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答え合わせ

 1


 土曜日の夕方、晩ご飯を食べると部屋に戻ってタブレットを用意する。

 すると、「こんばんば」と声がした。

 声は祐樹だ。

 

「おじゃまします」


 そういって、私の部屋のドアを開ける。 

 するとタブレットを持った祐樹が、私をみている。 


「バカ子、相変わらずだな。お前の部屋」


 祐樹がいった。

 うるさい!

 とにかく、始めるよ。

 

「ああ、本当に、ゆみみの正体がわかるんだな!」


 祐樹の目がランランと輝いてる。

 もう、男の子なんて。

 

 私と祐樹はタブレットを立ち上げ、仲良しの町に入っていく。

 助手といっしょに!


「俺、お前の助手?」


 そう! さて、答え合わせに入るよ!


 2


 ワッコ祐樹ゆうたは着替えルームにいる。

 始めに着せ替えルームに入り……私はバンザイをした。

 祐樹ゆうたが変な顔をしている。

 次に祐樹ゆうたが入り……ワッコと祐樹ゆうたの服を取り替えて始めた。

 頭に野球帽をかぶる。これは髪型をかくすため。

 髪型は簡単に変えられない。

 顔の表情はみんなほぼいっしょだから、見た目では判断できない。


「俺も着替えたぞ」


 そういって、ワッコの服を着ている祐樹ゆうたをみて笑う。

 

「なんだよ!」


 なんでもないよ。

 さて、いこう。

 ワッコ祐樹ゆうたは行動を開始する。

 祐樹ゆうたになったワッコには、必ず亜由美いつきが現れるはず。

 そしてその近くに……ゆみみが必ずいる!

 

 私は亜由美ちゃんと午後にスマホで、おしゃべりをした。 

「祐樹が考えがかわり、席替えのことはなしにするといってたよ」……なんて、亜由美ちゃんにうそをついた。

 つまり、亜由美ちゃんにエサをまいたの。

 

「大丈夫か? 本当に食らいつくのか?」


 祐樹ゆうたがいった。

 来る! 必ず! その願いを込めて、お話マンションに入っていった。


 3


 チャットの二人部屋辺りで、ワッコ祐樹ゆうたは離れる。

 いくら離れていても、現実には同じ部屋にいる。

 だからすぐに、おかしなことが起きたらわかる。

 

 ワッコは、ふらふらしていると……一人のデニム姿で野球帽をかぶった男の子が近寄ってきた。

 

 きた!


 祐樹が、私をみて、次にタブレットをみた。

 私がうなづく。


「ねえ、あなた、ゆうた?」


 亜由美いつきが、間違いなくきた! 

 ここでのチャットは開けない。

 開くと、名前が出てくる。

 つまり、ワッコがばれる。

 ここは無言でとおす。


「バカ子……」


 祐樹が、私をみた。

 タブレットを指差している。

 それを見る。


「ねえ、あなた、ワッコちゃんでしょ、返事しなよ! チットしたいんでしょ?」


 出た! ゆみみが、怒っている。

 「作戦開始」といった。

 

 仲良しの町にいるワッコ祐樹ゆうたは無言のまま、四人部屋の階へ行く。

 すると……二人が着いてきた!

 まずワッコ祐樹ゆうたが、四人部屋に入る。

 あとは二人が、入ってくるか。

 少しして、二人が同時にきた!

 

「きたぞ!」


 うん、きた!

 さてと、クライマックス!


 4


「ゆうた? どういうこと?」


 亜由美いつきが怒っている。

 私は名のる。

 私は、ゆうた、ではないよ……ワッコだと。

 そして祐樹も、ワッコでなく、ゆうたと名のった。

 

「え?」


 返答したのは、ゆみみだった。

 始めよう。



「まず、いつき、あなた本来は白いドレスにポニーテールの姿です。それなのに、今日はデニム姿て野球帽……この姿、一度みかけたことがあります」


 ここまで、チャットを一気に打ち込んだ。


「そう……ね。だから?」


 亜由美いつきがチャットを返す。

 

「みかけたことより、どうしてそんな服に替えたのか? それが不思議だった。私はよく考えた」


 ここまでチャットを打つ。

 返答はない。

 どうやら私の答えを聞くみたいだ。

 それなら、しばらく打ち込もう。


「服を替えた訳、それは、ゆうたと接触したかったから」


 私はチャットを打つ。

 隣で祐樹がびっくりしている。


「その理由は?」


 ゆみみがチャットを入れる。


「まず、いつき、あなたは女の子だよね。学校では」


 まずは確認する。

 私は始めから知ってるけど、祐樹は横でびっくりしている。

 やっぱり、祐樹は男の子と思っていたみたい。

 だって、「いつき」だからね。


「女の子の姿をしていたら、ゆうたは絶対にチャットをしなかった。だから、男の子の姿が必要だった。では何を話したか? その前に、ゆうたの正体を知ったか? これを説明しないとね」


 ここまで打ちこむ。

 誰一人、打ちこむ様子がない。

 つまりはワッコを待っている。


「ズバリ! ゆみみから聞いたの」


 隣で祐樹がびっくりしている。

 そして四人部屋のゆみみも、びっくりしている。


「ちょっと、いい加減なことはいわないの!」


 ゆみみが怒っている。


「ゆみみ、私と二人部屋に入った時のことを覚えてる? いまから三週間前だよ。これは……タブレットの記録にあるよね」


 私が打つ。

 そう学校からもらったタブレット、実は一カ月間のやりとりが記録として残っているの。

 

「ゆみみ、あなたは、『ゆうたクンと、いつきチャンの部屋が空く』そういってます。実は私、その時に疑問に思いました」

「何に?」

「いつきチャン、これです。チャンをつける……これは、いつきが女の子と知っていたからです。ではどうして知っていたのか?」


 私はチャットを打つ。

 自然と力が入ってくる。


「それともう一つ、ゆみみ、あなたのクセです。『チャット』を『チット』といってます。これからわかったことがあります」

「なにかしら」


 ゆみみがチャットを打つ。

 私は確信に迫る!


