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第十幕 娘、尼子家を急襲(カチコミ)する

  京です。元就パパ達を見送った後、世鬼の里に戻り元綱様の容態を見舞っています。


「命には別状あるまい、だが足に受けた矢傷が重い、以前の様には走れんだろう」


 政久おじいちゃんの見立てに溜息が出ます。命を救えたので満足しなくてはいけないのでしょうか?


「後、裏を取った所高橋本家が関わっていた事が判明した」


 坂広秀の求めに応じて武器が尼子から高橋に流され高橋が兵を送り元就パパ達を討ち毛利家を手に入れる、そして幸松丸の姉に尼子家より婿を迎えて毛利家を継がせるという筋書きだったのです。幸松丸と其の姉の母は高橋氏の出なので高橋は毛利に影響力を持つ事が出来て万々歳と考えたようです。


 そしてこの筋書きを作ったのが尼子経久であることも判りました。


 尼子経久許すまじ!


 そう思ってかっかとしていると元綱様の意識が戻ったとの知らせを受け慌てて枕頭に向うのでした。



「俺は生きているのか……」


 元綱は目が覚めて直にそう思った。生きているのは全身に痛みがあることから間違いないと思われた。


「ここは何処なんだ?」


「気が付いたんですね、良かった」


「けい……ここは?」


「ここは世鬼の里です、元綱様は丸一日以上伏して居られたのです」


「そうか……城は、船山城はどうなった? 勝や我が家来たちは?」


「今は休んで体力を付けてください、そうすれば……」


「頼む! 教えてくれ」


「……皆様方は御立派な最後でした」


「そうか、俺だけ生き残ってしまったか……」


 自身が生き残った事を責める元網に京は必死で呼びかける。


「元網様、そうではありません、皆元網様に生きていて欲しかったんです、生き延びたことを責めないでください」


「けい……許せ、俺が間違っていたようだ。生かされたこの命、大切にしなければな」


 やがて疲れから眠りについた元網の元を辞した京は部屋を出る。その顔は厳しいものに変っていた。


「尼子経久、思い知らせてあげますわ」



出雲国 月山富田城



 尼子経久は毛利での政変の報告を受けていた。


「そうか、坂は討たれ元網等も死んだか、残念な結末だったな」


「高橋からの援軍が来る前に動くとは、元就もやりますな」


 経久の言葉に亀井秀綱が答える、失敗を報告した亀井が部屋から退出すると経久は部屋に残った者たちに声を掛ける。


「残念ながら、元就が毛利家を継ぐことになった。そなたらはどうすれば良いと思うか?」


「攻めると言うならこの国久にお任せを、新宮党が先鋒を相勤めまする」


「某も塩治衆を率いて参りますぞ」


 経久の次男尼子国久と三男で塩冶氏に養子に行った興久も申し出る。


「三郎四郎はどうじゃ?」


 経久はこの場に同席している亡き長男の一子で孫の三郎四郎に尋ねる。


「はっ! 先ずは手の内を探る必要があります、同じ安芸国の領主である吉川等に探らせるのはどうでしょうか?」


「ほう? 何を探らせるのじゃ?」


「今後も尼子に従うか否かです、従うならば良し、従わないときは……討ちます」


「成程、そなたたちの考えは判った、儂の考えは毛利には先ず飴を与えて懐柔する、従わぬのならば周辺の領主たちを動かして圧力をかける」


「「「成程!」」」 


 三人が同時に声を上げた時にやけに冷静な声が割り込む。


「あン? そんなことさせるわけないじゃん」


「何者!」


 国久の誰何に答えることは無くその声の主は話し始める。


「尼子経久、毛利への仕打ち許し難し、毛利を舐めたらどうなるか思い知らせに来たよ」


「何時の間に入り込んだのだ! 誰かある!」


 興久が叫ぶが誰も来ることはなかった。


「無駄だよ、皆伸してきたからね」


「小娘、そなたは一体何者だ?」


 経久の問いに彼女……京は答える。


「毛利元就が娘京、此処に推参! 尼子経久! 覚悟なさい」



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