「えっとこれは···」

「あ、説明いいや、もうわかったし」

「ゑっ!?」


 そういうと前の席に座った桐嶋君はものすごい手際よく配布する資料をまとめ始めた、待ってすごく速いし完璧に仕上がってるし、···桐嶋君って何者なの?


「···何やってんだ、手ェ止まってんぞ」

「うぇ?あ、う、うん···」

「···」


 ···なんなんだろうこの絵面



 ···ガチャン···


「···ふぅ、今度こそ終わったぁ!!」

「職員室の前までは持ってってやるから、とっとと帰る仕度しろ」

「あ、うん!!···うん?」

「どうした?」

「いや···なんでもない···」


 ···あれ?何だこの状況···


「···ここぐらいでいいか、ほれ資料、下駄箱で待っててやるから行ってこい」

「え、あ、ありがとう···」

「···だからどうした?」

「···あ、後で言うね」


 ···うん?もしかしてだけど···


「···お、あのハゲなんか言ってたか?」

「言ってないよ、てかハゲって呼ぶのやめなって···」

「いいんだよ、ほら帰んぞ」

「···えっと、桐嶋君一つ言ってもいい?」

「···なんだよ」

「桐嶋君ってさ···おかん?」

「どうしてそうなったんだよ···」

「だって複雑な作業をスムーズにやったり荷物持って待っててくれたり心配してくれたり···もうおかんじゃん!!」

「せめておとんにしろ」

「ブッフウ」

「お前はもう少し女らしい笑い方をしろ」

「むりですw」

「···もうひったくりするアホは出てこねぇと思うけど気をつけて帰れよ」

「了解おとん!!」

「こんな苦労する娘を持った覚えはねぇ」

「ノリイイねw」

「うるせぇよ、ほら気をつけて帰れよ」

「あ、うん、ありがと!!」

「···」ヒラヒラ···


 ···結構長く私と話してくれた、他の人は業務連絡とかしか話してくれないけどこんなくだらない話したのこっちに来てから初めてかも···



 その日を境に桐嶋君と放課後の奇妙な関係が増えてきた


「···お、委員長、ここの文法間違ってるぞ」

「え!?どこどこ!?」

「ほらここ、これじゃ日本語にした時意味わかんなくなんだろ」

「···あ、ホントだ」


 ある時は桐嶋君に勉強を教えてもらったり···先生より分かりやすいなんて···


「でね?今度放送されるのが次回予告で見た時に一気にぶわってなったのよ!!」

「ほー」

「あ、聞いてなかったでしょ?」

「聞いてんよ、予告見て鳥肌立ったんだろ?」

「そうだけどぉ~···」


 またある時は私の話を聞いてくれたり


 そんな感じで文化祭を迎えようとしていた


 ···いや、迎えられるはずだった


「(今日は何の話をしよっかな~)♪~」


 いつものように放課後を迎え、いつものように残ってお話しをしようと思っていた時だった


 ···ガッシャァアアアアン!!!