「ゆみみ! これは私と、ゆうた、いつき、三人の秘密にします! あなたは…………竹内先生ですね!」


 隣で祐樹が驚いている。

 だけど、これしかない。

 これとは……亜由美いつきが祐樹を「ゆうた」と知る理由だ。

 つまり亜由美いつきは先生から情報をもらった。

 先生だから、そんな管理はしているもん!

 

 四人部屋では……亜由美いつきが笑い、ゆみみは、怒っている。

 私はチャットを続ける。


「先生のクセ、きのうのバーチャル学級会でもでてます。きのうの録音を聞けばわかります。そして今回の席替えのこと……これは、先生といつきの共犯です」


 そういうと、私は祐樹をみる。

 祐樹がうなづき、チャットを打つ。


「俺はゆみみと、二人部屋に入った。だけど少し不自然な気がした。いきなり、二人部屋に連れこまれたから。ゆみみは、必ずあいさつするって聞いたから」


 ここまで打ちこむと、私が続いて打つ。


「なぜ、連れこまれたか? それは、『ゆみみ』が『ゆみみ』じゃあなく、『いつき』が『ゆみみ』になりすましたから!」

「あら、証拠は?」


 ゆみみが打つ。

 ワッコは待ってましたと、チャットを打つ。


「タブレットの着せ替え記録です。これは着せ替えをした前の組の記録が残っているのを知ってますか?」


 ここまで打つ。

 静かな時間が流れる。

 まさか……二人がそんな感じだ。


「私が今回、なりすましたのはその記録を見るためでもありました。私は運を頼りましした」


 私は保存した画面を見る。

 そして……タブレットの画面に貼りつける。

 すると……前回利用者が、ゆみみ、いつき、とあった。

 さっき、私がバンザイした訳はこれ! これは動かない証拠だった。

 それを、みせつける。


 しばらく、静かな時間が流れた。

 静かな時間が流れ……亜由美いつきがチャットを入れてきた。


「ワッコちゃんが、私を見抜いた時のこと、覚える?」


 私は、うなずく。

 昔だけど、私は「亜由美」が「いつき」とわかった時がある。

 ここでは話せないけど……でも、それから私と亜由美ちゃんは友だちになったんだけどね。

 私は「チャットには性格がある」といっているけど、どうやらこれは私だけがいっているだけで、みんなには区別がつかないみたい。

 つけることができるのは、私と……おそらく亜由美いつきだけだ。 

 つまり私と亜由美いつきは、普段は友だち、仲良しの町ではライバルなの。 

 さて、話を戻すね。

 亜由美いつきが、チャットを打つ。


「和佳子ちゃんを試したの中居クンをどう思っているかをね。ゆうたが中居クンであるのはすぐにわかったもん。だって、ゆうた、ワッコちゃんの話題だすと会話がおかしくなったから」


 祐樹が驚いている。


「だから、中居クンに、和佳子ちゃんが待ってるよ! そう教えてあげたの。入れ替わった理由は、ゆみみからではなく亜由美いつきから教えたかったの」


 え? 教えてる?

 すると、ゆみみが、チャットを打ちこむ。


「女の子は、待ってるのよ! そう、いったのよね。いつきチャン」

「はい、ゆみみ先生! だって……あなたがた、両想いだもの」


 亜由美いつきが笑う。

 先生……ちがう、ゆみみも笑う。

 部屋の中で私と祐樹は、見つめあう。

 祐樹の顔が真っ赤になっていく。

 それと同時に、私の顔も熱い。


「ワッコちゃん、月曜日! 席替えね!」


 ゆみみがいった。

 私は……ただ、顔が熱かった。


 5


 仲良しの町の門限がくると、私と祐樹がタブレットを保存する。それが終わると、私は祐樹をみた。

 その視線に、祐樹が気づき私をみる。

 無言の時間が続き、いきなり祐樹が「帰る」といった。

 祐樹の背中をみると、私は背中から……。


 6


 月曜日、私と祐樹は、みんなに冷やかされていた。

 先生の机の前に、私と祐樹の席があり二人並んでいる。

 つまり、私は受け入れたの。

 今から卒業するまでは、私と祐樹は教室でもいっしょ!


「やったわね! 中居クン! あなたは男!」


 竹内先生がすごく冷やかす。

 冷やかすはずなのに、顔は熱くなる。


「先生も、がんばらないと!」


 亜由美ちゃんがいった。

 すると教室が、大爆笑に包まれる。

 先生の顔が引きつっていたけど……。


 私は祐樹をみる。

 すると祐樹は、その前から私をみていた。

 目が合うと、私達は笑顔になる。

 

 しかたないな……私は祐樹に小声で「誕生日プレゼントありがとう」といった。

 祐樹は、顔を真っ赤にして笑う。

 その姿は知っている祐樹であり、まだ私の知らない祐樹でもあった。

 



 





 

 

 

 

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