第二十二話 防長制覇
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其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
以下本文です。
京です、ついに大内を叩く日がやって来ました。
「毛利家の者たちよ! 儂の隆元は逝った! 何故だ!」
(替え玉だからさ)
「隆元を討ったのは暴虐な陶隆房である、彼は主君である大内義隆を討ち大内家を滅ぼした。一条家より養子を貰って大内の名を継がせるようだがそれは名前だけである」
「だが我々には義隆殿が寵愛したおさいの方を保護している。亡き隆元が我らの下に落としたのだ。おさいの方は義隆殿の子を産んでおられる。その子が正統なる大内を継ぐことこそが亡き隆元に報いることである」
元就の演説は次第に熱を帯び髪を振り乱し何時しか涙まで流していた。
「儂の隆元! 隆元は何故死んだ!」
(大内も滅んで用が済んだからさ)
「全ては逆心を起こした陶のせいである! 陶許すまじ! 皆の者陶を討つのだ!」
評定の間に集まった家臣たちは一斉に雄叫びを上げる。鬼畜陶討つべしと叫ぶ者もおり戦意は十分なようだ。
(……)ってなんだって?
私の心の声ですよ。元就も役者ですのぉと思っていたら感情移入して本とに泣いてたらしい、本物の太郎こと就隆はドン引きだったけどね。
ちなみに替え玉君が死ぬはずも無く無事におさいの方こと相良武任と一緒に逃げて来ました。
因みに二人とも世鬼の里の忍びでスキルを与えてチートにしています。彼らなら混乱した山口から逃げるのは問題ありません。
ですがおさいの方はともかく死んだ筈の隆元がいるのはまずいので彼には少し遠方に出張してもらうことにしましょう。特技を生かして武田家にでも送り込むか、弥七郎とでも名乗らせて。信玄さんもそういう趣味の持ち主だし面白いかもね。
△
毛利の集めた兵力は一万を超えていた。安芸平定のために多くの領主たちを潰して自分の直轄地にし、事実上支配下に置いた吉川、毛利に随身を誓った両小早川も加わっているからである。更に尼子と講和したので後ろの心配をしなくても良いのが大きかった。
彼らは直ちに大内方の拠点西条の攻略に移り鏡山城に代わって作られた曽場ヶ城や槌山城を陥落させ、城将である弘中隆兼は降伏した。
毛利と安芸勢の蜂起は陶を激怒させたが毛利の挙兵の理由である隆元の弔い合戦と大内義隆の遺児を立てた事に衝撃を受け内藤興盛らに声を掛け兵を集めたが集まりは悪かった。彼らは石見に尼子が攻め入ったのを問題視しており、毛利とは和議を結ぶべきと考えていたからだった。
「もう良い! 我に従うものだけで毛利を叩く!」
それでも一万五千の兵を集めた陶軍は岩国まで進み布陣した。
陶軍の本陣には江良、柿並、三浦、野上、右田の諸将が集い軍議を始めようとしていた。
「ここからどのような道を通って安芸に攻め入るかです。陸路を使い明石口より廿日市を経て攻め込むか、海路を使い厳島に拠り其処から地御前に上陸するかです」
「海路を使うのが良いのではないか?陸路はあの関戸の難所を超えた後に小瀬川を渡らねばならぬ、その後も山道が続く、大軍を送るのはしんどいぞ」
「だが圧倒的に我らが大軍であれば海路も良いが毛利も一万以上いるのだ、厳島に集結した処を襲われてはどうにもならぬ」
この中で武略に長けていると言われる江良房栄が発言する。
「では、一隊を陸路で送り毛利軍を牽制し、その対応に追われている間に海路で厳島に兵を集め桜尾城等を攻め上がり一気に銀山城まで落とすのです、兎も角機先を制するのが戦に勝つことに繋がるでしょう」