「!!?」

「おい、なんの音だ今の!!」

「大変だ!!廊下で桐嶋がケンカして···」

「!!!」ダッ···

「い、委員長!!?」


 気が付けば私の足は教室の外に向かって動いていた


「(そんなはずはない···だって、だって桐嶋君は···!!)桐嶋く···!!!」



 教室の外で私が見たものは···



「···ハァ···ハァ···」

「ガッ···グフッ···」



 右手に作った拳に赤い液体が飛び散り、血を出させるほど殴り、倒れた相手を見下ろす桐嶋君がその場に立っている光景だった


「っ!!?」

「···」ザッ···

「!!き、きりし···」

「来るんじゃねぇぞ!!!」

「!!!」

「···」


 その場から去ろうとする桐嶋君を止めようとしたけど怒気を孕んだ声に足が動かなくなった、そうしている内に桐嶋君はこっちに顔を向けることなく去ってしまった


「···桐···嶋···君···」

「っ!!これは···一体何があったんだ!!?」

「···」クラッ···ペタンッ

「委員長!!?」

「野本!!大丈夫か!?怪我してないか!!?」

「···」


 ···その先の事は私はショックで詳しく覚えていない、今まで楽しく話していた人物からの拒絶はアニメを録画し忘れた時より何倍もショックが大きい



 ···翌日、担任の口から昨日の桐嶋君の自宅観察、その後処分を検討するということが話された、だが今の私にはそんな事が耳に入る余裕が全くなかった


「···(ゴトッ···)···ぁ、ケータイ落とし···」


 落としたケータイにつけてたストラップはあの時桐嶋君がひったくり犯を捕まえてくれた時に買ったやつだ


「···(桐嶋君が自分から殴りに行く人じゃないのはわかってる、···でも)」


 教室でうだうだ考えている時だった


「···っクソ桐嶋のヤロー、思いっきり殴りかかってきやがって···」

「いやでもあれはヤスが悪いでしょ、急にちょっかい出すから」

「つってもよ~···あいつ勉強教えてもらわないとやべぇほどバカなんだろ?」

「···」ガタッ···


 廊下から聞こえてきた男子二人の声に反応し私は自然と体が動き廊下にいる声の発生源へと向かっていた


「だからってなにも当たらなくても···」

「いいんだよ、だって教えてたの桐嶋のクラスの委員長だろ?文化祭もあるのに迷惑かけんなっつー···」

「···謝って···」

「あ?···桐嶋んとこの委員長じゃ···」

「今すぐ桐嶋君に謝って!!私は迷惑なんて思っていないし、むしろ私とちゃんと話してくれる人なの!!文化祭の資料をまとめるの手伝ってくれたり、他愛もない話をちゃんと聞いてくれたり···私に勉強を教えてくれる優しい人なの!!!」

『!!?』


 ···大声で話したから周りの人が驚いている、···でも、そんなことは気にしていられない


「···は、はぁ?あんたが桐嶋に教わってる···だ?」

「っ!!!(バッ···)こ、これでも信じられない!!?」

「···!!これ···桐嶋の···!!?」

「···(ボスッ、ダッ)」

「あ、おい!!···ったく、なんなんだ···」

「···ヤス、この成績表···」

「は?···はぁあぁあああっ!?」




「···はぁ···はぁ···」


 桐嶋君をバカにしてた男子二人にこの前いらないからと貰った成績表を押し付けて、まだ今日の授業が残っているにもかかわらず私は学校を飛び出していた


「···」


 ···飛び出したのはいいがどこに向かうかも決めていないし荷物は全部学校に置いたままだからほぼ何もできない


「···ぁ」


 そのままとぼとぼ歩いていると私が桐嶋君に助けてもらったあの曲がり角に着いた、陽は出ているいるがやっぱりここは誰も通らない、私は曲がり角の近くのガードレールに背中を預けてしゃがみこんだ


「(···ここでちゃんと話すようになったんだっけ)···」


 ···こっちに来て初めてちゃんと私の話を聞いてくれた人、ヲタクな私も普段の私も分け隔てなく接してくれる唯一の人


「···桐嶋君···会いたい···よ···っ···!!」

「···こんなところで何してんだよ委員長、まだ学校終わってねぇだろうが」

「!!」


 頭上から聞こえた呆れたような···でもちゃんと心配してくれている声に顔を上げると、そこには袋を片手にぶら下げた桐嶋君が立っていた


「···で、委員長、荷物はどうした?またひったくられ···」

「···きりしまぐぅん~···」

「うぉっ!?急に泣くなよ!!やっぱりなんか盗られたのか!?」

「ぎりじまぐぅうん~」

「なにがあったんだよお前の身に!!泣いてたら分かんねぇだろうが!!」


 会えた安心感からか、涙が止まらなくて桐嶋君がスゴイ焦っていた



「···なるほど、で、俺の成績表を俺が昨日殴ったやつに押し付けて学校飛び出してきたと、···何してんの?」

「うっ···ぐ···」

「俺の事なんか別にほっといてもよかっただろ、つか人の成績表を勝手に他人に押し付けるなよ···」

「だっ···て···桐嶋君の···ごど···バカにするっ···がら···」

「そこはどうでもいいんだよ、···あいつが委員長の事とやかく言ったのが悪いんだしよ···」

「うっぐ···うぇえ···」

「···はぁ~とりあえずハゲに電話入れてやっから、落ち着いたら学校戻れな」

「ひっ···ぐ···」

「(カコッ···カコッ···)···おいハゲ、委員長こっちまで来てんだけど、···何やってんだよ、それでもセンコーやってんのか?···あ?昼飯コンビニで買った帰りに道の脇で座ってたんだよ、俺ん家に来るわけねぇだろうが、···しょうがねぇだろ?俺今さっき起きたんだしよ、で、どうすんの?委員長俺見てからずっと泣きっぱなんだけど···俺が学校行ったらまずいだろ、自宅観察の身なのに、···委員長の荷物持ってお前がこっちに来い、それまで見といてやるから···あいよ、これで俺の処分が軽くなるとかはナシだからな···あーい」

