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第十二幕 高橋征伐と縁組

「皆の者! 高橋興光をぶっ殺せ! かかれー」


 京です。今高橋攻めの真っ最中です。


「興光~我が娘の仇許さんぞ~!」


 元就パパがぶちきれています。よほど恨み骨髄だったんですね。でも仇呼ばわりは無い様な気がしますが……


 こうして高橋攻めをしているのは毛利家だけでは有りません、周囲の領主たちが総出でフルボッコにしているんです。


 ではどうしてこうなったかと言うと……



安芸郡山城 評定の間


「皆の者、此度の坂の謀反、首謀者の坂の成敗は当然であるが、桂広澄は残念であった。又弟の元綱、渡辺勝も坂と連座して亡くなった。家中の者を失うは我が手足を切られるような物、今後はこのような事が無いようにしたい物である」


 元就がそう言うと居並ぶ家臣たちの中にいた桂元澄が父の広澄の事を思い出したのだろうか目頭を押さえている。


「一門衆が寂しくなりましたがお心落としの無き様に願い奉ります」


 筆頭家老の志道広良が言上すると元就は頷き口を開く。


「その不足を補う為にこの度僧籍に居た弟に還俗してもらい出仕してもらう事にした。皆に引き合わせたい」


 其の言葉を聞きその様な者がいたのか首を傾げる者たちも居る中その者が呼ばれて評定の間に入ってくる。


 其の者は片足を引きずりながらもしっかりとした足取りで進んでくる。


「え?」 「何? どういうことじゃ?」 「そんな筈は……」 


 家臣たちからざわめきが起こる。


「これはどういうことでありますか!」


 其の中で井上元兼は立ち上がり元就を見据えた。


「静まり為されよ、今からご紹介するのじゃからな」


 一門衆の筆頭に座る福原広俊の言葉に続ける言葉が見つからず座りなおす元兼を他所に皆の前に座った男に元就が声を掛ける。


「還俗した就勝じゃ、皆の者よしなにな」


「就勝にござる、還俗したばかりで不慣れな事もあるがよろしくお引き回しの程を」


「就勝は幼少より足が不自由での、我が父が仏門に進ませて居ったのであるが儂の我侭で還俗してもらった。皆の者目を掛けてやって欲しい」


 其の言葉に家臣たちは頭を下げるのであった。



「ははは、皆の者のあっけに取られた顔を見たか、噴出しそうになって辛かったわ」


 元就パパが久方ぶりに笑っています。


「井上の顔が面白かったな、赤くなったり青くなったりでな」


 そう言って笑うのは元綱様、今日からは就勝と名前を変える事になりました。


「だが大胆な策でしたな」


 志道広良が首を振りながらぼやくとそこにいた皆が声を挙げて笑います。


 生き残った元綱様をどうするか皆で話していたので「別の名前を与えて別人としてしまえばいいんじゃない?」と言ったら皆が「其れだ!」と言って今回の初めに戻るわけです。


 幼い頃の怪我で足が不自由に成った為、仏門に入った弟が居た事にして今回還俗させた事にしたのですよ。


 処で新しい名前ですが、私が提案する前に元就パパが言い出したんです。


「就は私の名前からで勝と言うのは非業に斃れた渡辺勝から貰った」


 史実の北就勝の事ですね、そういえば元網様は少輔三郎と呼ばれたり相合四郎となったり三男なのに何故四郎? と思ったこともありましたがこういう事なら納得です。


 え?私の尼子への殴り込みカチコミの件ですか?


 あれから里に戻ったら般若を背負った母様が……凄く怒られました。罰として便所掃除一か月です。トホホですね。尼子経久を脅した件を話したら元就パパは顔面蒼白になってました。もし郡山城に攻めてきたら?その時は桶狭間よりずいぶん前に大名の当主が奇襲で討たれるという歴史のイベントになるだけですよ。



 そうしてやっと初めに戻って高橋攻めです。大内家にはすでに毛利が付くという事を伝えていまして、大喜びの大内義興から領地を貰ったりしましたが、大内に従わない高橋を討つことを打診するとこれまた喜ばれて切り取り放題のお許しがでました。そこで高橋に恨みを持ってそうな領主たちに話を持っていくと皆大喜びで参加してきました。


 出羽氏は元の領地である出羽の地を高橋に奪われていたのでその奪還を、和智氏や三吉は分け前を貰えるし、度々攻められていたので渡りに船だったようです、いつもは毛利と争う宍戸も今回は高橋フルボッコ作戦に参加です。これは元就パパも驚いてました、ここから毛利との仲直りに繋がればいいですね。


 驚いた事にこの企てに尼子家が賛成した事は意外でした。三吉氏を通じて今回の高橋攻めの時高橋に合力する事はしないと言って来たんですね、脅しが効いたみたいです。味方したらいたぶってやろうと思ったのに。


 そういうわけで高橋に攻め込んだのですが高橋は私が暮らしていた横田を始め分家の幾つかは本家に反抗する事になりました。その過程で人質の私は本家に連れて行かれ処刑されたとの情報が流されました。高橋家が悪逆非道であると宣伝するためです。


 え? 困らないかって? 問題ありません。元就パパには既に正室として吉川から奥さんが来てますからね、戻ったら色々問題が起こるのですよ。因みに私の弟は二宮と言う家が当主を失ったので其の後に養子に入る事になりました。二宮と言えば史実では元就パパの隠し子が養子に入った家なのですが一代先になりましたね、と言う事は二宮春久と将来名乗る事になるのか?


 こうして高橋興光は孤立して本城を捨てて鷲影城に逃げようとしますが一族の盛光の裏切りを受けて自害し、強勢を誇った高橋氏は滅びました。





 毛利元就は困惑していた。


 尼子経久が大事な話があるので是非会いたいと三吉家を通じて話を持ってきたのであった。断ろうと思ったが相手が随分と必死で身の保障に弟の久幸と次男の国久を人質に出すと言うのでどうにも断れなくなったのだ。


 三吉領内の寺で会見の場が持たれて二人は相対した。


「毛利治部少輔元就です」


「よく来て下さった、某は尼子民部少輔経久じゃ」


「早速ではありますが某と会いたいとの話でござるが何用でしょうか?」


「うむ、其れがの……欲しいのじゃ」


「は? 今何と?」


 急に声が小さくなりもじもじし始めた経久に元就が怪訝な顔になりながら問い直す。


「それはな……ええい! 貴殿の娘さんを嫁に貰いたいのじゃ!」


「はあ嫁に……!! ええェーーーーーーーーーーーーーー」


 元就の絶叫が寺に響き渡ったのであった。



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