「房栄の策を取ろう、陸路の将は宮川甲斐そなたに頼みたい。三千の兵で関戸を発し廿日市へ向え」
隆房の決断は早かった。
「承知! 直ちに支度し出発いたします、これにて御免!」
勇躍宮川が本陣より退出する。
「後の者たちは海路で進む、三浦越中差配せよ」
「ははっ!」
だが、彼らは知らなかった。自軍に流れる不穏な噂を。
「聞いたか? 陶の殿様の私怨でこの戦は行われるって話だぞ」
「はあ? 何で又?」
「大内の御屋形様を討った時に毛利の嫡男が一緒に討たれたんだが陶の殿様は御執心だったそうな」
「なんじゃ? 衆道のもつれからか?じゃあ御屋形様を討ったのもか」
「表立っては悪政をうたっておるがの、本当のところは御屋形様の御寵愛の毛利の嫡男を取り合った果ての事らしいの、三田尻の女どもが煩いのなんのって」
「おう、最近流行りの{腐女子}とかいう奴らじゃな、じゃあわし等は痴情のもつれからの戦に駆り出されとるんか?」
「そうじゃ、こんな戦で手柄も立てられず死んだらいい笑いものじゃ」
「ほうじゃのう、命大事にじゃのう」
「うん? こんな時に雨か? こりゃあ酷い降りじゃ、濡れんように移動するぞ」
自国内である事と本陣の傍ということで将兵たちは完全に油断していた。
△
夜半になっても雨は降り続き皆が寝静まった時、いきなりその眠りを吹き飛ばす喚声が響いた。降り注ぐ雨音も凌ぐ物であり寝ていた者たちは飛び起きる。
「何だ! 何があった?」
「敵です!」
「何だと! 馬鹿な! こんなところまで敵が来るはずが」
そう言った侍の胸に矢が突き立つ。
「敵襲だ~!」
「もうだめだ、逃げろ!」
陶軍は立ち向かう者よりも逃げようとするものが多数で次々と敵が突破していく。
「殿、お逃げ下さい、我々が残ります」
三浦越中が陶隆房に声を掛け柿並、野上らと駆け出していった。
「我々が御守りしますので今は本領まで帰ることを図りましょう」
江良が声を掛けるも隆房は声を荒げる。
「夜襲を掛けてきた者たちは小勢のはずだ、本陣の兵たちを把握しておけば負けん!」
「その本陣の兵を含めて我が方はみな散りじりに逃げているのです、これでは戦になりませぬ」
その時本陣の陣幕を倒して一団の兵たちが雪崩れ込んできた。
「吉川家中 二宮木工助 推参! 陶隆房殿とお見受けする! 御覚悟召されい!」
「ぬう! 下郎がほざくなよ 返り討ちにしてくれるわ!」
隆房の旗本が二宮達に切りかかるも二宮達にたちまち切り伏せられる。
「なんと凄まじき者たちよ、流石{鬼吉川}と言うべきか」
隆房は思わずそうつぶやいた。
「殿! 御逃げ下さい、ここは某が!」
江良房栄は抜刀し、二宮達の前に立ちふさがる。
▲
隆房はいつの間にか一人で彷徨っていた。
いつしか大河の畔にたどり着いた。
「錦川か……ここは御庄の辺りか?」
それでも気を取り直して道を捜し居城まで帰ろうとするもそこに立ち塞がる者たちがいた。
「陶隆房殿とお見受けする。毛利家中 中原善左衛門 推参! 」
「ふふふ、もはやこれまでか」
陶隆房、ここにその生涯を閉じたのであった。
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※この小説はクロスオーバー作品です
早見様の「ゲーム機片手に天下統一!Player1 〜瀬田に我が武田の旗を立てよ〜」
霧島ナガツキさんの「ゲーム機片手に天下統一!Player2 ~我、長宗我部ニテ立チ上ガラントス~」
天樹院樹理さんの「ゲーム機片手に天下統一!Player3〜諌死なんてしてやらん、天寿を全うしてやる!!〜(仮)」
4番目になる作品です