「ふっぐ···」

「(カコッ···)···とりあえずあのハゲが委員長の荷物持ってこっち来てくれるってよ、その先どうすっかは委員長が自分で決めろな」

「ふぇっぐ···きりしまぐ~ん···」

「あ~···あのハゲ来るまでいてやるからいい加減泣き止めって」

「うぅうぅうう~···」


 そのまま10分、桐嶋君は先生が来てくれるまで本当にいてくれた


「···おぉ桐嶋、悪いな自宅観察中に」

「悪いと思ってんなら生徒から目ぇ離すんじゃねぇよ、こちとらまだ飯も食ってねぇんだからよ」

「すまん、今度なんか奢ってやるから」

「はぁ···ほら委員長、ハゲ来たぞ」

「先生って呼べって言ってるだろ···」

「···先生···私今日、早退します」

「···」

「そうか、ならこれ荷物な、桐嶋、野本を家まで送ってやってくれ」

「えぇ~···俺まだ飯も食ってないんだけど」

「どうせコンビニ弁当だろ?だったら野本の家で食って、落ち着くまでいてやれよ」

「お前仮にも教師だろうが!!不純異性交遊とかいって風紀委員にしょっ引かれるの俺だぞ!?」

「そこはお前の頭で考えて行動すればいいだろう、見た目詐欺だし」

「···この野郎、授業でミスってるとこ大々的に指摘してやる」

「お前に言われると信憑性下がるからやめてくれ、せめて野本に言われたい」

「···学校行けるようになったらちゃんと授業出てやろうかこの野郎」

「それを本当にやってくれるとこっちとしてはとてもありがたい」

「だったらつまんねぇ授業しなきゃ···」

「とにかく、野本の事頼んだからな」

「あ、オイ!!···あのハゲいつかスキンヘッドにしてやる」

「···(クイッ···)」

「···はぁ···ほら行くぞ、俺も腹減ってんだよ」

「うん···ありがと···桐嶋君···」

「···おう、···なんかラブコメみたいだな」

「ボフゥw」

「委員長やっぱ学校戻るか?」

「ごwめwんw、桐嶋君の口からラブって出るとは思わなくてw」

「そこまで元気になったんなら学校戻りやがれこのヲタク委員長がァ!!」

「いーやーでーすぅー、私はもう帰って撮り溜めたアニメを見るんだい!!!」

「勉強しやがれ!!!」

「桐嶋君に教わるからいいもーん!!」

「やるとは言ってねぇぞ!!?」




 ···それから3日経った


 ···ガラッ


「···ぁあぁ~···ねむっ···(ゴンッ)いっづ、ここもうちょい上にあげてくんねぇかな···」

「あ、桐嶋君!!処分はどうなったの?」

「よ、反省文原稿用紙25枚でいいってよ、嫌がらせで100枚ぐらい書いて本にでもしてやるか」

「さすがにやめといた方がいいんじゃないかな···」

「で、どうしたんだよ」

「あ、そうだった、これ訳してくれない?」

『!!?』

「···あのなぁ委員長、これフランス語じゃねぇかよ···」

「え!?そうなの!?どおりで英語の文法が当てはまらないわけだ···」

「フツーにわかるだろ、辞書出して調べてる時に気付けよ」

「うへぇ···じゃあ桐嶋君でも無理~?」

「いや読めるけどよ」

『読めるの!?』

「うぉ!?な、なんだよ、お前ら急にデカい声出すんじゃねぇよ、つか人の話を盗み聞きすんな」

「え···ちょ···はぁ!?桐嶋お前···フランス語わかんの?」

「わかるっつか、こんなん言葉なんだから普通に読めんだろ、中国語とかハングルとか、あとスペイン語とか、英語はクソ楽だけどな」

「···えぇ~···委員長が言ってたことってホントだったんだ···」

「···あ、クソ、委員長のせいだかんな?」

「うへへ~、本当の桐嶋君を知ってもらおうとしてちょっと引っ掛けてみました~」

