第十九話 策の発動と大内家の内訌
周防国 山口 大内館
「むふふふふ、太郎よ、愛いやつめ」
「御屋形様♡」
陶興房らがあれほど諫めたに関わらず義隆は少輔太郎にその毒牙を突き立てた。僅かな慰めはその太郎本人がそれを受け入れているという事であった。無論興房や内藤・杉・江良等の家臣たちの心は義隆から離れて行ったのだが。
そのような爛れた日々を送っていた所、ある日太郎が貴公子然とした男を連れて来た。
「この者は肥後より毛利を頼って来た者です、見ての通りの容姿とちょっとした秘密ゆえに御屋形様の夜のお勤めに花を添える事になるかと」
「御紹介いただきました相良武任と申します。誠心誠意お勤めいたしますので可愛がってくださいませ」
「うむうむ苦しゅうないぞ(なかなかの美形楽しみじゃのう)」
その夜
「何と! 武任、其方は女子であったのか!」
「はい、御屋形様、太郎様の申された秘密というのはこの事で、男の身形で中身は女子がこの武任の秘密でございます」
「うむ、斬新で面白い、太郎も面白い事を考えつく物よ」
「お褒めに頂き恐悦至極でございます」
こうして義隆は更に爛れた生活を送りいつしか政務の方も疎かになっていくのであった。
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山口 陶館
「御屋形様は今日も遊んでおるのか?」
「はっ、いいえその政務に……」
興房の問いに隆房は思わず口籠る。
「そなたは嘘のつけぬ者よの、戦国の世を渡るには少々頼りない……それよりも隆房、杉重矩が闇討ちされたようだの」
「……」
「ふっ、もう良い、杉も口が過ぎるのが災いを呼んだのであろう(隆房の仕業か、嘘のつけぬ奴め)、其れよりもだ御屋形様の事についてじゃ」
「御屋形様が何か?」
「儂はもう長くない、それ故に言うのじゃが其方が家を継いだなら御屋形様を討て!」
「! 何をおっしゃるのです、父上が御屋形様を討てとは、気でも触れましたか?」
「気が触れて居らぬ故言うのだ、このままでは大内は滅ぶぞ」
「何を弱気な」
「御屋形様の行状は既に領国中どころか尼子にも大友にも筒抜けじゃ、美味しい獲物を目の前にぶら下げられて黙っている両家だと思うか? きっと示し合わせて攻めて来るぞ。 そうなっては家中の者たちは従わず大内は滅びよう」
「ではどうすれば?」
「土佐の一条家には御屋形様の御姉様が嫁いでおられる、そこの次男を御屋形様の御養子として迎え新たなる御屋形様にするのだ。そして今の御屋形様は討ち取るのだ、押し込めなどはするな、後々の禍根となる、やるならば徹底的に行え」
「毛利はどういたします? 太郎を人質に出しているのですぞ」
「毛利も潰せ、御屋形様の気質もあるがそれを煽ったのがあの者よ、 躊躇うな、そうしなければ向けた刃、其方に帰って来るぞ」
「判りました、父上」
「内藤らと謀り必ず成就させるのだぞ……御屋形様そちらに今行きますぞ……」
「父上? 父上!」
こうして先を案じながら大内家の忠臣である陶興房はこの世を去った。
■
「では、興房様の言う通りに為さるのですか?」
「ああ。そうしなければ大内は滅ぶだろう」
「では、私も討つのですね」
「あ、いや其方は別じゃ討ったりなどできようか」
「隆房様、太郎は嬉しうございます」
驚くべき事に隆房と太郎は通じていた。何時の頃からか義隆の知らぬ間の事である。
「だが良いのか? 御屋形様の事は?」
「御屋形様は相良殿に夢中です。私に未練も無いようで、今の私の頼るべきは陶殿だけなのです」
「分かっておる、儂が大内の実権を握った後には毛利家を大内の重鎮として迎えよう」
「ありがとうございます」
「そなたも元服を迎え一軍の将となる、その時には頼むぞ」
そう言って隆房は屋敷に帰っていった。
「行ったか?」
「ああ、上機嫌で屋敷に帰って行ったぞ」
「これで大内は終わりだな、御方様の狙い通りになった訳だ」
太郎ががらりと雰囲気を変え傍らに話しかけるといつの間にか現れた人影に話しかける。
「この事直ちに御方様に伝えてくれ、 武任の方もうまくやっておる後は時間の問題だとな」
「承知」
人影が消えた後、太郎の口の端が歪められる。
「此処からが見物だな、後は武任の方の仕込み次第か」
大内家に嵐が近づいていた。
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※この小説はクロスオーバー作品です
早見様の「ゲーム機片手に天下統一!Player1 〜瀬田に我が武田の旗を立てよ〜」
霧島ナガツキさんの「ゲーム機片手に天下統一!Player2 ~我、長宗我部ニテ立チ上ガラントス~」
天樹院樹理さんの「ゲーム機片手に天下統一!Player3〜諌死なんてしてやらん、天寿を全うしてやる!!〜(仮)」
4番目になる作品です