「チッ、···んで、コレ訳せばいいのか?」

「うん、できる?」

「余裕···って委員長お前これいつやってるアニメのタイトルなんだよ!!!」

「わかんないからタイトル聞いて検索かけようかなって思って、多分深夜だとは思うんだけど」

「そんなん放課後やれ!!朝に堂々とすることじゃねぇだろこの腐女子が!!」

「んなっ!!?私はヲタクなだけであって腐女子じゃないもーん!!ノマカプ厨だもーん!!」

「やかましい!!どっちにしろそっち系にも興味あんだろうが!!!この前家まで送ってってやった時本棚にそういう系のやつ10冊ぐらい入ってんの覚えてんだからな!!」

『!!?』

「ゥソン!?ちゃんと隠してたから完璧だと思ったのに···」

「ぅおっ···ホントにあんのかよ」

「え!?···こんのぉー!!嵌めおったな!?」

「さっきのお返しだ」

「ぐぬぬ···!!よくも···よくもぉおおお!!!」バッ···

「···」


 ···ガシッ


「ふぇっ?···ふんぬぬぬっ!!(ブンブンブンッ)···ふぬぬぬぬんぬっ!!(ブンブンブンブンッ)」

「ほら、がんばれがんばれ」

「···ね、ねぇ桐嶋君···家まで送ったってホントなの?」

「んぁ?あー···委員長が学校飛び出してったときあったろ?そん時コンビニに昼飯買いに行ってその帰りに蹲ってたのを見つけて、その後色々あって送ってやったんだよ」

「そうなの···てかそれはどうでもいいんだけど、野本さんがヲタクって···」

「···どんな奴にもギャップの一つぐらいあんだよ、俺が不良の風貌してるくせに学年一位だったり、委員長が寂しさ紛らわすためにヲタクだったりな」

「ふぬぬぬぬぬっ!!そろそろ離せぇ~!!!」

「あ、忘れてた」

「つか、桐嶋腕長っ」

「ロボットみたいね」

「おい誰だ今ロボっつったやつ」

「···よっし桐嶋君!!文化祭終わったら二人でカラオケにでも行こっ!!!」

「金に困ってるやつが言うことか?つか俺ずっと寝てたから文化祭何やるか知らねーんだけど」

「えっと···喫茶店でもやろうかなと」

「喫茶店って···ケーキとか作るのか?」

「そんな···パンケーキくらいしかできないよ···」

「···じゃあ俺が家で作ったやつをクーラーボックスに入れて持ってきてやっから数量限定で出せよ、そうすりゃ客何人かはい···」

『なんでも出来んのかお前はァ!!!』

「いちいち反応すんなよ!!こっちが疲れんだろうが!!」

「こんにゃろっ!!そのスペック一個寄越せぇ!!」バッ

「ぐえっ!?バカ!!ひっつくなって!!」

「総員突撃準備!!ターゲットはハイスペ男よ!!」

「かかれぇえ!!!」

『うっしゃぁああっ!!!』バババッ

「ちょっ···やめろやぁあ!!!」

「···ほんとだったね桐嶋君」

「ほら!!野本さんも!!」

「···ぃよぉっし!!桐嶋君かくごぉっ!!」


 隠していた自分の本性をさらけ出したら皆が皆接し方が軽くなった、私が作った壁を壊してくれたあなたも皆の輪に入ることができたね


「···あれ?桐嶋君?」

「(チーン···)」

「ぎゃあぁあああっ!!?桐嶋君が気絶したぁああぁあ!!?」


 ···ちょっと打ち解けすぎだとは思うけど···ありがとう桐嶋君、···今は死んじゃってるけど


 全員慌てるまであと3秒、先生が来て今の桐嶋君を見て泣き出すまであと30秒、皆に目覚めのキスをせがまれるまであと10秒、桐嶋君が目覚めるまであと1分


 私が桐嶋君に気持ちを伝えるまであと60日···場所はもちろん、あの曲がり角で

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